3.決着

 

オートボッツとマクシマルズ、そしてプレダコンズが入り乱れて戦う戦場に乱入してきた集団がいた。サイバービースト部隊である。オライオンによって地平線の彼方まで飛ばされた彼らが、ようやく戻ってきたのであった。

「ミ、見ロ!シティガトランスフォームシテヤガル!」

 ラプチャーを抱えて飛行しながら、ビーストモードのスティンガーが叫んだ。

「マクシマルノ奴ラモ、ピンピンシテイルゾ!ドウナッテンダ?」

 同じくビーストモードのメイルストロームにぶら下がったグレイハウンドが、眼下の光景に我が目を疑っていた。

「構ウナ。ドラゴナス様ト合流スルノガ先決ダ!」

 彼らの中で最も地位の高いメイルストロームの言葉に、一同は戦場を見渡し、そしてようやく、ドラゴナスと戦っているオライオンの姿を見つけた。

「イタゾ!ドラゴナス様モ一緒ダ!」

「ヨシ、サイバービースト部隊、テラライズ!」

 ロボットモードにトランスフォームして着地した彼らはドロイド達を掻き分け、復讐心をたぎらせながらオライオンの背後に迫ってきた。しかしその手前で彼らの前に立ちはだかった者たちがいた。ベアハンドら、地球残留組のマクシマルズである。

「おっと、お前等の相手は俺たちだ!」

 拳を鳴らしながら、ベアハンドが前に出た。

「その通り。一対一の勝負に邪魔立ては無用!」

 剣を構え、レイザーソーもその横に立った。

「エエイ、貴様ラコソ邪魔ヲスルナ!」

「マズオ前ラカラ片付ケテヤル!」

「望むところだ。いくぜ!」

 ベアハンドはグレイハウンドに、レイザーソーはメイルストローム、そしてワイルドランナー、ハードシェル、トーディ、ウィールジャックの四人はそれぞれスティンガーとラプチャーに向かっていった。

 

 

「それにしても君のその姿は実に不愉快だな。すぐにも三枚身におろしてやるとしよう」

同じシャークタイプであるメイルストロームと剣を交えつつ、レイザーソーは顔をしかめて言った。

「ホザケ。貴様コソズタズタニ切リ裂イテクレル!」

メイルストロームとレイザーソーの戦いはほぼ互角であったが、他のマクシマル達は苦戦を強いられていた。プロトタイプとは言え、彼等サイバービーストのボディは通常のビーストトランスフォーマー以上のパワーを持っており、第一世代のマクシマルでは明らかに分が悪かったのである。

「博士。あいつら思ったより強いズラ。このまんまじゃまずいズラ」

 得意のヘッドバット攻撃をラプチャーに撥ね返され、頭をふらつかせながらトーディがウィールジャックに泣きついた。

「心配するな。もうじき我輩の秘密兵器が到着する頃だ」

 自身ありげに答えるウィールジャックに、トーディが目を丸くした。

「ひょっとしてアレを呼んだズラか?でもまだテストが・・・・・・」

「大丈夫。我輩の理論は完璧だ・・・・・・ほら来たぞ!」

 ウィールジャックが指差した方角の空から、一機のホバーバイクがリモコン操縦で飛来した。彼の手前で着地すると、ホバーバイクのノズルが回転し、地上走行用のタイヤとなった。

「笑ワセルナ。ソンナバイクガ秘密兵器ダト?」

 嘲り笑うラプチャーに構わず、ウィールジャックはバイクに乗り込んだ。

「こいつは前座だよ。真打ちの登場まで、我輩のスタントでも楽しんでもらおうか!」

 そして派手な爆音と土煙を立てつつ、彼はウィーリー走行でバイクを走らせた。応戦するサイバービーストの銃撃を巧みなドライビングテクニックでかわしつつ、彼はバイクに搭載されたミサイルを発射した。その爆発にスティンガーが吹き飛ばされ、ベアハンドと格闘中のグレイハウンドの背中に衝突した。それに気を取られたラプチャーはバイクに轢き倒され、顔面にタイヤの跡を作ってひっくり返った。

