読売新聞の記事


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読売新聞(夕刊) 平成18年10月28日付け KODOMO新聞 SCIENCE

 大見出し:血液型と性格 無関係?

 記事の一番最初にはこうあります。

えーっ。理科子先生が恋人に振られた? 「B型は自分勝手で」マイペースだから、付き合えないって言われたの」。ショックで落ち込む理科子先生。「血液型と性格って、本当に関係があるのかしら…」。見かねたイカ丸は、理科子先生のため、ひと肌脱ぐことにした。

 その後、血液型について調べています。そして最後には…

イカ丸の報告を聞き、理科子先生は少し元気になった。「これからは、血液型なんか気にしない男性と付き合うわ」

 といった感じで終わります。一見、否定的な記事のように思えます。

 しかし、この記事は、一言で言えば「日和った」記事です! 一見、血液型と性格の関係を否定しているように思えますが、よくよく読むと違うのです。

 まず、大見出しが「血液型と性格 無関係?」と「?」マークがあり、明確な否定にはなっていません。

 また、小見出しでは「科学的根拠なし」とありますが、よく読むとやはり明確には否定していないのです。大阪大学微生物研究所の谷口直之教授は「性格との関係を示す科学的な証拠は見つかっていません」と答えています。しかし、「科学的な証拠(=メカニズム)」がないからといって、関係が否定されるわけではありません。それは、否定論者である心理学者自身からも明確に否定されています。

 血液型が性格に影響を与えるメカニズムが明らかでないことを批判点として挙げる人もいる。説明原理の不在は科学理論として決して望ましいものではないが、現実に承認されている他の科学理論にも詳しいメカニズムが不明なものはある。メカニズムを解明しようとしない血液型学の提唱者を批判することはできても、理論自体をこの点だけから批判するのはフェアではない。

 ところで、谷口さんは、有名な肯定論者の成松久さんとは知り合いです。参考のために、成松さんの主張を再掲しておきます。

ゲノム情報を超えた生命のふしぎ 糖鎖 第16回「大学と科学」公開シンポジウム講演収録集 H15.1 3,000円+税 クバプロ

 この本は画期的です。ABO式血液型と同じく糖鎖で決まるルイス式血液型で性格が変わることが実証されたからです。やった〜!
 貴重な実験をしたのは成松久教授(産業技術総合研究所糖鎖工学研究センター)です。この本の55から56ページから引用します。

 私は、血液型と性格は関係あるという説の肯定論者です。ただし、ABO式だけが性格をきめているのではなく、ありとあらゆる神経で発現している糖鎖のポリモルフィズム(変異多型)が性格と関係あるに違いないと思っています。一例を示すと、ルイスXとは、先ほどのルイスA、ルイスBとよく似た糖鎖構造を神経で発現しているものです。これを合成するフコース転移酵素をクローニングしてノックアウトマウスを作出すると、抗原構造が消失します。そのマウスは非常におじけついていて、おっちょこちょいで、情緒が不安定です。ルイスXという糖鎖がネズミの性格を決めていたことを証明することができました。

 残念ながら、この本には糖鎖によりなぜ性格が変わるのかは書いてありません。今後の研究に期待したいところです。

 実は、この本は、「平成13年度文部科学省科学研究費補助金」を使っている事業の研究成果の発表であり、その代表は谷口さんです。代表を務めているのですから、この記述を谷口さんが読んでいないはずがありません! また、成松さんの主張に反対なら、わざわざ研究と直接関係がない「血液型と性格の関係」を報告書に掲載するはずもありません。

 これからは私の推測ですが、読売新聞の取材に対しては、「性格との関係を示す科学的な証拠は見つかっていません」と答えたのは事実でしょう。しかし、「関係がない」とは言わなかったと想像できます。なぜなら、「関係がない」と言ったなら、たぶんそのまま記事にするはずですから…。もちろん真相はわかりませんが、そう考えると納得ができます。

 更に不思議なのは、次の記述です。

イカ丸は最後に、「心理学の専門家であるお茶の水女子大学の坂元章教授に聞いた。
「1978年から88年まで、毎年約3000人に血液型と性格を尋ねた調査があります。結果を詳しく分析しましたが、血液型から性格を言い当てるほどの関係は見えません」

 一読すると、血液型と性格には統計的な差はないように思えます。しかし、これは彼の主張に反するので、まさかこんなことを言うはずがありません。よくよく読んでみると、「血液型から性格を言い当てるほどの関係は見えません」ですから、「統計的な差はない」と断定しているわけではなさそうです。そう考えると、なんとか辻褄が合います。

 原題:山崎賢治・坂元章 血液型ステレオタイプによる自己成就現象−全国調査の時系列分析− 日本社会心理学会第32回大会発表論文集 288〜291ページ H3

 念のために、坂元さん自身による結論を書いておきます(太字は私)。

考察

@大学生は明確な血液型ステレオタイプを有する。
A血液型と性格の自己報告との間の相関は、弱いが認められた。さらに、一般の人々の性格の自己報告は、大学生の血液型ステレオタイプに合致していることがわかった。
B年々、人々が「B型的」(物事にこだわらず、気がかわりやすい、等)になっていることが示された。
CBA型は相対的により「A型的」に、B型は相対的により「B型的」にという変化を示した。それは血液型ステレオタイプによる自己成就現象を示している。これは、「血液型性格学」のマスコミ活動に原因を求められるのかもしれない。
D従来の研究は(1)サンプル数が少なかった、(2)単独の特徴毎に分析していた、(3)A型とB型だけではなく、O型とAB型をも含めていた、などにより血液型と性格との関係を見いだせなかったのかもしれない。
Eただし、血液型と性格の自己報告との間の関連は小さいものであり、その差を統計的に検出するには数千人単位のデータを要するのであり、個々人単位に「▽型の人は△△だ」といった主張はできないと思われる。
F本研究では性格の自己報告を分析対象としたので、いくつかの未解決の問題が残った。それは、(1)血液型と性格との間に関係があるのか、それとも、認知の歪みなのか、(2)自己成就現象に関しても、性格が実際に変化したのか、認知が変わっただけなのか、というものである。

 要するに、「弱いが(能見さんの指摘するとおりの)相関が認められた」と明確に結論づけているわけです。

 なお、この記事手はBPOの声明についても紹介されていますが、『「血液型と性格の関係は証明されていない」として』とあるだけで、「血液型と性格の関係は証明されていない」と断定はしていません。

 確かに、この記事はウソは書いていません。しかし、読者に与える印象はどうでしょうか? さっと一読した読者は、限りなく誤解に近い印象を抱くことでしょう。結局、否定的な記事を企画していたが、残念ながらあきらめてこんな内容になった、というのが私の推測です。本当はどうなのでしょうか?

 しかし、世界一の発行部数の新聞社がこの調子では、ちょっとガッカリさせられます。私の推測が当たっていないことを祈るだけです。(*_*)


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最終更新日:平成18年11月12日