未来への鍵・14



俺が渡した二枚のCDを受け取った香穂子は、窓辺の光に包まれながら、胸の中へ大切に抱き締めている。秘密の贈り物を手渡す瞬間を、ずっと想い描いていた笑顔そのもので。その君を俺が抱き締めれば、心で奏でるヴァイオリンの音色が響き渡り一つになる。はにかんで顔を上げる香穂子が身動ぎ、君と俺の真ん中へ掲げたCDの脇から、ちょこんと笑顔を覗かせた。


「ねぇ蓮くん、ガーデンパーティーで一緒に演奏する曲を決めようと思うの。何かリクエストはある?」
「香穂子が持っている俺のCD・・・いや、ヴィルヘルムたちが作ってくれた、世界でたった一枚のCDに入っている曲はどうだろうか。香穂子が帰国する直前に、収録の合間のステージで共に奏でた二重奏を、もう一度君と弾きたい」
「それとっても素敵だね! 私も蓮くんと弾きたいなって思っていたの。あれからたくさん練習したんだよ、いつかまた合奏する機会はあるって信じてたから・・・凄く嬉しい。今日のブライダルフェアーに来たカップルは幸せだなって思うの。だってヴァイオリニスト月森蓮のヴァイオリンが、CD発売より先に聞けちゃうんだもの」
「俺だけではない、君と俺の演奏会・・・だろう? 俺のヴァイオリンは君に向かっている。奏でる音色はいつも君と共にあるんだ。今日はそれを、現実のものにできて俺も嬉しい。音楽を共に楽む、良い演奏会にしよう」


うん!と満面の笑顔で力強く頷く香穂子は、持っていたCD裏面のタイトルを示しながら、愛の挨拶も弾こうねと頬を綻ばせている。もちろんだ、俺たちにとって大切な曲だから・・・そう微笑みを注ぎ、CDを持つ手に重ね包んだ。

楽屋に戻れば譜面があることを告げる香穂子は、俺が贈った二重奏の楽譜をお守りのように大切に持ち歩いていると、照れ臭そうに語ってくれた。手書きの譜面に刻まれた音の一つ一つから俺の想いが伝わるのだと、溢れる音のように身振り手振りで熱心に喜びを語り、瞳を輝かせる君を、俺も緩めた眼差しで受け止めよう。ほら・・・心地良い音色が聞こえるだろうか。

思い出を重ね合いながら、一つのものを作る幸せのアンサンブル。秘密の楽しみな企画は、一人よりも君と一緒ならもっと楽しい・・・そう思う。たくさんの人からもらった想いの花びらを一つに束ね、二人で大きな花を作ろう。君と俺が重ねる音色の先に、たくさんの笑顔が生まれることを願って。


「私も弾きたい曲があるの。模擬挙式だけど新郎新婦さんがいるし、せっかくだから思い出のワルツを弾きたいの。実はね、その譜面も楽屋に持ってきているんだよ。私が初めて蓮くんの留学先を訪ねたクリスマスを覚えてる?」
「ヴィルヘルムのお兄さん夫妻の結婚式に二人で呼ばれて、パーティーの最後に新郎新婦さんが踊るワルツを一緒に弾いたな。その時の曲か、もちろん構わない。まだそれほど経っていないのに、懐かしいな」
「素敵な大理石の広間でお城の舞踏会みたく、みんながくるくる花びらみたいに踊るの。私たちのヴァイオリンが花を運ぶ春風になったんだよね。思い出すと今でも、胸が温かくなってときめくの。私のヴァイオリンが誰かの力や笑顔になるのが嬉しかった。私にとって、未来を見つめる大切な鍵になったんだもの」