「どうだね。我輩の腕前も中々のもんだろ?」

 オートボット時代から、ウィールジャックはカーモードで自分のスタントを見せびらかすのが好きであった。アクションマスターとなって変形能力を失っても、彼は自分自身で操縦する空陸両用のビークルを開発し、地上のみならず空中でもスタントに明け暮れていた。そしてマクシマルとなった今でも、その腕前は衰えていなかったのである。

「フ、フザケヤガッテ・・・・・・マズアイツカラ血祭リニ上ゲテヤル!」

 メイルストローム以外のサイバービースト達が、殺気立った目をウィールジャックに向けた。しかしその中のグレイハウンドの足に、後ろから何かが絡みついた。

「ナ、何ダコレハ・・・・・・!」

 自分の足に巻きついている触手に気付いた瞬間、突然強い力で引っ張られ、転倒したグレイハウンドは、そのまま河の流れる崖下まで引きずり込まれた。 ラプチャーとスティンガーがそれに気付いた時には、グレイハウンドの姿は既に崖下に消えており、やがて悲鳴と共に、哀れにも手足を引きちぎられた彼のボディが放り投げられ、地面に転がった。

「ド、ドウシタンダ?」

 突然の事態に顔を見合わせる二人の前に、崖下から今度は二本の触手が伸びてきた。慌ててそれから逃れた二人を追って、触手の主が崖をよじ登り、姿を現した。その異様な姿に、彼らだけでなくマクシマル達も言葉を失って立ち尽くした。彼らの前に現れたのは、八本の足を持った巨大な蛸であったのだ。

「どうだね、これぞ我が秘密兵器、テンタクリーパーだ!」

 全地形対応ビークルであるテンタクリーパーは、ウィールジャックがフォールラボラトリーで製作していたものである。ラボの最下層にしまわれていたために、彼を拉致した侵入者にも見つからずに無事であり、そして彼が解放された時、無線操縦でここまで呼び寄せていたのであった。

 得意げに胸をそらすウィールジャックに、その場の全員が嫌悪感を露わにした。

「ナ、何テ悪趣味ナモン作リヤガル!」

「やれやれ、聞きしに勝るマッドサイエンティストだな・・・・・・」

 敵味方の両方から非難の言葉を受け、ウィールジャックは首を振った。

「やれやれ。やはり凡人には我輩のセンスは理解できんようだのう」

「そうズラ。皆には博士の偉大さが分からねえズラ。天才を知るのは天才のみズラ」

 お追従の言葉を並べ立てるトーディを片手で制し、ウィールジャックはバイクを再びホバーモードに変形させた。

「それでは皆にこいつの実力をご披露しよう!」

 そしてバイクは浮上し、巨大蛸の元へと飛んだ。それに合わせて蛸の頭部が真ん中から割れ、左右に展開した。バイクは開いた頭部の中央部へと降下し、そして合体した。

「どうだね諸君。これがテンタクリーパーの戦闘モードだ!」

 ウィールジャックを乗せたホバーバイクは、そのままテンタクリーパーのコクピットとなり、二基のミサイルランチャーが、戦車の砲塔のようにセットされていた。

「エエイ、ソンナコケオドシニダマサレルカ!」

 ロータリーブレードを回転させながらラプチャーが突進し、スティンガーも飛び上がって空中から攻撃を仕掛けた。

「コレデモ食ラエ!」

 スティンガーの頭部が胴体に引き込まれ、代わりに背中のキャノンがセットされて、ミサイルを発射した。しかしテンタクリーパーは六本の足を器用に動かし、信じられないようなスピードで真横に移動してミサイルを回避した。

「ナ、何ダト?」

 その動きに気を取られたスティンガー目掛け、テンタクリーパーが正面の触手を素早く伸ばした。触手は彼の足に巻き付き、地面へと引き摺り下ろした。そのボディはテンタクリーパーの足元に攻撃をかけようとしていたラプチャーの頭上に落ち、折り重なって倒れた二人はそれぞれ二本の触手に絡め取られ、締め付けられた。

「ハ、放セ!」

 二人は必死にもがいたが、彼らのパワーをもってしても、その触手を振りほどくことは出来なかった。そしてテンタクリーパーは捕らえた二人のボディを思い切りぶつけ合った。力無く地面に落ちた二人の上を、更に六本の足が踏みしだき、それらが通り過ぎた後には五体ばらばらとなった彼らの残骸が転がっていた。

