[ 第15章 結果 ]
「先生が説明致しますのでご家族の方、手術室の方へどうぞ」

手術後間もないこの時間に説明というからには、切り取った内臓を
見せられるのだろう。

彼女のお母さんが立ち上がる。その場で倒れたら困るから
俺にも行けとMさんが云う。従うことにした。

ほぼ同じ時刻に終了した手術があったらしく、そちらを執刀した
先生から家族への説明が先だということで、5分ほど待たされた。
清潔で静かな病院の廊下で過ぎていく時間は、とても長く感じられた。

前の説明が終わり、ほどなくして金属製のタッパーを抱えた手術着の
S先生が現れた。彼女の内臓を見るのは、何故だか覗き見のような、
悪いことをするような気持ちがした。

「Nさんですか?思った通りの手術ができました」

手術は成功したようだ。ほっとするが、まだ緊張は解けない。

「これが癌です」

そう指差された病巣は一円玉くらいの大きさで、他の組織に比べて
白っぽく変色していた。唇を火傷した時の感じに似ている。

「やはり(癌が)上の方にあったので、胃は全摘出しました」

「これから何十年も生きる方ですので特別な手術をしました」

「見た感じ、大丈夫ですね。これを検査して転移を見ます。1週間から
10日くらいで結果は出ますので」

そう話して再びS先生はドアの奥へ消えていった。
彼女のお母さんと待合室まで戻る。
涙が出そうになった。必死でこらえた。

よかった。




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