するりと腕から抜け出すと、青いドレスの裾を摘みくるりとターンをして。裾の花をふわりと咲かせながら軽やかなステップを踏み出した。踊りましょう?と瞳で誘いかける、風に舞う花びらの君をゆっくり追いかければ、いつしか元いたソファーの場所へ戻っている。青い刺繍が施された青い布張りの長ソファーへ、ゆらりふわりと舞い降りた、赤と青を纏う可憐な花びら。笑顔で俺を見上げ、ポスポスと隣を叩く君の隣へ腰を下ろせば、触れ合う温もりから、脳裏に描く光景や心に流れる音色まで伝わってくるようだ。


「香穂子がパーティーの最後に必ずワルツを弾くと、俺をガーデンに案内してくれた君のチーフが言っていた。打ち合わせもしていないのに、新郎新婦が幸せそうに踊り出すのだと。俺も聞きたかった・・・奏でるヴァイオリンが温かくガーデンを包む光景が目に浮かぶようだ。あのときは君との二重奏だったから俺がアレンジしたが、一人でも引ける元の楽譜も欲しいと、君が言ったのはその為だったんだな」
「本当は蓮くんとの二重奏が一番だけど、お互い離れているから、いつもは私一人だし。でもね、チーフが言ってたみたいに、心ではいつも二重奏だったんだよ。蓮くんのヴァイオリンが聞こえるし傍に気配を感じるの。だから嬉しいときも寂しいときも、ヴァイオリンを弾けば蓮くんに会えるって信じてた。チーフには叶わないなぁ、実はね、ガーデンで演奏しながらずっと願っていたんだよ」
「願い・・・とは?」
「蓮くんに会いたい、一緒にヴァイオリンが弾きたいって・・・。今は幸せを願いながら演奏しているけど、いつかは私も、蓮くんとワルツを踊りたいな・・・」
「香穂子・・・」
「えっと・・・あの、最後のは何でもないの! ガーデンで一緒に演奏できるのが、嬉しいなって事!」


ワルツを・・・踊る? 遠くを見つめながら、うっとりと幸せそうに緩める瞳には、どんな景色が映っているのだろうか。想い描く君の隣に、俺はいるのだろうか。最後に聞こえた呟きの意味を問いかけると、たちまち顔を真っ赤に染めてしまい、見えない湯気を昇らせた。隠し事が苦手な君は、何でもないのと慌てるほどに心の声が伝わってしまうのだと、気付いているだろうか。そんなに勢い良く首と手を振ると、ちぎれてしまいそうだから、どうか落ち着いて欲しい。


パーティーの最後にワルツを踊るのは、新郎新婦。ワルツを共に奏でるだけではなく、パーティーの最後に俺とワルツを踊るのが君の願い・・・それはつまり。花びらを舞い踊らせていた春風も、やがて花びらへと変わる。香穂子が描いていたのは、白のドレスと黒のタキシードの花びらになった俺たちなのだろう。パズルのピースが心へ埋まれば、見えてきた答えの形が俺の顔にも熱さを昇らせた。

ありがとうの言葉と共に託されたブーケとブートニアに、小さな夢をひととき託した甘い夢が蘇る。君の鍵が俺の扉を開いた先に見えたのは、未来へと導く光を鍵に変え、大切に抱き続けていた香穂子の想い。心の在りかを示すように、音色の源である温もりが灯るのを感じた。言葉に言い尽くせないこの感動を、愛しさと人は言うのだろう。


右手に宿る想う力と、現実の力を持つ左手。そして弦と弓が互い良いテンションであってこそ、初めてヴァイオリンの音色を生み出すことが出来る。女性と男性表し、二つで一つのヴァイオリンと弓は君と俺の姿だ。ピンと張った最高のテンションであってこそ良い音が鳴るように、お互いに競い合って成長できる幸せ。強い願いと信じる気持、諦めずに努力を続ければ、きっと夢は叶うのだと・・・いつも君が教えてくれた。


