ナイフ作り 岡森利幸 2011/10/19
「金鋸の替え刃」を紙やすりで加工してナイフを作る。それが錆びてきたり切れ味が悪くなったりすると、紙やすりで研いで再製する。
私がその手製ナイフの実物を、立川方面にある航空関係の実験施設で初めて見たのは二十歳前後のことだから、もう何十年も前のことになる。それは15センチほどの長さで、1センチ幅の鋼板の角を斜めにカットし、刃をつけていた。切り出しナイフの形に似ているが、もっと繊細で、しなやかさのある一品だった。一目見て気に入り、自分のものにしたかった。その後の製造現場に電動グラインダーがあったので、自分で作ってみた。その材料となる「金鋸の替え刃」とは、刃先が磨耗すれば廃棄される運命にある。その辺にいくらでも落ちていたようなものだったし、入手はたやすかった。15センチほどの長さの折れた替え刃を電動グラインダーで形を整え、紙やすりで砥いで作った。自分で使う分だけ、数本作った。最初に作ったものは、刃の面が逆で、右手で鉛筆を削るには不向きなものだったという失敗もあった。
ナイフにはいろいろな用途があるもので、封筒を切り開いたり、ボールペンで誤記した部分を紙面から削ったりもしている。以前は指の爪をナイフで切り落としてもしていたのだが、今ではさすがに、そのためには爪切りを使用している。この種のナイフは事務用品として、私は職場でも自分の事務机の中に常に一本入れていた。切っ先の鋭いナイフであるから、同僚の中には、その存在が気になった人もいたようだ。刃渡りが4センチほどの小さなものだから、持ち歩いたとしても法律的に問題ないはずだ。ただし、航空機に乗るときは、取り上げられてしまいそうだ。
類似品として、刃先がなまったら、その部分を折って捨て、スライド式に刃を送り出せるカッターナイフが市販されているのだが、私にはそのカッターナイフより手製のナイフが使いやすい。
電動グラインダーが使えなくても、今では私は紙やすりだけで、折れた替え刃からナイフに仕上げている。でも、それには時間がかなりかかる。気が向いたら少しずつ研ぎ出し、根気よく作ることを心がけている。紙やすりで鋼を砥ぎだすのは、なかなか大変な作業だ。でも、砥いでいるうちに、明らかにその効果が現われて、ほんの少しずつ形を変えていくのがわかる。研げば研ぐほど、ナイフの形が整ってくる。ナイフなど一本あればいいわけで、何本も作る必要はないのだが、ナイフを作ることは「男のロマン」(?)であり、研ぐことは精神を集中する作業であり、息抜きにもなっている。太古の昔から、男は狩のための石器やその他の道具を作り、暮らしてきた。人類にとってナイフは最も重要な道具だったはずだ。
手製ナイフ4本と一番奥に市販されているカッターナイフ
三度ぶつけられた車