「す、すげえ・・・・・・」

 あっという間のことに、ベアハンド達は呆然としていた。

 

 

「スティンガー!ラプチャー!」

 未だ続いていたレイザーソーとメイルストロームとの剣の勝負は、メイルストロームの方が優勢であったが、突如現れた巨大蛸によって三人の仲間が倒されてしまったことに、彼の注意が逸れてしまった。

「隙あり!」

 すかさずレイザーソーのクローウェポンがメイルストロームの左腕のトルネードキャノンの付け根を挟み込み、一気に切断した。

「グッ、キ、貴様!」

 肘から先を失った左腕を押えるメイルストロームに、レイザーソーがソードを向けた。

「戦いの最中に気を取られるとは、剣士失格だな!」

「オノレ、旧式ビーストメガ!」

 メイルストロームの胸部中央からミサイルが発射された。

「何の!」

 レイザーソーもまた、胸からミサイルを発射し、二発は両者の間で爆発した。そしてその爆発の煙の中から、レイザーソーが身を低くして突っ込んできた。

「ナニッ?」

 メイルストロームは慌てて右手のブレードを撫で斬りにしたが、ブレードはレイザーソーの頭上をかすめ、一瞬後、彼の体はメイルストロームの横を通り抜けていた。

「キ、貴様・・・・・・」

 メイルストロームは振り返ろうとしたが、彼の上半身が不意に横に滑り、そのまま下半身を残して地面に落ちた。

「ソ、ソンナ馬鹿ナ!」

 一瞬のすれ違いの間に真っ二つにされた彼は、今の自分の状況が信じられずにいた。戦闘力を失った彼を見下ろし、レイザーソーは言った。

「勝負はボディの新旧で決まるものではないよ。技量で決まるのさ」

 

 

 

「馬鹿な!サイバービーストがあんな奴らに!」

 一瞬、対峙している相手のことも忘れ、ドラゴナスは驚きの声を上げた。瞬く間にサイバービーストを全滅させたマクシマル達は全員テンタクリーパーのデッキに乗り、今度はドロイドの群れに突っ込んでいた。そしてテンタクリーパーはその触手で、ドロイド達を文字通りにちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していた。

怒りと驚きの目でそれを見ている彼にオライオンが声をかけた。

「どうした。頼みの部下達がやられて、打つ手無しというところか?」

 オライオンの言葉に、ドラゴナスは我に返り、歯軋りした。

「黙れい!例え完全にリペアされようが、貴様など俺の敵ではないわ!」

 そう叫ぶと、ドラゴナスはドリルタンクモードにトランスフォームし、ドリルを回転させながら再び迫ってきた。左右どちらかに避けようにも、キャタピラ部前方のガトリング砲が火を噴き、オライオンの退路を塞いでしまっていた。しかし、彼は避けるどころか、逆に真っ直ぐ突っ込んできた。

「馬鹿め、気でも狂ったか?」

 ドラゴナスは一気に加速し、そのドリルはオライオンのどてっ腹を貫くかに見えた。しかしその寸前にオライオンは身をかわし、脇にドリルを抱え込んだ。ドリルの刃が腕と脇腹を削り、激しく火花を散らせた。その痛みに顔を歪ませながらも、オライオンは足を踏みしめ、ドラゴナスのボディを抱え上げた。

「な、何い?」

 足場を失い、ドリルを押さえられたドラゴナスは、逆に自分自身が激しく回転する羽目になってしまった。

「し、しまった!」

 慌ててドリルを止めたものの、そのままオライオンに放り投げられ、ドラゴナスは地面に横倒しとなった。ロボットモードに戻り、ふらつきながら立ち上がったドラゴナスに、オライオンがクローを向けた。

「お前達の負けだ、ドラゴナス。既にサヴェッジ・プレダコンズも倒れ、ドロイド軍団も彼らとマクシマスが片付けている。もう勝ち目は無いぞ!」

 だが、それを聞き入れるようなドラゴナスではなかった。

「やかましい!他の奴らがどうなろうが知ったことか!俺は貴様さえ殺せればそれでいいのだ!ガンマUでの屈辱を晴らすために、俺はプレダコン共の元で耐え忍んできたのだからな!」