頬を桃色に染めたまま恥ずかしそうに俯き、組んだ手をもじもじと弄る香穂子へ緩めた眼差しを注ぎながら、そっと手を握り締めた。優しく名前を呼びかけると上目遣いに様子を伺うが、俺も嬉しい・・・そう心の底から想う気持のままに微笑めば、頬笑み返しの花が綻んだ。ガーデンの庭に咲き誇る、どの花よりも可憐な俺だけの花が。


「学長先生と散歩をしていた犬のワルツが、俺のヴァイオリンから香穂子の音色を感じたように、君の中にも俺がいたんだな。これまでも今も・・・願わくばずっと未来までも、そうありたいと思う。一人ではない、というのは力強いな。心だけではなく、本物のヴァイオリンで一緒に歌いたかったのは俺も同じだ」
「蓮くんと過ごせる今がすごく幸せだから、きっと素敵な音色が奏でられると思うの。幸せを贈るのなら私たちも幸せじゃなくちゃいけないよね。前に蓮くんが言った言葉は、今でも私の胸にしっかり刻まれているんだよ。宝物なの」
「ヴァイオリンに乗せて聴衆へ届けた思いは、彼らの想いを乗せて再び奏者に返ってくる。未来の新郎新婦である恋人たちが、新たな旅立ちを迎える新郎新婦の為に祝福の音色を奏でる・・・。あのときヴィルヘルムが、来ていたゲストへ宣伝した言葉は照れ臭かったな。だが幸せが幸せを呼ぶ力があるのなら、想いの連鎖を信じたい・・・そう思う」


一度は諦めかけていたが、今日こうして出会うことを、真っ直ぐな瞳の君は予感していたのだろうか。これは偶然ではなく、音楽の縁で結ばれた俺たちの必然なのか。離れていても、想う力が互いを引き寄せ合うのかも知れないな。


窓から吹き込む秋風が花の香りを運ぶと、方に頭を寄りかからせていた香穂子が、抱き寄せる腕の中からするりと抜け出した。悪戯な花びらの君は、風に舞いうようにソファーから立ち上がり、くるりと回って青いドレスの花を咲かせる。耳に馴染むメロディーを楽しげに口ずさみながら、ヴァイオリンを弾く真似をして、早くヴァイオリンが弾きたい
浮き立つ気持を七色の光に変えていた俺も早くヴァイオリンが弾きたい・・・君と音色を重ね、一つに溶け合いたい。


ソファーから立ち上がり、甘く見つめてねだる瞳に微笑みかけると、花びらの君がこれ以上風に攫われないように、窓辺に向かった。窓を閉る前にもう一度外を見渡せば、ハート型の芝生をしたガーデンでは、模擬パーティーの準備が行われているのが見える。先ほど香穂子が賛美歌に合わせてヴァイオリンを弾いていた、白いテントのパヴィヨンも、挙式からデザートブッフェのテーブルへ装いを変えていた。この庭がいつも香穂子が奏でている場所・・・もうすぐ君と奏でる青空のステージなんだな。


実りの庭に咲き誇る、力強く優しい花と、果実たちの祝福が聞こえてくる。
芽を出し土を破るのは種の意志であり力だが、花は決して一人で咲かすことは出来ない。君が俺に愛しい気持をくれたように、俺の花や君という花を咲かす、光や水は俺と香穂子の周りにいる、二つの国の温かな人たちだ。


人の想いは良くも悪くも伝わり、いずれ自分に返ってくる。素直な心を映すさりげない仕草や温かな言葉、奏でる音色に乗せて、俺の想いは香穂子へ真っ直ぐ届き、そして君の想いを俺が受け止める。見守ってくれる人たちへの感謝と、この先を共に歩み、夢を掴む誓いを込めて奏でよう。

君と共に奏でた後は、アンコールをもう一度、今度は俺のステージで一緒に奏でよう。そう告げるのはまだもう少し先・・・演奏が全て終わってからにしようか。静かに窓を閉じると、緩やかに弧を描く弓のような白いレースのカーテンが舞い降りて、ゆっくり曲の余韻を響かせた。


