[ 第10章 杞憂 ]
いくつかある検査をこなしていくうち、昼になった。
次に受ける項目は午後になると云うことで、地図などを買いに
一人でコンビニに行くことにする。

必要なものと小さいカツ丼を買う。
車の中で急いで食べる。味は良くわからなかった。

病院に帰ると、Mさんが買い物を終え、戻ってきていた。
さすが看護師さんだけあって、揃えたものにそつがない。

検査が終わり、病室に案内される。
荷物の収納を大まかにやり、外に食事にでることにした。

彼女にすれば、これでしばらく病院の外ですることがない食事。
その所為かどうか、メニューを選んでいる彼女は楽しそうだった。
さっき食べたばかりの俺は、コーラだけを飲む。

食事が終わってMさんも帰り、病室で荷物の整理をしていると、
手術前の面談を行うからと告げられた。

様々な聴取が終わった後、術後の食生活について、失語症の
俺に代わりに彼女が尋ねた。
食事のたびに消化の為の薬が必要なんでしょうか。

「そんなことありませんよ」

消化するための酵素は、胃液ばかりではないらしい。
唾液にも含まれるし、他の臓器からも微量ながら分泌されるそうだ。
だからしつこいほどに咀嚼が必要だけれど、薬を飲む必要はないと云う。

小さいけれど、嬉しいニュース。




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