 そして彼は両手にバトルアックスを構え、斬りかかってきた。しかしそれももはやオライオンには通じなかった。アックスが彼の体に達する前に、両腕のクローによって薙ぎ払われ、宙に飛んでいた。更に両膝のガトリング砲も切り払われ、一瞬にしてドラゴナスの武器は失われた。

「やはり、口で言っても駄目か!」

 ここに至ってまだ抵抗の意思を見せるドラゴナスに、オライオンはクローを突き立てようとした。しかし、まだ彼には抵抗の手段が残されていた。

「馬鹿め、俺には奥の手があったのを忘れたか!」

 その叫びと同時に、ドラゴナスの背中の翼が変形し、クワガタムシの大顎のような形になって、オライオンの体を挟み込んだ。

「ぬううっ!」

 鋸状の刃がボディに食い込み、オライオンは苦悶の声を上げた。彼を挟んだまま、背中のピンチャークローを右手に持ち替え、ドラゴナスは更に彼を締め付けた。勝ち誇った笑みを浮かべ、ドラゴナスは言い放った。

「ガンマUでの戦いでも、貴様はこのクローの餌食となるところだった・・・・・・もっとも、あの時真っ二つになった間抜けは、貴様の相棒だったがな。確か、クロックワイズといったかな?」

 しかし、その言葉が彼の命取りとなった。

「うおおお!」

 突如、オライオンの目が怒りに輝き、獅子の咆哮を思わせる叫びと共に、自身を挟み込んでいるピンチャークローをこじ開け始めた。そのパワーにクローは耐え切れず、あっさりと砕け散った。

「な、何だとぉ?」

 突然のことにうろたえるドラゴナスの顔を、オライオンの拳が直撃した。たまらずよろける彼を、オライオンは更に一発、また一発と殴り続けた。

「お前の・・・・・・お前のような奴がいるから!」

 怒りに声を振るわせつつ、オライオンは拳を打ち続けた。その怒りは、単に彼をかばって破壊されたクロックワイズを侮辱されたからだけではなかった。彼らの存在が、ファイアストリームの言葉の正しさを証明することになるようにも思えたからである。

 全身に鉄拳を浴び、倒れたドラゴナスに、オライオンは怒りの声を向けた。

「立て!お前が私を殺すために蘇るというなら、私は何度でもお前を倒してやる!」

 ふらつきながらも立ち上がったドラゴナスは、再びドラゴンにトランスフォームした。

「俺が死ぬときは、貴様も道連れだ!」

 その叫びと共に、ドラゴナスは口から炎を噴き出した。炎はオライオンに直撃し、その全身を包み込んだ。

「どうだ!この俺の執念の炎、貴様ごときに消せはせんわ!」

 だが、次の瞬間、炎が竜巻のように渦を巻き、そして彼の方に向かって来た。そしてその中からスピニングシールドを回転させつつオライオンが飛び出してきた。そのボディは再びハイパーモードとなり、まばゆい光を発していた。

「ばっ、馬鹿な!貴様ごときに・・・・・・」

 その先を口にすることはドラゴナスには出来なかった。閃光と化したオライオンが彼を襲い、瞬時にそのクローで彼の全身を切り裂いたからである。

 

 

 オライオンが元のモードに戻ったとき、彼の前にはずたずたになったドラゴナスが横たわっていた。半分以上の外装を剥ぎ取られ、翼もドリルも失い、立ち上がることも出来ずに、ドラゴナスは辛うじて首だけを動かして、オライオンを見上げた。

「俺の負けだな・・・・・・止めを刺せい!」

 一瞬彼に向けたクローを引っ込め、オライオンは背中を向けた。

「私はマクシマルだ。たとえ敵であろうと、みだりに命を奪うことなど許されない」

 彼を置き去りにし、仲間の加勢に向かおうとするオライオンの後ろで、ドラゴナスは笑い声を上げた。

「二度も貴様に敗れた俺に、これ以上の生き恥を晒せというのか・・・・・・それがマクシマルの流儀というわけか」

 そしてドラゴナスは自分の胸のパネルを開いた。彼の胸の水晶球のようなパーツの下には、彼のスパークが弱々しく光っていた。小型のエナージョンナイフを取り出すと、彼はそれを自分のスパークに向けた。

