岡森利幸
@テンパる
テレビを見ていると、ときどき、この言葉を耳にする。語源はおそらく「てんぱい」であって、それは本来マージャン用語であり、広辞苑によると、[聴牌(中国語) 。マージャンで、あと1枚のめざす牌が入れば上がれる状態になること]である。
動詞形の「聴牌する」を短縮して、「テンパる」となる。しかし、この言葉をよく使う「お笑い芸人」たちは、マージャンとは関係なく使っている。文脈から察すると、「茫然自失(セリフを忘れるなど)して、すっかり舞い上がっている」という意味で使っている。しかし、あと1枚のめざす牌が入れば上がれるマージャンでの「心理状態」とは、他の人より早く上がれることの期待に胸を膨らませ、わくわくどきどきしたり、あるいは、ようやく上がれる権利を得て、意中の牌(複数のパターンのこともある)が場に出てくるのを待つだけの、安堵したい気持ちになるのだから、私はこの表現で使うのには違和感をもつ。マージャンをよく知らない者が誤用しているらしい。
Aガチ
「ガチ」とは、「硬い」あるいは「てがたい」という意味だろう。がちがちという重ね言葉として使うのが一般的だ。あるいは「ガチンコ対決」のように、「ガチーン」と音がするほど強くぶつかり合うときの音響が語源だろう。それを短縮して「ガチ」というようになったようだ。
元総理大臣・竹下登氏の孫にあたるという若者が、番組の中で料理を食べ、「ガチおいしい」などと言うように、形容詞を強調する意味でよく使っている。「すごい」の代わりになっている。
最近では、「ガチ」が「確実」という意味に使われることに私は気づかされた。「確実」からさらに意味を飛躍させて、「真実」の意味にも使われている。
Bマジ
真実の意味なら、若者たちは「マジ」の方を使うことが多いだろう。
意外な話を聞かせたとき、多くの若者たちは、「マジっすか?」などと聞き返すのだ。「まじめ」が語源であり、1字短縮されたのだ。かれらは「まじめ」と「本当」を織り交ぜたような意味で使っている。あえて漢字で書くとすると、「真事」だろうか。
辞書を引くと、「マジ」は、現代に限ったものではなく、かなり古くから(明治時代から?)「まじめ」の短縮形として使われていたらしい。また、「マジ」というもう一つの言葉として、人を惑わすもの、魔物をさす言葉もあることを辞書で知った。「マジ」に惑わされてはいけない。
Cマギャク
これは「正反対」という意味で使われる。漢字で書くと、「真逆」だ。これを「まさか」と読んではいけない。
Dハンパない
「半端じゃない」を単に短縮しただけ。「中途半端なことではない」という語句が原型だろう。つまり、「ちょっとやそっとのことではない」、「過小評価はできない」という意味で用いられている。
Eウィッス
「はい」の代わり。語源はその意味のフランス語「oui」から来ているという説がある。たぶん、体育会系のあいさつ言葉「オッス」を合成したものだろう。
「あれやれ、これやれ」と若者に指図すると、彼らの多くは、軽いノリで「ウィッス」と答える。「うん」より響きがいいようだ。
「みなさん、わかりましたか?」
「ウィッス」
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