D'Artagnan物語・三銃士T

第一段階・「高等法院」のフロンド(Fronde parlementaire)  序章  2004/07/27

2.第一段階・「高等法院」のフロンド(Fronde parlementaire)

およそ5年(1648〜53年)にわたる「フロンドの乱」は、小説「三銃士」では第一段階の「高等法院のフロンド(Fronde Parlementaire)」で終わってしまっている。その上に、パリ市民に国王の寝姿を見せる行(ぐたり)は第二段階の「貴族のフロンド(Fronde Princie're)」の時期に起きたことである。
史実は、これによって国王のパリ脱出は結果として出来なかったのである。


「フロンドの乱」の序説(背景)

アンリ4世のころから国務会議に大物貴族を排除し、新興の貴族(法服貴族)を用いてきた。
特に司法官、財務官などの(売官)官職は世襲化を認め、国政に参加させた。その上ある期間その官職にあれば貴族の称号を得られるようになったのである。
但し、官職購入価格の1/60に相当する金額を毎年納める必要があった。

→小説「三銃士」の中でフーケの検事総長の官職は15億円(150万ルーブル)であるから、この場合おおよそ2,500万円毎年支払わなければならなかった。

このような事柄について、武闘派貴族(旧貴族)は自らの権益を守るために官職売買とその世襲化には大反対であったのである。
しかし、悪いことに武闘派貴族は、法服貴族に比べ「文学などの学問的素養」や教養も又、「金」もない…ナイナイづくしであった。
それでも大貴族や親王などの皇族は、国務会議排除の見返りとして地方の「総督」や「年金」を要求しそれを得ていたのである。

○戦争続きで国庫金ゼロ

国王税……には直接税と間接税がある。
◎直接税
農民が負担した所得税の一種であるタイユ税。(人頭税)
タイユ税は国務会議が総額を決め農民に割り振ったのであるが、割振り役は国王役人(売官の)である。
国王役人(オフィシェ)は高い官職を買い、その上毎年使用料も払わなければならなかったからその資金を回収するために割振りは公平には行わない。
そんなような状況であったから税の増収が見込めなかったために、国王は「地方長官(アンタンダン)の制度」の常設化することにした。
即ち、国王役人を監督、又は代行させるために大法官によって任命された地方長官(アンタンダン)を常駐させたのである。
尚、又この地方長官は司法から行政、軍事までの権限があった。

→フランスは26の総徴税区(ジェネラリテ)と6つの地方長官管轄区(アンタンダンス)に分かれておりこれらの財務管轄区域にはそれぞれ財務監督官1名によって管理されていた。
◎間接税
塩税、関税、消費税など
徴税請負人とは、国王役人に代わり徴収する金融業(フィナンシェ)である。
即ち、国王に前貸しし、その金額の間接税を集め自らの収入にする。当然資金は膨大となるので金持ちの資産家から資金を集め利子を支払う。又直接国王にも直接融資する。
尚、官職の売買も仕事の一つである。
……今で言う銀行である。

……………………………………………………

フロンドの乱の頃になると、

○国王役人(売官)は国王任命の「地方長官」に権限を侵されつつあり、その上国王は新たな官職を売り出すことをしている。
○一方パリ市民(税金を払わない…人頭税・タイユ税)には、増収のためにトワーズ税(パリ城外区に建っている家屋に税をかける…禁令を活用)をかけることとした。
又パリ市に入ってくる関税の拡大等をしようとしたのである。

《参考》
パリ市民というのは特権階級である。
「パリの町民(Bourgeois do Paris・ブルジョワ・ド・パリ)」
「慣例に基づき、申請人の債務者(デビトゥール)が申請人に給付を履行するだけの財力を有するとの判定が裁判所から下されれば、誰であれ満1年と1日を経た者はパリに在住する町民(ブルジョワ)の資格を取得することの手続きを取ることが出来る。」
「パリの慣習法」第17条(Article 173 de la Contume de Paris)

《参考》
フランス国債
1522年フランソワ1世よりはじまる
法人としてのパリ市がその機関である市庁を通じて、国王直轄財産を担保に一定額の定期金債券を市民に対して売り出し、その代金をパリ市が国王に一括して貸し付けるという方法。
利息付き消費貸借が禁じられていた時代の市民にとり、投資の道を開く手段。



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