「貴様が貴様の流儀を貫くというなら、それも良かろう・・・・・・だが、俺にも俺の流儀というものがある!」

 その言葉の意味するものに気付き、オライオンは振り返った。

「ま、待て、ドラゴナス!」

 しかし、もはや手遅れであった。既にエナージョンナイフは彼のスパークに深々と突き刺さっていた。断末魔の悲鳴のようにスパークの発する電光が全身を包み、白熱化しながら、ドラゴナスは高らかに笑っていた。

「フハハハハ!さらばだ、オライオン・プライマル!」

 その直後、彼の体は光の玉となって爆発し、周囲にいたドロイド達を巻き込んで消滅した。身を伏せて爆風を防いでいたオライオンが起き上がったとき、ドラゴナスの姿は跡形も無く消え去っており、地面に大きな穴だけが残されていた。

「ドラゴナス・・・・・・」

 しばらくの間その穴を見つめ、そしてオライオンは無意識の内に敬礼をしていた。憎むべき敵ではあったが、何故かそうせずにはいられなかったのである。

 

 

 

「どうやらてめえのお仲間がくたばったようだな。次はてめえの番だぜ!」

 ヴォルカノックと鍔迫り合いをしながら、オプレスは言った。遠く離れた彼らの場所からも、ドラゴナスの爆発の光は見えていた。

「ふん、所詮奴は時代遅れのディセプティコン・・・・・・只の捨て駒でしかないわ!」

 剣を払い、間合いを離してヴォルカノックは言い放った。

「薄情な野郎だぜ・・・・・・まあ、仲間思いのプレダコンの方が珍しいがな」

 バトルクラブを収め、オプレスはプラズマキャノンを構えた。

「だったらてめえも、奴の後を追わせてやるぜ!」

 そしてプラズマキャノンが轟然と火を噴いた。しかしそれが命中する直前、ヴォルカノックのボディは分離し、再び三体の恐竜になって襲い掛かった。だがオプレスは逆にその中のラヴァの長い首を掴み、思い切り締め上げた。

「ぐあっ!」

「は、放せ!」

 先ほどと同じように、攻撃を受けていないイジェクタとアースクエイクが苦痛にのたうった。それを見て、オプレスの推測が確信へと変わった。

「なるほど、思った通りだ!」

 ラヴァの体を床に投げ出し、オプレスは彼らを指差した。

「てめえら、精神だけじゃなく、感覚まで一緒ってわけか!こいつぁいいぜ!」

 弱点を気付かれ、三体の恐竜はうろたえた。

「よ、よくぞ見抜いた・・・・・・」

「だが、それで勝ったと思うのは早いぞ!」

 もう一度合体し、彼らはフューザーモンスターとなった。そして空から攻めようと、彼は翼を広げた。だがそれよりも早く、オプレスは彼の頭上に飛び上がり、ビーストモードになって、のしかかった。

