偽装店長のただ働き                                                    岡森利幸   2008/1/29

                                                                    R1-2008/2/1

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/1/28一面・社会面

東京地裁が、マック店長を「管理職でない」と認定、残業代の支払いを命じた。

ハンバーガーチェーン「日本マクドナルド」の店長が、管理職扱いされ、時間外手当を支払われないのは違法として、同社に未払い残業代などを求めた。彼らは「名ばかり管理職」、偽装店長」とも言われる。

残業代を支払わずに済ますためには、企業は、社員を管理職にしてしまえばいい。単なるリーダー的「店員」を管理職扱いの店長にして、たいした権限も与えず、責任だけを重くし、労働力を絞れるだけ絞ることによって、人件費を浮かせようとする企業戦略が見えている。店長にすれば、コストの高い残業代が浮くし、移動も簡単になるから、企業として、なんと都合のいいことか。

この日本で、最前線で働く人々を残業代なしでこき使うやり方が、まかり通っていることがおかしい。そもそも、「管理監督者」(=管理職)ならば、残業代を支払わなくていいとする労働基準法の規制がおかしいのだ。職員が残業するのは、仕事の量が多いからであり、企業はその仕事の量に見合った給料を支払わないのだから、公正ではない。時間外の勤務には割増賃金を支払わなくてはならないが、その高い残業代を払わずにすむ方法として管理職が広く利用されている。店長を偽装しているのは、日本マクドナルドだけではなく、多くの会社がそうしていることに、問題の根深さがある。企業は、そういった人々を後方で操って利益だけを求めているのだ。

特にチェーン店では、売り上げを伸ばすためにそれぞれの店に競わせるように、本社上層部が成果主義を推し進めると、その店長は自ら働かざるを得ない状況に追い込まれる。特に長時間営業の店では、店長の勤務時間も長くなり、変則的な時間帯に出勤しなければならなくなる。職場での周りの人間は派遣員やパートやアルバイトばかりだから、自分が一時的な休みを取ろうとしても、自分の代わりになるようなものがいない。本社は店長の仕事を補佐するような、まともな正社員をほとんど回してこない。店長1人に責任がその肩にのしかかり、雑事も増えるから、時間外の勤務は増えることはあっても、減りはしない。残業手当のない店長が働けば働くほど、賃率(時間当たりの人件費)が下がり、企業は労働力を安く使えるわけだから、企業の実質的な利益の向上につながる。企業が店長を楽にしてくれることはありえない。店長は、本社の指示や本社が定めたマニュアルに従って、店長のふりをしながら先頭に立って働くしかないのだ。

店長が手を抜けば、すぐにその店の売り上げに直結する。その数値がすぐ分かる仕組みになっているから、企業にとって店長を評価するのは簡単だ。店の売り上げが他の店より悪ければ、すぐ店長を降格させるか、配置転換すればいいのだ。働きの悪い(利益を出さない)、だめな店長には、叱咤激励し、場合によっては、みんなの前で恥をかかせるようなパワーハラスメントを用いる方法もある。その店長がやめれば、本社には、その代わりはいくらでもいるのだ。ほとんど、使い捨てである。責任感の強いものほど、過重に働くから、つぶれやすい。ただし、店を経営するという責任ではなく、できるだけ多くの客をさばいて、店の利益を確保するという責任しか負わされていない。

それで心身を害したとしても、管理職だとして残業時間(時間外勤務)がまともに管理されていないことが多いから、労災の適用も難しくなる。長時間労働で疲れ果てて帰宅する偽装店長は、家庭では何の気力もわかず、あるいはいらだって家族に八つ当たりするようになるから、家庭崩壊の要因にもなるだろう。

 

 

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