[ 第13章 光を ]
書き込みが終わった途端に涙が出た。
理由はわからなかった。

自分を取り戻す。
俺が泣いてどうする。
弱みを見せるな。意地を張れ。

俺にできることをひとつ見つけた。
彼女の前では必ず元気でいること。

病室につくと、彼女はMさんと話をしていた。
彼女のお母さんと弟さんが来ていると云うので、挨拶に行く。

やがて手術の時間が近づき、彼女は鼻からチューブを
入れられた。苦しそうだ。

そして時間。
看護師さんが、彼女が横たわったベッドを押して、廊下に出る。
病室のある3階から、2階の手術室へ行く為にエレベーターを使う。

なかなかエレベーターは来なかった。
やっと来ると看護師さんがたくさん乗っていて、急用だから
降りれないと云ったりして、数分待った。
急用なら階段で降りろ。そんな風に思うあたりに、心の余裕が無さが伺える。

手術室に着く。
彼女はベッドを降りて、中へと歩を進めた。
そして多分、いってきますと口を開いて、小さく微笑みながら手を振った。
俺は一生、このシーンを忘れることはないだろう。

小さな背中を、手術室の閉まるドアが遮った。
俺達は待合室に引き揚げる。

神でも天使でも悪魔でも良い。
今日のこの時に、光を!




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