2006.9.2 R1
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞朝刊2006/8/1一面・社会面 7月31日午後1時40分ごろ、埼玉県ふじみ野市の市営プールで、小2女児が流水プールの吸水口に吸い込まれ、死亡した。プール側壁に針金で固定されていた(国の指針に違反)吸水口のステンレス製のふたが、事故の前に外れた。 管理会社「太陽管財」が業務丸投げ、市の承認を得ないで別会社「京明プランニング」に再委託(下請けに出す)していた。 |
毎日新聞夕刊2006/8/2一面 現場責任者「去年の古い針金を今年交換した」 ずさんな管理常態化していた。 |
毎日新聞朝刊2006/8/3社会面 壁の取り付けねじとふたのねじ穴がずれていたため、6,7年前から針金で固定していた。 |
毎日新聞朝刊2006/8/4社会面 ねじ穴が現物あわせで作られ、固定位置がバラバラだった。 元監視員の二人は、(採用の際に)講習会などの受講歴は問われず、「業務マニュアル」は見たことも聞いたこともない」と話す。営業中、責任者不在もあったと元監視員が証言した。 |
毎日新聞朝刊2006/8/5社会面 前年にも管理業務を受託した太陽管財は、市側(市教委)に何度も催促されながら、監視員の「資格調査書」を提出していなかった。それでも、市側は営業を黙認し、提出がなかったことを他部署に報告もしていなかった。池本敏雄・市教育次長は「連絡不足」と釈明。市管財課は「市教委から連絡があれば、こんな不誠実な業者を入札に参加させることはなかった」 |
毎日新聞朝刊2006/8/5一面・社会面 所管の所沢保険所は、03年以降検査していなかった。 |
プールでの吸い込み事故は、今回初めてではなく、全国で過去にもたびたび起きており、政府は「吸水口は、二重のふたをボルトで固定すること」という指針を出していた。防げたはずの事故が何度も繰り返されるのは、被害者にとってたまらなく残念なことだろう。
今回の事故に関しても、多くの問題点が浮かび上がる。メディアの取材によって次々に不適切な実態が明らかになった。
@管理体制が不備だった
管理業務が丸投げされた。業務が下請けに出されると、責任も、その働く人の賃金も、その能力(モラルを含む)も下がる傾向がある。
管理業務を受託した太陽管財は、監視員の「資格調査書」も市側に提出しないという最低限の義務も果たしていなかった。金勘定していただけの会社のようだ。結局、下請けの会社が、監視員の講習も受けていないようなアルバイトたちを寄せ集めていた。一応の資格を持っているものは、現場の責任者と呼ばれる者、一人だけだったらしい。
市は、管理業務をすべて業者に任せてしまい、実態を把握せず、資格調査のフォローも満足に行っていなかった。単に、市内部の市教委と市管財課との連絡不足(連絡の悪さ)の問題でなく、市がプールを管理するという責任意識に欠けるものだろう。
市が保健所の検査についても無頓着だったことは、信じがたい。実際のプールをチェックする役の保険所がまともにやっていないのは、忙しかったから?
A国の指針が徹底されなかった
国の指針が現場責任者にも伝えられてなかったとみるべきだろう。現場に伝わらなかったのは、なぜだろうか。
市が管理業務を委託するとき、周知徹底させるべき国の通達や点検項目やプール規則をきちんと示していなかった疑いが浮かび上がる。市と管理業者は、毎年馴れ合いの関係で、「適当にやればいいや」という安易さがあったにちがいない。
市が主催で、プールの開場前の数日を使って、現場責任者だけでなく監視員たちを集めて講習会を設けるぐらいのこと、あるいは「打ち合わせ」をするべきだ。監視員たちの資格を確認するための機会にもなるだろう。
Bねじ穴が合わなかった
現物あわせ、つまり、ふたの穴は受け側のねじ位置に合わせて開けられていた。ふたは、それぞれの吸水口に専用に作られていたことになる。ふたの外形や受け側の固定部に関して設計図が示されていたはずだが、その精度に問題があったようだ。つまり、取り付け工事がいい加減で、ずれが生じていたのだろう。当初は、それでもボルトで固定できた。設計段階では、国の指針に合うように作られていたのだろう。
清掃や送水設備の点検のために、一斉にふたを外す。それが終わったあと、それぞれのふたは、それぞれの専用のところにもどされなければならなかったが、一旦外すと、どのふたがどの位置に合うのか、わからなくなってしまった。それぞれのふたに番号を付けるなりして識別できるようにするか、あるいは、現物あわせで調べて行けば、わかりそうなものだが、そんな些細な努力も怠っていた。ボルトねじが合わないのならば、ボルトの代わりに針金で固定しようという『知恵』が働いたのだ。
C針金が腐食した
ふたは点検のために、定期的に(少なくともプールの開場前の一回)外す必要があったはずだ。針金を外したりつけたりして曲げていると、金属疲労でもろくなる。さらに、プールの水には殺菌のために塩素剤が一定の濃度で保たれるように入れられている。これが針金を腐食させる要因になったとされる。さらに、水流による動的な圧力が針金に加わる。
Dふたが外れた
ふたは、四隅で固定されて取り付けられていた。四隅とも外れてしまう前に、何らかの徴候があった(グラグラするなど)と思うが、だれも関心を払わなかったようだ。
完全に外れて、水底に落ちていた金属性の物体を遊泳者の1人が発見し、アルバイト監視員に伝えた。その監視員は、現場責任者に連絡し、指示を仰ごうとした。現場責任者が監視員に対して適切な指示を出さなかったことが、その資質が問われるところだ。現場責任者は、すぐに吸水のモーターを停めようともせず(モーターを止められるのは彼しかいなかった)、事故が起こるまでの10分間ほど、うろうろしていたという。一目見れば、それが吸水口のふたであることがわかったはずなのに……。針金を探していたのだろうか。
その間、別の監視員が「(吸水口の)さくがないから、そばに寄らないで」と客に注意を呼びかけていたという。彼は人が吸い込まれる危険性を感じていたからだろう。しかし、流れるプールだから、子供たちが次々に近づいて来る……。監視員は、体を張ってまでも、遊泳者を近づけさせない「勇気」と「自主性」が足らなかったようだ。
幼い女の子が吸い込まれたとき、大きな音がした。
「ドーン」
なぜ、大きな音がしたか?
そんなことは、どうでもよいのだ。
釧路湿原の公共工事