古い建築物を見て回る                                     岡森利幸   2012/2/11

                                                                  

私は、この二、三年の間、各種の公園にいそいそと出かけている。名所・旧跡になっているところや自然観察の園地、あるいは戦争遺跡を観光することをほとんど趣味としている。古い蔵や門構えにも興味を持ち、写真に撮ったりしている。できれば無料で入場できるところがよいのだが、それほど有料無料にこだわらない。地図を広げ、めぼしいところを探したり、ガイド書などを参照したりして計画を立て、わが県内の公園や東京都内にある名所・名園を中心に足を運んでいる。新聞の紹介記事で文豪ゆかりの地や散歩コースが載っていると、そこへも、つい行きたくなってしまう。物見遊山で広い公園などを見て回ることは、ちょっとした運動にもなるし、出歩けば、ときたま話のネタになるような面白いことにも出くわす。ただし、いいことばかりでなく、そこが期待はずれだったり、道に迷ってなかなか行き着けなかったりして困ってしまうこともよくある。

困ったことといえば、年末に近場のハイキングコースを一人で歩いていたとき、落ち葉が降り積もった下り坂で足を滑らし、あわてて右足首を強くひねってしまい、それに体重がかかったものだから完全に捻挫してしまった。骨折しなかったことだけでも不幸中の幸いだったが、下山するときは悲惨だった。正月の休みにはどこへも行かれず、その後しばらく痛みが続き、何とか歩けるようにはなったが、いそいそと遠くへ出かけるわけにはいかなかった。

観光見物の対象として、江戸時代の将軍や大名たちが金と権力で造らせたという人工的な庭園や、野山を整備しただけの自然な公園もいいし、古い建築物もなかなかよいものだ。縄文時代の竪穴住居(復元模型)から大富豪の豪邸まで、興味深いものがある。特に家屋が展示されているテーマパークのような施設では、まとまって見ることができるのがうれしい。多くのところでは、外観だけでなく、建屋内も公開しているから、下足を脱ぎ、中に入って見て回れる。古い建物には、人が住んでいた「生活の匂い」や「時間の流れ」をよく感じさせる。人々の暮らしぶりを想像しながら、あるいは自分がここに住んだと仮定しながら見ると、興趣が深まる。

子どもが古民家を見ても面白くないだろう。実際に建屋を見たことがあるような、記憶の中に納めている大人が見て楽しめるのだ。(かや)()き屋根の農家には、多くの年配者は郷愁を感じるものだろう。私なども、子どものころ夏休みに長野県にあった母の実家で過ごした記憶が残っている。それは古色蒼然とした萱葺き屋根の典型的な農家だった。

建築物が集められている公園といえば、全国的には、愛知県犬山市の明治村が有名だが、東京近郊にも見所があちこちある。私が行ってみてよかったと思うところを紹介しよう。

@日本民家園(川崎市にある)

生田緑地の中に、古民家が集められている一角がある。古い商家や芝居小屋まである。傾斜地にあるので、登ったり下ったり歩かされるが長い距離ではない。緑地の奥には岡本太郎美術館があるから、のぞいてみるのもよい。

A江戸東京たてもの園(小金井市)

古民家から明治時代の洋館までの広い範囲で、多くの特色ある建物が集められている。中には今でも住むのに快適そうな家も建ち並んでいる。広い小金井公園の中にあるから、一日中楽しめる。

B府中郷土の森博物館(府中市)

博物館の広い敷地内に、古民家、古い小学校など公共施設が集められている。「郷土」に興味のない方は博物館をパスしてそれらの建物を見て回るだけでよい。

その他、横浜の三渓園には、主に茶室が集められており、さらに三重塔や合掌造りの家なども混在し、庭園としての統一性に疑問もあるが、一見する価値がある。また、上野の不忍池の南西には旧岩崎邸庭園の「豪邸」が残っていて、やや色あせた内部を見て回れる。以上は入場料が必要なところだが、無料で建物内に入れるところも多くある。建物を管理・維持するためには、それなりに費用もかかっているのだろう。いくらか寄付したいほどだ。

そうだ、建築物を見るなら、新築の住宅展示場もいいかもしれない。その販売のために住宅の見本が複数建ち並んでいるのだ。そんなところが、わが市内にもあるし、横浜駅の近くに大規模な住宅展示場がある。そこはテレビで広告されているし、付近を通る電車の車窓からもよく見える。でも、中に入ったら、セールスの人間にうるさく付きまとわられそうだから、やめておこう。他人の家がうらやましくなって来そうそうだし……。

 

 

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