窓を閉めてカーテンを整えると、背後から呼ぶ声に振り返った。少し離れたところにあるソファーから窓辺まで、小走りにやってくる君は本当に子犬のようだな。嬉しさが押さえきれないのか、このリビングルームへやってきたときから、ずっと落ち着無く走り回っている気がする。だがその元気さが君なんだと、目の前で振り仰ぐ愛しさと嬉しさに、俺まで身体が軽くなってしまいそうだ。


「蓮くん、私の楽屋からヴァイオリン取ってくるね。まだ時間あるから音あわせをしようよ。良い本番にするには練習しなくちゃ、ね? あとね、帰国するときに学長先生から課題の曲をもらったの。練習しているんだけど上手く弾けないところがあって・・・蓮くんに聞いて欲しいんだけど良いかな?」
「あぁ構わない、課題のことは学長先生からも少し聞いていたんだ。練習の成果を聞いてきて欲しいと、密かに頼まれていた。香穂子のヴァイオリンも聞きたいが、まずは二人で演奏する曲を決めて合わせるのが先だな。どんなステージにも負けない、最高の演奏をしよう」
「このゲストハウスは音楽家がたくさんいるから、ピアノも付いている防音の練習室があるの。リビングで弾いても良いけど、みんなに聞こえたら楽しみが減っちゃうし、せっかくだから練習室に行こうよ」
「合間に練習も出来る、良い環境に恵まれたな」


演奏の空き時間には練習室を利用しているのだと、以前電話で近況を聞いたことがあった。音楽でお金をもらう事は、自分が楽しく演奏するだけじゃなくて、もっといろいろ深く考えることが必要だと学んだこと・・・。毎日が楽しくて自分にとっては学びの場所だと、嬉しそうに語っていたな。

これから弾く二重奏の曲、学長先生から出された課題の曲などの他に、近くレストランで行うサロンコンサートの話まで、身振り手振りを交えながら話してくれる。ふと我に返り、自分だけが話している事に気付いて謝るけれど、俺は楽しいから気にしないでくれ・・・もっと君の話を聞かせて欲しい。


「そうだ、香穂子。ガーデンで演奏するのが良いが、俺は私服のままになってしまう。ゲストにも失礼だし、こちらの雰囲気を損ねてしまっては、誘ってくれた香穂子の上司に申し訳がない。何か借りることは出来るだろうか」
「う〜ん・・・あっ! じゃぁチーフに相談してみるね。衣装室に行けば新郎さんが着るタキシードやフロックコートも揃っているし、きっと貸してもらえると思うの。私が青いドレスだから、蓮くんも尾所路でコーディネイト出来たらいいよね」


ポンと手を叩き瞳を輝かせると、リビングの隅へ駆け寄り、ダークオークのチェストに置かれた白い電話を手に取った。指先が手慣れた番号を押すと、俺の代わりに用件を伝え、受話器の向こうにいる上司に相談してくれている。勢いで引き受けたものの、楽器以外は何も用意が無かったことに気付くとは・・・今は彼女好意に甘えさせてもらおう。


電話が終わるのを待っていると、ポケットにしまってある携帯電話が着信の振動を知らせてくる。取り出してディスプレイを開けば、が無事に香穂子に会えたことを喜ぶ、先に街を散策していたヴィルヘルムからのメールだった。どうやら香穂子からもらった名刺を頼りに、このブライダルハウスに向かっているところらしい。

話の流れで香穂子と演奏することになったことを手短に返すと、急いで辿り着くから俺が来るまで待っていろと、メールの返事が速攻で返ってきた。俺たちだけでなく、君が見たいと願うものが見られるかも知れないな。無茶を言わないでくれと苦笑が込み上げるが、きっと今頃は慌てて駆けているに違いない。


