安すぎる携帯電話器                                                                               岡森利幸   2006.10.4

R2-2006.12.5

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2006/9/9社会面

携帯電話のSIMロックを不正に解除し、上海の支店で5万5000円前後で販売し、商標法違反容疑で逮捕された会社社長(中国籍、56歳)が、窃盗団から盗品の携帯電話を仕入れていたことが分った。神奈川県内のボーターフォンショップから約1000台(7000万円相当)を盗んだものだった。それまでに、容疑者はインターネットを通じて買い集めた携帯電話のSIMロックを解除する不正改造して中国に輸出していた。

中国では、日本メーカーの製品が若者に人気だという。しかし、正規の輸入品は7万円前後と価格が高い。日本では携帯電話が比較的安いが、これも自社の利用者を増やして回線使用料で収益を上げるのが狙い。

携帯電話にはICチップ「SIMカード」が使われている。SIMロックとは、自社の回線でしか通話できないようにするプログラム処理。このプログラムを解除することで、海外などで地元会社の回線を使った通話も可能になる。

SIMロック解除業者は全国に20以上あるとされる。ボーダーフォンでは、1回だけの通話で契約を取り消すなど不自然な解約が昨年夏から急増。

1.販売方法の特徴

日本の携帯電話の販売方法では、携帯電話メーカーが販売するのでなく、通信会社が小売販売店で消費者に通信サービスを含めて販売していることに特徴がある。通信会社は、「電話器」を安くすれば、消費者が飛び付くと考えている。そして回線使用料でもうけを得るという手口が日本の市場では有効だと考えている。

最初が安くても、結局は、消費者は「高い買い物」をすることになる。こんなツケを回すようなやり方は、日本では当たり前なのかもしれないが、不当な販売方法に思えるのだ。これは、消費者を欺く行為であると私は思う。消費者に安いと思わせて「電話器」を買わせ、その分(あるいはそれ以上に)、回線料を高くして儲けていいものだろうか。こんな商売のやり方はまともではないだろう。

こんなことは、日本でだけ通用するものだろう。公正取引委員会なども、こんなことは「日本の常識」と思っているようだが、世界に目を向ければ、各国での携帯電話器の値段は、詳しくは知らないが、欧米ではもっと高い。多くの外国人は、日本での携帯電話の安さに驚くという。原価以下で売っている国などは、普通にはありえない。原価以下で売るのは、在庫処分のために投売りするときだけだろう。安すぎる販売方法は、不正改造という犯罪の温床にもなってきている。

2.原価

携帯電話器のような精密機器が数千円で市販されているのは、安すぎるものだろう。それは、無線通信部品、プロセッサー、記憶部品、精密なディスプレイ、音声などの出力部、入力部、バッテリー、カメラ機構などの高価な部品類で構成されており、数万円の値段がして当然の機器なのだ。それらを制御するための各種ソフトウエアに関しても大きなコストがかかっているはずだ。

中国では、1台7万円もするのに、日本では数千円というのは、異常だろう。日本で、タダ同然のものを買い集めて、あるいは盗んで集めて、「まともな値段」で取引している国で売りさばけば、大きな利益になるのは当然だ。

街中で、けばけばしい携帯電話の販売店の軒先をみると、なんと携帯電話が0円で買えるという広告もある。携帯電話が0円というのは、ダンピングといわれている行為ではないか。例えば、公官庁のコンピューターシステムに1円で入札するようなものだろう。それに付随するソフトウエアの使用料やメンテナンスのサービス料で稼ごうとするのにそっくりである。1円で入札して一時的に損になっても、後で利益になるというしくみである。

3.利用者本位

本来、携帯電話器は、どの通信会社にも対応できるように作られている。通信のための基本設定を変えて対応しているものだろう。ひとつの携帯電話器を持っていれば、どの地域でも、どの国でもSIMカードを交換するだけですむはずだ。(*1)しかし、SIMロック式の、通信会社を固定するやり方では、使用者は地域を移動するごとにそれに適応する携帯電話器を持たなければならないのは、使用者にとって不便であろうし、資源の無駄になるものだ。

SIMロックなどの姑息な手段に頼らずに、通信会社には、正規な「電話器」の販売価格で、まともな回線使用料を取ってほしいと思うのだ。「電話器」の値段でなく、通信サービスの良さで勝負してほしい。

 

*1. 欧米の携帯電話は、国際間でも共通になっている。

毎日新聞朝刊2006/12/4より引用、リチャード・クエストさん「……しかし欧米ビジネスマンは(共通の携帯電話の)便利さに慣れ親しんでおり、訪日前に携帯電話が通じるよう手配する習慣など既になくなっている」

 

 

ホームにもどる  次の項目へいく 

         NTTリース機器詐欺事件