じしゅう
 時宗(時衆)の文化


   しょうみょう
 時宗の声明(六時礼讃・ろくじらいさん)

 時宗は昔から昼夜六時に六時礼讃を読誦しました。これが「時」宗たるゆえんです。六時礼讃は独特の音楽的な声明(しょうみょう)が中心です。高・中・低の音階や複雑な節まわし、僧尼の男女混声合唱、仏を讃え浄土を思慕する美しい章句と相まって、となえる本人だけでなく、聞く人の心を遙かな極楽浄土へと誘います。


    いっぺんひじりえ
 国宝『一遍聖絵』(一遍上人絵伝)清浄光寺蔵

 一遍上人の生涯が描かれた絵巻物で、一遍上人の没後10年にあたる1299年に完成しました。全12巻から成り、絹地に極彩色の絵が描かれ、詞書の部分にも五彩を施した豪華美麗な絵巻物で、第一級の逸品であるとして国宝に指定されています。このごろは現代語に訳した書籍も出版されています。


 おどりねんぶつ
 踊り念仏

 阿弥陀仏の大慈悲によって、南無阿弥陀仏をとなえれば必ず極楽浄土に生まれることが決まっている、という一遍上人の教えはありとあらゆる人々に安心を授け、踊り念仏に発展していきました。仏の大慈悲を歓喜、踊躍(ゆやく)する念仏です。元祖は平安時代の空也上人で、一遍上人は「空也上人は我が先達なり。」と言われています。『一遍聖絵』(一遍上人絵伝)には、鎌倉時代の熱狂的な踊りが随所に描かれています。時衆の踊り念仏は室町時代以降、各地の念仏踊りや盆踊りなどに影響を与えました。今は踊りの形は変わりましたが、踊躍念仏(ゆやくねんぶつ)、薄念仏(すすきねんぶつ)が継承されています。

   一遍上人の和歌より
 跳ねば跳ね 踊らばをどれ 春駒の のりの道をば 知る人ぞ知る
 とも跳ねよ かくても踊れ こころ駒 弥陀のみのりと 聞くぞうれしき
 ◆一遍上人絵伝巻7(空也上人遺跡、市屋の踊り念仏)東京国立博物館蔵


 時宗の法名(戒名)について

 男性の方には阿弥陀仏の「阿」がつけられます。女性の方には「弌」(いち)がつけられます。もともと時宗の法名は○阿弥陀仏という法名でした。「南無阿弥陀仏」を称えることにより、極楽浄土の仏になるという教えです。歴代の遊行上人は他阿弥陀仏(他阿)を受け継がれております。


 「阿弥」芸能

 時宗の法名である「阿弥陀仏号」は、南北朝時代に徐々に増加し、室町時代に最盛期になりました。次第に○阿弥、○阿と略称されるようになり、連歌師の善阿、周阿、能阿や能の大成者・観阿弥、世阿弥、足利義政に仕えた庭師の善阿弥など、時宗の僧侶・信徒に始まり次第に文化人や芸能者の間で流行しました。
 世阿弥の作と言われる謡曲『誓願寺』や、説教節『小栗判官と照手姫』など、一遍上人や遊行上人が登場する芸能作品も多く、当時、時衆の影響が大きかったことが分かります。



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