R1-2006.9.5
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞朝刊2006/7/23社会面 NTT東日本の子会社『NTTレンタル・エンジニアリング』が空リースで、40億円の焦げ付きを出した。 約70人の歯科医と結んだリース契約のほとんどで、現物(レセプト[診療報酬明細書]計算機器)を伴っていなかった。 仲介会社が架空契約をする(ただし、契約先の歯科医は承認していた)などして、機器を購入せず、その代金だけをだまし取っていた。その実質的オーナーは死亡。大阪府警は被疑者死亡のまま詐欺容疑で書類送検した。 仲介会社の元営業マン「書類上、歯科医が1人で二十数台のリース契約をしたこともあった。通常あり得ないことなのに、(NTT側に)指摘されたことはなかった」 NTTレンタル・エンジニアリング「審査が甘く、納品確認を怠っていたのも事実」 |
毎日新聞朝刊2006/7/24社会面 (NTTリース詐欺事件) 仲介会社『ツインビットジャパンコーポレーション』の営業マンは、「契約額の7割を(裏で)融資する」、「契約は架空。機器は購入せず(浮いた購入代金)の7割を融資する」と歯科医師たちに話を持ちかけていた。 NTTレンタル・エンジニアリングは、リース料を支払わない歯科医二十数人に総額20億円の支払い金請求訴訟を起こした。東京地裁は、和解が成立した6件を除き、全件でNTTの主張を認める判決を下した。未払い請求訴訟に敗れた歯科医の中には廃業したケースもある。 |
これは組織ぐるみの詐欺の典型例だろう。仲介会社が社長から営業マンまで、リース機器購入代金をせしめようと策略したことが伺える。
リース契約書があれば、NTTレンタル・エンジニアリングからリース機器購入代金が丸ごともらえることは、業者にとって魅力的だった。悪徳業者にとっておいしいエサだったろう。
仲介会社が歯科医師たちに対してリースでなく融資をもちかけて契約を勧めたのは、資金不足の歯科医師たちにとって『ありがたい話』だったようだ。つまり、社会的に信用のある歯科医師たちにも資金を貸そうとしない金融機関の『貸し渋り』が背景にあるわけだ。
しかし、仲介会社は機器購入の代金をせしめて、歯科医師たちにその7割を融資するという約束(おそらく、口約束だったのだろう)も反古にしていた。『代金丸儲け』をはかった、子供だましのような手口だ。(「巧妙な手口」と書こうとしたが、止めた)
甘い融資の話に乗って契約書にサインした歯科医師たちにも非があるが、彼らはだまされた被害者の部類に入るだろう。しかし、そんな詐欺会社が仲介して取り交わした契約書を無効とせず、NTTレンタル・エンジニアリングが契約書をたてに、リース料を支払わなかったとして歯科医二十数人に総額20億円の支払い金請求訴訟を起こしたのは、だまされた同志が裁判で争っているようで、こっけいに見える。NTTレンタル・エンジニアリングが訴訟を起こすべき相手は、詐欺の仲介会社だろう。仲介会社が実質的に消滅したことによって、歯科医たちにも負担を求めたものだが、歯科医たちには実態のないリース機器にリース料を払う必要があるだろうか。第一、契約書に書かれた機器が存在しない(納入されていない)のにリース料をとろうとするのはおかしい。裁判所の判決には、疑問が残る。歯科医たちは詐欺に加担したことになるのだろうか。
そもそも、NTTレンタル・エンジニアリングという会社は、高価な電子機器をリースで販売するためのサービス会社だろう。営業を主体する会社が、その本業を他の業者に丸投げしたのが敗因だろう。しかも、契約書1枚で、高価な機器の購入代金を出し、契約者にリース料をもらうだけの会社に成り下がっていたことになる。NTTレンタル・エンジニアリングは、「納品確認を怠っていた」と反省する。購入代金を出すだけで、現物を見もしないようなルーズさが、悪徳業者につけこまれた一番の要因だろう。
NTTレンタル・エンジニアリングは、機器の購入ぐらい自社で行えなかったのか。機器をリースするためには、その機器に管理番号を付けたり、所有者表示をしたりする最低限の手作業が必要なはずだ。使用者に対して技術的なアドバイスや取り扱い説明もしなかったようだ。金だけ出して、すべて仲介業者任せとは、信じがたい。仲介会社がしたことに関しても責任の一端を負うべきだろう。
その仲介業者がNTTと資本を共有するような「関連会社」や「系列会社」なら、丸投げしてもいいのかもしれないが、儲け第一主義の「詐欺会社」に丸投げしたのだから、問題だった。NTTレンタル・エンジニアリングが金勘定するだけの経理担当なら、NTTの子会社としての存続理由は見当たらない。『エンジニアリング』の看板を外すべきだ。
おれの頭突きを食らえ