「ぐはっ!」

 巨大なマンモスにのしかかられ、ヴォルカノックはたまらず地面に叩きつけられた。更にマンモスの鼻が首に巻きつき、締め付けられた彼は呻き声を上げた。

「どうだ、さっきのお返しだ!」

 しかし、そのオプレスを今度はヴォルカノックの尻尾である海竜の首が鞭打ち、彼は地面に投げ出された。

「ふざけた真似をしおって!許さん!」

 ロボットモードに戻ったオプレスの首を噛み砕こうと、ヴォルカノックの大顎が迫ってきた。咄嗟に頭を庇った左腕にヴォルカノックが噛み付き、その牙が腕に食い込んだ。

「しまった!」

 オプレスの顔に焦りの色が浮かんだ。しかしそれは腕を犠牲にしたことではなく、左腕の方を出してしまったことによるものであった。

「まずはその不恰好な左腕から食いちぎってくれるわ!」

 ヴォルカノックの言葉に、オプレスの表情が一変した。

「てめえ・・・・・・今何て言いやがった?」

 その目が放つ光に一瞬怯んだヴォルカノックの顎を、オプレスの膝蹴りが直撃した。たまらず顎を離し、のけぞるヴォルカノックに、更にオプレスの拳がヒットした。

吹っ飛ばされて地面に落ち、ロボットモードになって立ち上がったヴォルカノックの前に、全身から吹き出さんばかりの怒気を込めて、オライオンが歩み寄ってきた。

「てめえ、この腕を馬鹿にしやがったな・・・・・・許せねえ!」

 その怒気に気圧されながらも、ヴォルカノックは気を取り直し、剣を掲げて斬りかかった。

「その腕が何だというのだ!マクシマルめ!」

 しかし、剣が振り下ろされる前にオプレスのバトルクラブが一閃し、その手から剣を弾き飛ばした。

「何っ?」

 武器を失った右手を呆然と見つめるヴォルカノックの懐に、風のような勢いでオプレスが飛び込んできた。

「オラオラオラオラオラオラオラー!」

 マシンガンのごとく連続してバトルクラブで打ち据えられ、ヴォルカノックの体が宙に浮き、とどめの一撃を食らって再び吹き飛ばされた。

「な、何だ・・・・・・何故ここまで奴は・・・・・・?」

 全身を殴打されてへこませ、すっかり動揺しているヴォルカノックに、オプレスは左腕を突きつけた。

「この腕は俺のダチだ。馬鹿にする奴は誰だろうと許さねえ!」

 

 

 オプレスがオートボットであった時代、彼は親友であるバックファイアと共にオライオンの部隊に所属しており、サイバートロンにおいて数多くの戦場を戦い抜いてきた。しかし数十年前の首都奪回作戦で、オプレスとバックファイアは独断で先行し、ディセプティコンの大部隊の待ち伏せを受けることとなってしまった。

 オライオン達の救援によって救われたものの、オプレスは左腕を、そしてバックファイアは命を失うこととなってしまった。その後オプレスはオライオン達と袂を分かち、親友の亡骸と共に部隊を去った。彼はバックファイアのパーツを使って自分の左腕を作り、マクシマルとなった今でも、その腕だけは元のまま残していたのである。

 

 

 歩み寄るオプレスの剣幕にうろたえ、ヴォルカノックは辺りを見回した。

「サヴェッジ・プレダコンズ、何をしている?援護しろ!誰もいないのか!」

 しかし、彼らは既に訓練生達によって全員倒されており、答える者はいなかった。

「観念しな。てめえらまとめて剥製にして、博物館に飾ってやるぜ!」

 地面に散らばるドロイド達の残骸を踏み越えつつ、オプレスはヴォルカノックに向かって歩み寄ってきた。だが、その残骸の中から突然何者かが飛び出し、オプレスの足に飛びついた。

「今ですぜ、ボス!」

 渾身の力で彼の両足にしがみついているのはホーンヘッドであった。ロングヘッドに敗れ、吹き飛ばされた彼はドロイドの残骸に紛れ、「死んだ振り」をしながらオプレスに近づいていたのである。

「よくやったぞ、ホーンヘッド!」

 意気を取り戻し、ヴォルカノックは剣を拾い上げた。

「こ、この野郎、放せ!」

 しかし彼の両足はホーンヘッドによってがっちりと押えられており、振りほどくことは出来なかった。そのオプレスに、ヴォルカノックが剣先を向けた。

「死ね、オプレス・プライマル!」

 その声と共に、剣の刀身がミサイルのように発射され、オプレスの胸元へと一直線に飛んだ。

「グギャアアアアア!」

 断末魔の悲鳴が響き渡った。しかしその声の主はオプレスではなかった。

「ひ、ひでえ・・・・・・人を盾に・・・・・・」

 苦しげに声を出すホーンヘッドの背中には、発射された剣の刃が深々と突き刺さっていた。剣が突き刺さる直前、オプレスは自分から仰向けに倒れ、その反動で両足をホーンヘッドごと持ち上げ、盾にしたのである。

「そう思うのはまだ早いぜ!」

 なおも右足にしがみついたままのホーンヘッドの体を、オプレスは足のアンカー型ミサイルを発射して引き剥がした。ミサイルに押されて地を滑るホーンヘッドの体は、ヴォルカノックが追い討ちでシールドから発射したミサイルとの間で挟み撃ちとなり、爆発と共に粉々に砕け散った。今度はもう「死んだ振り」ではなかった。

