|
|||||||||
ここでは骨盤の歪みが全身に及ぼす影響について考えます。 骨盤の関節(仙腸関節)には軸足側と利き足側があり、 それぞれが機能的な役割を有する可能性が高い、ということを 前のページ(「何故歪むのか」)で述べました。 それを簡単にまとめると、仙腸関節には利き足と軸足に応じた機能的な 動きの偏りが存在し、骨盤にはそれに伴う必然的な歪みが存在する、 という事になります。 上体荷重を受ける仙骨の上面は軸足側に荷重が移行しやすいように 下方へ下がる傾向があり、相対的に利き足側が上へ上がります。 つまり仙骨上面が軸足側に傾きやすい傾向がある、という事になります。 当然それを元に戻そうとする働きが存在するのですが、 様々な動作において、この動きの偏りは有効に機能しています。 またこのような機能が無ければ、身体運動を円滑に行う事が出来ないように 私には思えます。 そしてこの仙腸関節に見られる軸足側の特性が、そこに重なる脊柱に 大きな影響を及ぼす、と考えます。
上体の荷重が片側へ移行する時には、その上に重なり合う 24個の脊椎の動きの連動が必要になります。 それと同時に、荷重を受ける下肢にも、それを支持する為の 対応が求められます。 これらが全て無意識のうちになされているからこそ、ヒトは重力に 逆らいながら活動する事が出来るのです。 さて、骨盤矯正によって骨盤とは遠くはなれた首や肩、足首や膝など、 身体の様々な部位の症状が改善する事がしばしばあります。 正直なところ、これら一見骨盤とは無関係に見える遠隔部位の症状が 骨盤矯正で改善してしまう理由については、私には分かりません。 (これに対する論理的な説明は困難でも、実際に改善するという症状の変化 を用いて、これらの関連を指摘する事なら出来るのですが…) そこでここでは、骨盤の歪みと全身的な症状との関連が見出せそうな、 脊柱の荷重伝達に連動する動き、そしてそれが症状を誘発する可能性に付いて、 我田引水的に解説してみようと思います(単なる屁理屈かもしれませんが)。 仙腸関節には軸足側があり、上体の荷重は軸足側へ移行しやすい傾向があります。 仙腸関節の中心には仙骨が有り、その上に腰椎が5つ重なります。 脊柱を伝わる1つの上体荷重は仙骨を境に2つに分けられ、 左右の下肢へと伝達されています。 つまり1つの力が2つに分かれる分岐点が仙骨、という事になります。 そして両足立ちの時、この力は二分されて両下肢へと伝達され、 片脚立ちでは全ての荷重が仙骨を境に片側の下肢へと向かいます。 この片脚への全荷重の移行は、基本的には仙骨の片側が下に下がる事でなされます。 この時、上体荷重という作用と床反力という反作用が仙腸関節でぶつかり合い 均衡を保つ事で、片脚立ちで身体は安定します。 この片脚立ちの時に片側へ荷重の全てが移行する為には、 脊柱の上から下へと移行してくる荷重が、 最終的には片側の下肢へと向かわなければなりません。 その分岐点となる仙骨で自動的な荷重の振り分けが起きる為には、 その仙骨と連結する腰椎の最下椎(第5腰椎)が、重要な鍵となります。 この第5腰椎と仙骨との連結部は「腰仙関節」と呼ばれています。 前のページ「何故歪むのか」でも述べたと通り、ここにはすばらしい 荷重伝達に関るメカニズムが存在します。 この腰仙関節で左右の下肢へと上体荷重が振り分けられるその機序に関しては まだ推測の域を出てはいないのですが、非常に合理的な機能の存在を感じさせます。 この部分(腰仙関節)では上体の荷重(作用)と床からの反力(反作用)が相対し、 拮抗する事で身体の安定性を保持しています。 第5腰椎が仙骨へと伝える上体荷重を1とすると、これが左右下肢へと 均等に分配された時には左右の仙腸関節から第5腰椎へと上行する 反作用は、右脚0.5+左脚0.5=1となります。 この時第5腰椎の底面は上体の荷重を丁度2分した形で、 作用反作用の均衡が保たれます。 これが片脚立ちになると全荷重が片脚へと移行するので、 片脚へ伝達される作用が1、床からの反作用が1となり、 腰仙関節では片側へ伝達される作用と片側の仙腸関節から 上行する下肢からの反作用とが1:1 で釣り合います。 つまりこの時第5腰椎の底面は全荷重を片側へ向け、 同時にその反作用の全てを受け止めます。 さらにこの際には上体荷重だけでは無く、持ち上げられている 下肢の重さもここに加わります。 (ここでは椎間板等により吸収される力は除外します) つまり上体の荷重が全て片脚へ向けて伝搬されるから、 この均衡は保たれるのです。 したがって第5腰椎の上に重なる第4腰椎も、このとき荷重されている側の 下肢へ向けて上体荷重を伝達する為の合目的的な変位を起こします。 またその間にも荷重側へ向けた全ての荷重伝達と床反力による 力の均衡状態が成立しています。 もしこの第4腰椎と第5腰椎のユニットによる協調的な片側への荷重伝達と、 それに拮抗する床反力の伝達が相対しなければ、片脚で立つことは出来ません。 この関係性は第4腰椎より上位に連なる個々の椎骨間にも同様に当てはまります。 したがって、全ての椎骨間での協調的で合目的的な荷重の伝達が見られるから 片脚で身体を支える事が出来るのだ、という事が出来るでしょう。 この中の一つが荷重側とは反対の下肢へ向けて荷重を伝達するような動きを見せたら、 身体のバランスは乱れ、安定した片脚立ちは出来ません。 即ち、右脚で立つ時には右脚へ向けて、左脚で立つ時には左脚へ向けて 荷重は上から下へと移行していかなければならないのです。 このような作用がさらに上へと重なり合う脊柱全体を通して、荷重伝達に 深く関与しているものと私は考えます。 歩行動作に見られるような左右交互の荷重移動の際には、これらは無意識かつ 円滑に行われています。 片脚立ちになる際には、常に作用と反作用は1:1の関係が成り立ちます。 つまり第5腰椎は片側の下肢へ全荷重を向け、その分だけ下肢からの反作用を受けます。 しかし立位や座位ではこれらの割合は必ずしも左右半々ではありません。 特に立位では左右の下肢に交互に荷重を振り分けながら、 ランダムに荷重支持は行われているようです。 日常的にはまず左右均等に荷重が振り分けられた状態で、 じっと立ち続ける事はないでしょう。 もしこの左右下肢への荷重伝達あるいは反作用の比率が、 0.5:0.5または1:0では無いとしたら、つまり0.4:0.6や0.7:0.3などであるなら、 そこに連なる個々の脊椎間も同様の比率で荷重配分がなされることになります。 またその荷重を受ける下肢にも、大きな影響が及ぶ事になります。 この配分の振り分け方が決められるのが仙腸関節なのです。 ですから、ここに日常的な歪みが形成される事で 脊柱には常に偏った負荷が加わりつづけ、一定の歪みが形成される原因となります。 一定の歪みは下肢のみならず体幹や頚部あるいは上肢の動きの左右差や 動きの制限を作り出す原因となります。 これらが骨盤の歪みに起因する、全身の問題に繋がるものと私は考えています。 これら身体の歪みをトータルで改善するためには骨盤の歪みから改善してゆく必要がある、 という事が理解できるのでは無いかと思うのですが、如何でしょうか? |
|||||||||