北朝鮮の体制崩壊はいつか                                                                   岡森利幸   2006.9.3

R2-2007.1.9

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2006/8/8人びと面・北朝鮮ミニ知識

コッチェビ(親を失い放浪する少年のこと)

以前は物ごいだけだったが、最近は持ち物を盗むなど悪質化している。北朝鮮羅先(ラソン)で働く中国商人の話、「駐車場でナンバープレートが盗まれた。ある少年が近づいてきて『取り戻してやるから中国人民元で50元(約750円)くれ』という」。ナンバープレートがなければ中国にもどれないから、商人はしぶしぶ50元をわたすと、すぐ取り戻してくれたという。「最近、またコッチェビが増えた」と商人は嘆いた。コッチェビは平壌を除く北朝鮮全域にいるという。

毎日新聞朝刊2006/8/13人びと面

12日付の韓国紙・東亜日報によると、中国が北朝鮮との国境の豆満江の源流地域に鉄条網を設置したことが確認された。

中国は脱北者防止のため、国境線の警備強化を進めてきている。

毎日新聞朝刊2006/8/18人びと面・北朝鮮ミニ知識

住民監視システム

北朝鮮では住民監視システムが確立している。北朝鮮には言論の自由はない。職場から自宅まで監視の目が光り、故金日成(キムイルソン)主席や金総書記長の権威を傷つける言動があれば「反革命分子」として検挙される。

摘発は主に国家安全保衛部が担当する。主席の死亡直後に国内混乱の兆候があったが、金総書記長が保衛部の機能を強化し、住民を取り締まった。

(北朝鮮研究者)「独裁体制が揺るがないのは、監視システムのおかげ」

毎日新聞朝刊2006/8/19人びと面・北朝鮮ミニ知識

(放送事情)

北朝鮮は極端な情報鎖国政策を取っている。テレビやラジオのチャンネル・周波数は固定され、情報を自由に入手できない。

女性脱北者の1人「官製放送以外(他国の放送?)はちらっと見聞きしただけで『思想犯』として罰せられる」

 

この国では一部の支配階級が権力をしっかり握っているために、多くの人びとが気の毒な状況にある。国は荒れ果て、人々の心もすさんでくる。一般の人々の生活はさらに悪化し、生きるための食料や、冬の寒さをしのぐ衣服や燃料も足りない……。生活に少しでも役に立ちそうな木材は切り尽くされ、荒廃した山野が洪水や水不足という自然災害をもたらす。脱北という逃げ場も閉ざされつつある。

「これでは、そのうち北朝鮮の体制は崩壊するだろう」という大方の予想がある。それは数十年前からも言われていたことだと思うが、予想は外れている。この体制は意外にしっかりしているようだ。

理由として、以下を上げよう。

@強固な専政を敷いている

共産党一党独裁のため、野党勢力は存在しないし、存在できない。政府には、専制的で絶対的な権力を握っていることの強みと「うまみ」があり、それを手放す理由はない。一度権力を失ったら、人々に『つるし上げられる』恐れがあるだろう。

A個人崇拝のリーダーシップ

「将軍様」の金一族を頂点とする上下関係が確立している。政府広告(プロパガンダ)や教育によって、国民はマインドコントロールされている。「将軍様」のご威光は神に近く、精神的な支柱になっているようだ。

B国民が体制批判をしないし、できない

情報統制がしっかりしている。国家安全保衛部の存在も大きい。情報統制の徹底した国では、国民の大半は事実を知ることもできないし、どんなに虐げられようと、文句も言えない。(戦前の日本のようだ。)

国民の中で、体制に反対する勢力が芽生えない。芽生えても、すぐに摘み取られてしまう。民主化の声など上りそうもない。

C国の財政がしっかりしている(しっかりしているように見える)

・国家的な関与で、偽札作り、覚せい剤の密売、偽ブランドたばこの製造、ミサイルの輸出で外貨を稼いでいる

・海外で働いている人からの送金がある。あるいは政府の管理で労働者を韓国(*1)の工場に働きに行かせ(人材派遣し)、まとめて政府管理の口座に振り込ませ、その多くを搾取する。

 

強力な軍隊を保持し続けているのは、それだけ財力があるからだろう。

日本が、北朝鮮から海産物(主にアサリ)の輸入を制限するなどのささいな「いじわる」(経済制裁)を実施するぐらいでは、北朝鮮政府の財政には影響しない。北朝鮮のアサリ漁師を困らせるだけだろう。日本で、アサリが食べられなくなるデメリットの方が大きい。

D国際的な支援がある

・中国が体制を支持している

・韓国が経済援助している(太陽政策)

・ロシアも友好的だ

 

中国が北朝鮮の体制を支持しているのは、「もしも体制が崩壊したら、北朝鮮から難民が中国にどっと押し寄せてきて、困るからだ」という説がある。そうだろうか?

私は、そうは思わない。北朝鮮政府の上層部の一部が中国に亡命することはあっても、逆に、多くの北朝鮮の民衆は、脱北した者までも、圧政の呪縛が解けて北朝鮮にもどってくるだろう。体制崩壊後、新しい国(おそらく南北統一国家)を造るために、一致協力しなければならないところだろう。1945年の日本敗戦のときをイメージしてほしい。

私は、逆ドミノ理論(*2)によるものだと考える。つまり中国には、北朝鮮の共産主義体制が崩壊すると、共産主義の自国の体制までも揺るがされるという心配があるからだろう。中国の体制も、民衆が騒ぎ立てれば(*3)、危ういところがある。中国は逆ドミノ現象を恐れているのだ。隣国の国民がどんなに貧困にあえごうとも、体制が安泰であればいいらしい。

 

*1.ポーランドなどヨーロッパ各国にも労働者を派遣している。狭い家屋に大勢を住まわせ、大幅な賃金の搾取や強制労働させているなどの疑いが浮上している――毎日新聞朝刊2006/12/2による。その他、ロシアの原材料の生産現場やアラブ諸国の建設現場などにも派遣していることがメディアによって伝えられている。

*2.ドミノ理論とは、1950〜60年代に、共産主義を極度に嫌ったアメリカ政府の首脳部が、地域に共産主義国家が誕生すると、周辺の国々まで次々に共産主義国家になってしまうという脅威を説いた「俗説」。ベトナム戦争の大義名分になった。

逆ドミノ理論とは、東欧や旧ユーゴスラビアのように、隣国で、あるいは自国内の一地域で民主化されると、次々に民主化や自治独立化が進み、現体制が危うくなるという「考え方」をいうことにしよう。〔本来は、中国の文化大革命で、中国との関係がよかったビルマ(ミャンマー)やインドネシアが中国から離反する傾向を見せたことをいったが、死語になっている〕

*3.有名な例では、1989年6月の天安門事件がある。軍隊まで出して民主化を叫ぶ民衆を制圧した(そのやり方は日本軍の南京虐殺と五十歩百歩であろう)のは、中国政府内の危機感が大きかったからだろう。

 

 

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中国政府と中国人の礼儀