「お、おのれえ!」

 爆発の煙が晴れない内に、フューザーモンスターとなったヴォルカノックが突っ込んできた。しかし、破れかぶれとも言えるその攻撃は、完全にオプレスに見切られていた。

オプレスの頭を狙って開いた口に、頭の代わりにプラズマキャノンが突っ込まれ、彼は目を白黒させた。

「あがっ・・・・・・!」

 次の瞬間、発射されたビームに貫かれ、一瞬膨張したヴォルカノックの体は大爆発を起こして吹き飛んだ。そしてオプレスもまた至近距離の爆発に飛ばされ、地面を転がった。

 起き上がったオプレスの足元に、ヴォルカノックの首が転がってきた。そのスパークは無事だったものの、翼も前足も失って翼竜モードになることも出来ず、ヴォルカノックは恐怖に引きつった顔でオプレスを見上げた。

「た、頼む!スパークを破壊するのだけはやめてくれ!スパークまで壊されたら、もう・・・・・・」

 哀願するヴォルカノックの頭を、オプレスは無言で踏み潰そうとした。しかしその寸前で足を止め、彼は数歩下がった。

「てめえなんぞ、止めを刺す値打ちもねえぜ!」

 そしてオプレスは助走を付け、サッカーボールのようにヴォルカノックの頭を蹴り飛ばした。猛烈な勢いで彼の頭部は飛んで行き、そして山を飛び越え、はるか彼方の太平洋へと飛んでいった。

 

 

 

「どうやら手助けはいらなかったようだな」

 背後からの声に、オプレスは振り返った。いつの間にか彼の元にオライオンがやってきていたのだ。

「ああ、俺より生徒達の方を心配した方がいいんじゃないか?」

「言っただろう、私の生徒は優秀だとな」

 オライオンの言葉を証明するように、それぞれ敵を倒したクロックワイズと訓練生達が彼らの元に集まってきていた。

「残るはドロイド共と、あと一人・・・・・・」

「ヘクサトロンか!」

 二人は顔を見合わせた。乱戦の中、ヘクサトロンにはレヴォリューショナリーズのメンバーが向かっていたはずだった。彼らの姿を求め、マクシマル達は戦場を見回した。

そして程なくして彼らの姿を見つけたとき、彼らの戦いもまた終わっていた。しかし、その場に立っていたのはヘクサトロンただ一人であった。

 

 

 

マクシマルに取り付こうとするヘクサトロンの前に、ターボレイサーを先頭にレヴォリューショナリーズの面々が立ちはだかった。既にレイルライダーズとコンストラクションフォースはそれぞれ合体して、後方に控えている。

「これ以上先へは進ません!」

「司令官の仇、討たせてもらうぜ!」

 しかし、大小合わせて五人のオートボッツを前にしながら、ヘクサトロンは余裕の表情を浮かべていた。

「愚かな・・・・・・リーダーを失い、満身創痍のお前達ごときが私を倒せると思っているのか?」

「ファイアー!」

 ターボレイサーの号令で、レヴォリューショナリーズは一斉射撃を開始した。しかしヘクサトロンは背中の翼をマントのように翻し、それらを全て防いでいた。

「馬鹿な!全く通じないなんて・・・・・・」

 ターボレイサーが愕然とした表情となった。かつてアジア方面軍として、彼らは幾度と無くヘクサトロン率いるプレダコンズと戦っていた。しかし、プレダコンズの中でも下級のゴロツキ集団に過ぎなかった他の部下達はともかく、ヘクサトロン自身の力はメガトロンに引けを取らないほど強大であり、彼一人のために彼らは幾度も苦戦を強いられていた。

とは言え、彼も決して無敵ではなかった。それ故に彼の野望はファイアストリーム達によってことごとく阻まれてきたのである。だが今彼らの前にいるヘクサトロンは、以前とはまるで別人のように、彼らの攻撃を全く受け付けなかった。それは単に、彼らのダメージがまだ完全には回復していないからというだけではなかった。

「下がっていろ、我々がやる!」

 その声と共に、トリプレックスとディストラクターが前に出た。ディストラクターの方は、リフトアップを両腕とする格闘戦タイプのクラッシュフォームとなっている。そして二人は同時にヘクサトロンに突進した。

「哀れなものよ・・・・・・ビーストモード!」

 ヘクサトロンは邪悪な笑みを浮かべ、トランスフォームした。その姿は巨大な双頭のドラゴンであり、二つの首が、同時に繰り出されたトリプレックスとディストラクターのパンチを軽々と受け止めた。

