月面でジャンプ                                            岡森利幸   2013/4/7

                                                                  R1-2013/4/8

小松左京の子ども向けのSF小説で、地球から来た少年が月の基地内でおもいっきり跳び上がったら、その天井に頭をぶつけてしまい、気絶してしまった、という話がある(「地球からきた子」、講談社文庫『宇宙人の宿題』に収録)。月では重力が1/6だから……、という説明だ。月では高く跳び上がれるのは確かだが、定量的にはどのくらいの高さになるだろうか、単純に6倍の高さに跳び上がれると考えていいものだろうか、という疑問を私は抱いた。小松氏はその高さを示していなかったから、私は具体的に、地上(地球上)で垂直に50センチ跳び上がれる人は月ではどのくらい跳び上がれるものだろうか、と計算してみたくなった。

50センチ跳び上がれる人(P氏)の体重をnキログラムとしょう。そのジャンプ力で月の上で跳ねたとしたら、何メートルの高さに到達するかが問題である。

P氏のジャンプ力をまず計算する必要がある。P氏は頭の高さの基準線より50センチ跳び上がることから、ジャンプ力が求められそうだ。ジャンプするためには、ひざを屈伸する。P氏がひざを曲げると、体は30センチ沈み、そして伸び上がるときに一定の加速度で加速すると仮定する。P氏がひざの屈伸で跳び上がる加速力の大きさが、ジャンプ力ということになる。P氏がひざを伸ばしきった位置、つまり基準線においては、跳び出すときの初速を得る。その勢いで頭上に跳び上がることになる。速度・加速度と移動距離の関係の積分方程式を応用すると、以下のように問題が解ける。

 

基準線から跳び上がる速度uについて、初速をa [m/s]とすると、その後は重力によって時間tの経過と共に減速される。それは次の式で表される。

=a−gt ………(1)

最高点に達するのは、u=0になるときだ。その時間をt0すると、地上の重力はg=9.8 [m/s²]だから、

0=a−9.8t0

∴t0=a/9.8

高さ(h)は、跳び上がる速度uの積分式で表される。

h=∫(a−gt)dt

=at−1/2・gt² ………(2)

(2)に h=0.5と、t=t0 を代入すると、P氏の地上での跳び上がり速度aが求められる。

=9.8

≒3.13 [m/s]

次に、P氏がひざの屈伸ジャンプによって上昇するときの加速度Fについて考察する。tをその加速時間とすると、初速aとFには次の関係がある。

=F ………(3)

すなわち、t=a/F

ひざを屈伸する移動距離hは、その加速度を積分した値に等しい。

=∫Ft・dt

=1/2・Ft²

=0.3 と t=a/Fを代入して、Fを求めると、

=(1/0.6)a

≒16.33

なお、P氏の実際のジャンプ力(加速度)F0は、P氏の体に重力gがかかっているから、Fに重力を加えたものである。(言い換えれば、F0にgを差し引いた加速度が、Fである。)

0=F+g

0≒16.33+g

≒26.13 [m/s]

       

月面上で、P氏が同様に30センチのひざの屈伸で得られる初速aを求めよう。ジャンプによりP氏の体が上昇するための加速Fは、同様に、月の重力g〔地球の重力の1/6、g=(1/6)g〕によって減じられる。

=F0−g≒26.13−1/6・g

≒24.50

この上昇させる加速が30センチの区間で行われるから、まず、その時間tを求める。

=∫Ft・dt

0.3=(1/2)F(t)

(t)=0.6/24.50≒0.249

≒0.1565

とtを乗算すると、aが求められる。参照(3)

=F=24.50×0.1565

≒3.83 [m/s]

月面上で、初速aで跳び上がれる高さhは、次の式で表される。

=∫(a−gt)dt

=at−1/2・(1/6・g)t

=at−1/12・gt ………(4)

速度が0になる時間tは、(1)の式と同様の考え方で、

−g=0

=a/g

≒2.34 [s]

(4)の式に、aの値とt=を入れて計算すると、

≒8.94−4.47

≒4.47 [m]

 

結論として、P氏は月面上で4.47メートル跳び上がれる。地上の8.94倍の高さである。単純見積もりの6倍を超えていることが、やや驚きである。身長1.6メートルとすれば、6.0メートルの高さの天井に頭が届いてしまうことになる。やはり、それより低い天井に頭をぶつけて気絶することは、ありえるようだ。

なお、体重は計算に含まれないので、月でのジャンプの高さに関連しないことになる。また、ひざを屈伸させての沈み込む30センチの距離を一定(例えば、cメートル)としても、この問題が解けるのではないかという仮想(雑念?)が私の脳内に浮かんでくるのだが、どうだろうか。

 

 

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