旅の記録「H2Aロケット11号機の打ち上げ」 (2006年12月)

ロケットの打ち上げを見るために種子島へ行ってきました。

打ち上げの直前は、島への上陸手段確保が難しいと聞いていたので、数日前にボンバルディア機で種子島空港に到着。

さすがは南寄りの島。暖冬だった事もあって、12月というのに暖かかった。

到着したのが15時過ぎだったので、日は傾き始めていたが、空港から宿までの約25kmは歩くことにした。

それにしても全く人がいない。たまに横を走っていく車が視界から消えると完全に音の無い世界になり、少し心細い。



30分は歩いただろうか。

1台の車が目の前の歩道を塞ぐように止まり、ジャージ姿の男3人が降りてきた。そして囲まれた。

「ちょっといいかな?」とバッジの付いた手帳を見せてくる。警察官だ。

何かと思えば、軽トラックが盗まれて崖に落ちているところを発見したのだそうだ。いま犯人を捜しているという。

当然、心当たりは無い。身分証を見せて島に着いたばかりだと話すと解放された。

第一村人発見がジャージ姿の警官から職務質問とは。種子島恐るべし。



しばらく歩いていると、コンビニらしきお店があった。

目的の宿へはまだ10km以上もあるし、この先は農道になる。宿は素泊まりにしたので、食料調達はここしかない。

お店に入るため道路を渡ろうと後ろを振り返った瞬間、驚いた。

別に車に轢かれそうになったわけではない。すぐ後ろにさっきのジャージ警官の車がいたのだ。

後を付けられていたのだ。路肩に停車してずっとこちらをうかがっている。

島では移動手段に車を使うのが一般的。歩いていると怪しまれるってことか。



翌日からはレンタカーを借りることにした。

寝泊りもレンタカーだ。打ち上げの延期に備えて宿代は節約しておきたい。

でも毛布を持って来なかったのは失敗だった。さすがに夜は冷える。寒くてぜんぜん眠れなかった。



天候不順による打ち上げの延期が1度あって、いよいよ本番の日。良い天気だ。

えびの湯というポイントの少し手前に、視界が開けた場所があったので、ここから見ることにした。

カウントダウンが進むにつれて緊迫感が増してくる。そして、リフトオフ。

射点のエンジンノズル付近が一瞬光り、噴煙と共に機体が上昇していく。

10秒ほど遅れて轟音が来た。

肺に響く振動。鼓膜に刺さる金属音。こんなデカい音は今まで聞いた事が無い。

まるで目の前に雷が落ち続けているようだ。子供だったら恐怖で泣いていただろう。



わずか数十秒の出来事だった。

ロケットは不思議な形の雲を残して宇宙へいった。