ポケットに携帯をしまうのと同時に、肩越しに振り返った香穂子と視線が絡む。話しながら指でOKサインを作る笑顔が弾けるのは、衣装が借りられる許可が取れた証なのだろう。持った受話器の向こう側にいるチーフへ丁寧にお辞儀をすると、逸る気持ちを抑えながらそっと電話を置き、喜び弾ける声が俺を呼ぶ。青いドレスの裾を摘みながら、真っ直ぐ小走りに駆け寄る君は子犬のようだな。駆け寄る勢いのまま、胸の中へ飛び込んでしまいそうだ。

良かったねと自分の事のように喜ぶ純粋さは、出会った頃から今も変わらない。
君に喜んでもらえると、心へ素直に感情が染み込み、嬉しさが二倍に膨らむから不思議だな。


「チーフにお願いしたら、このブライダルハウスにある衣装を貸してくれるって言ってたの。良かったね! 何でも私と蓮くんにぴったりな衣装があるから、すぐ衣装室に来て欲しいんだって。私もって事は、蓮くんが着替えるから青いドレスじゃだめなのかな。でも衣装室は可愛いドレスがいっぱいあるから、ちょっと楽しみなの」
「いろいろとすまないな、ありがとう香穂子。待たせては悪いから、練習の前に、先に衣装室へ行こうか」
「でも・・・チーフが電話越しにウキウキしていたのが凄く気になるの。あれば絶対何か悪戯を閃いたり、良い案が企んだ時の嬉しい声と同じだったんだよ。もしかして、衣装室に何かあるのかな・・・」
「考え過ぎじゃないのか? 行動や考え方もしっかりしていて、思いやりのある人だと俺は思うが」
「蓮くんはチーフの本当の怖さを知らないんだよ。プランに自信があるから思いついたら即実行、しかも強引だし。何よりも無邪気なの、無邪気って怖いんだよ〜この世で一番無敵なんだから!」
「無邪気・・・?」


ここだけの内緒話だと額を寄せて俺を見つめる香穂子が、神妙に頷き困った眉を寄せている。人差し指を顎に当てて考えを巡らせながら、不思議そうに首を捻っていた。悪い人には見えないが、怖いとは一体どういう事なのだろう。

無邪気というと星奏学院にいる音楽の妖精たちを思い出すが、彼らの悪戯にも頭を悩ましたな。だが憎めない、愛すべき存在・・・。無邪気というのなら香穂子もそうとう無邪気だと思うが。驚きの連続なのは君だって同じなのを、気付いていないなんて君らしいな。つい笑みが零れてしまうから、香穂子は俺の顔を見て更に首を捻るばかりだ。


とにかく何が来ても、動じない心を持って望まなくてはいけないらしい。持ち前の前向きさで気分を持ち直した香穂子も俺に駆け寄り、考えても仕方がないよねと、懐から爽やかな笑みを浮かべて見上げてくる。ソワソワと肩を揺らし、早く行こうとせがむ香穂子の手を包むと、リビングルームの重厚なドアを開けた。

そう・・・まずは一歩を踏み出さなくては何も始まらないのだから。




深い木目が艶めく表の廊下を進んだ奥にある、関係者専用裏のドアをくぐり、階段を下りて一階へ。表はブライダルフェアにやってきたゲストで賑わっているから、裏から入ってくるようにとの指示らしい。手慣れた様子で複雑な通路を進む香穂子の後へついて行くと、やがて現れたのは大きなガラス扉のある広い衣装室。待っていたわと出迎える黒いスーツの女性は、先ほど会った香穂子のチーフ。そして既に話を聞いているらしい衣装室のスタッフが、温かく俺たちを迎えてくれた。


だが・・・まさか本当に香穂子の予感通りになるとは、このときは欠片ほども予想をしていなかったんだ。これからやってくるヴィルヘルムの企みかと思ってしまうほど、彼が一番喜んでいたことも。相手は二重三重にサプライズを仕掛けるプロだと、改めて気付くのはもう少し後のことだった。