「なっ・・・・・・?」

 拳に噛み付くドラゴンの顎を振りほどこうとする二体を逆に振り回し、体勢が崩れたところを、ドラゴンの口から発射されたエネルギー弾が直撃し、二体は同時にひっくり返った。

 次にヘクサトロンはジェット機モードにトランスフォームし、空からターボレイサー達に襲い掛かった。機首の両脇から発射されたエナージョンミサイルによってヘビーアームが吹き飛ばされ、ジェットパックで空に逃れたエスコートも、瞬く間にヘクサトロンに追いつかれ、その鋭利な翼に背中を切り裂かれて墜落した。

 更にヘクサトロンは地上に降り、レーシングカーのようなアサルトビークルモードになってターボレイサーに迫った。ターボレイサーはカーモードにトランスフォームして相手を引き離そうとしたが、チーム一のスピードの持ち主である彼ですら、ヘクサトロンから逃れることは出来なかった。

後ろから撥ね飛ばされ、宙に舞った彼の車体は、引き返してきたヘクサトロンに二度三度と跳ね上げられ、最後にはフロントカウルに装備されたチェーンソーの餌食となってしまった。

 立ち上がったディストラクターには、ハンドモードとなったヘクサトロンが掴みかかった。巨大な「手」そのものに全身を握り潰され、合体を解除する間も無く、ディストラクターは抵抗力を失った。

 最後にヘクサトロンはバットモードになり、トリプレックスの銃撃をかわしつつ、その背後に取り付き、背中に牙を突き立てた。必死になってそれを引き剥がそうとしたトリプレックスであったが、その牙が彼のボディからエネルギーを吸い取り、やがて彼の目から光が消え、力無く地面に倒れ込んだ。

 

 

 

 その名が示す通り、六つの形態を駆使してレヴォリューショナリーズを全滅させたヘクサトロンは、続いて現れたマクシマルズに気付き、状況を理解した。

「やれやれだな、サヴェッジ・プレダコンズも使い物にならなかったとは・・・・・・所詮ヴォルカノックも二流の技術屋であったか」

 それでもなお余裕の笑みを崩さない彼を、オライオンが指差した。

「今度は我々が相手だ、ヘクサトロン!」

「あとはもうてめえだけだ。お仲間二人が待ってるぜ!」

 オプレスの言葉にも顔色一つ変えず、ヘクサトロンは平静を保っていた。

「彼らなど、この私の野望の踏み台に過ぎん。せめて君達と相討ちにでもなってくれればと思ったのだが・・・・・・どうも私は有能な味方に恵まれない運命のようだな」

 冷酷そのものの言葉に、訓練生達は怒りを露わにしたが、オプレスは違っていた。

「そう言うと思ってたぜ。ずる賢い野郎だ」

 オライオンが進み出て、問いかけた。

「改めて聞かせてもらおう。ファイアストリームにドミネイターディスクを渡して叛乱を起こさせ、我々と戦わせたのも、彼らにスペースブリッジを作らせ、サイバートロンの制圧を目論んだのも、全てお前の書いた筋書きなのか?」

 その問いかけに、更に邪悪さを増した笑みを浮かべ、ヘクサトロンは答えた。

「その通り。あの哀れな道化役者が、この私のシナリオ通りに踊り続けるのを見るのは、実に楽しかったよ。付け加えて言うなら、正義漢気取りのオートボッツに地球征服をやらせ、奴らと地球人との信頼関係とやらを完膚なきまでに破壊するのもまた目的の一つだったのだ」

 怒りのこもった目で睨み付けるマクシマルズの顔を見渡し、ヘクサトロンは続けた。

「あとは君達全員を始末しさえすれば、私は晴れてサイバートロンを手にすることが出来、君達マクシマルズとオートボッツは、永遠に地球人の敵として彼らの記憶に刻み付けられるというわけだ」

 そして高笑いをするヘクサトロンの声を遮ったのはオライオンであった。

「そうはさせん。我々がお前の野望を阻止してみせる!それに・・・・・・」

 一旦区切り、オライオンは言葉を続けた。

「少なくとも、お前の企みは既に地球人には知られている!」

 その言葉に、初めてヘクサトロンの笑いが消えた。

「何だと?それは一体どういう意味だ・・・・・・?」

 

 

 

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