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骨盤の歪み・脚長差





「骨盤が歪んでいますね」 「足の長さが違いますよ」


これらはカイロプラクター(または整体師)の常套句です。
確かに間違いではありません。
ほとんどの人は骨盤が歪んでいて、下肢の長さは左右不均等です。


しかし、そもそも足の長さは揃っていないといけないのでしょうか?


そして、(患者さんでは無く)我々が自覚しなければいけないのは、
「骨盤の関節生理も、骨盤と(見かけ上の)脚長差との因果関係も
どちらも科学的にはまだ解明されてはいない」
ということでしょう(自戒を込めて)。
もう少し分かりやすく言えば、
「そもそも、骨盤がどのような動きをするものなのかの答えは出ていないし、
下肢の長さを不均等にさせる原因も、現状では明らかにされてはいない」
ということです。
つまり現時点では、「足の長さが違う」=「骨盤の歪み」=「骨盤矯正が必要」
という、三段論法は成り立たない
のです。
また逆に、「足の長さが均等だから、骨盤に問題は無い」とも言えません。


このような書き方をすると、関係者から苦言を呈されるような気もしますが、
事実なのです。




おそらく骨盤の歪みと脚長差との間には、深い関りがあるものと思われます。
そして、多くのカイロプラクティック・テクニックは、下肢長の左右差を
指標として骨盤の歪みを分析しています。
その脚長差を基準として治療を組み立て、効果が上がっている事もまた
事実なのです。
個人的には、これが不思議で仕方ありません。


私は、脚長差から骨盤の歪みを判断する事はありません。
何故なら、これまでの分析法が正しいとは思えないからです。
各テクニックの教本には、脚長差が生じるメカニズムを、骨盤の変位と
関連付けて考察されたものが記載されています。
ですが、どれも推測の域を出ませんし、残念ながら、とても説得力が
あるようには思えません。
しかし確かに、その手順に従い矯正を施すと、下肢の長さは揃います。
何故なのでしょう?実に不思議です。


現在一般的には、骨盤(腸骨)が後方へ変位している側の下肢が短く見える、
と考えられています。
もちろん下肢長を変化させる要因は多様で、「全て骨盤が原因」などと
考えているカイロプラクター(整体師)は論外ですが、多くのテクニックで
この理論が採用されています。
しかし私は、これには賛成出来ません。
実は密かに「逆ではないか」とも思っています。
ここで書いてしまったのでもう隠す事は出来ませんが、
つまり、骨盤が原因で脚長差に影響が出るとすれば、
骨盤(腸骨)が後方へ変位している側の下肢は長くなるのではないか、
と考えているのです。


これにはきちんとした(?)理由があるのですが、もう少し検討する必要が
ありそうなので、ここではその詳細は控えます。
しかし困ってしまうのは、それら脚長差を基準に骨盤分析をするテクニックを、
私自身が使うのを躊躇してしまう事です。


また各方面からお叱りを受けそうな発言をしますが、
この科学的とは言い難い理論(失礼)に基づき実践されるテクニックが、
驚くような効果を上げる事があるのです。




私は、「左右の下肢の長さを比較する事は意外と難しい」と考えています。
また同時に、再現性や客観性の面から言えば、左右の下肢長の比較が正確に
行えるのであれば、これは身体の異常を捉える上での非常に有効な指標となる、
とも思っています。


現に、下肢長を基準として体系付けられたテクニックによって、
下肢の長さは均等化し効果が現れているということも、歴然とした事実です
(しかし、それでは上手くいかないケ−スも多いものと思われます)。
しかしその理論は、依然として曖昧なままです。


では何故カイロプラクターは、これらの大事な事柄をこれまで放置してきたのでしょう?
誰か足の短い側の腸骨が、後方へ変位している事を証明したのでしょうか?
これらは私にとって大きな謎なのです。


かといって、これまでカイロプラクターが積み重ねてきた実績を
否定する事も出来ません。
なので、私は下肢の長さを気にしないようにしています。
私は殆んど下肢の長さを気にしないので、それらがどの程度の割合で
良くなったり良くならなかったりするのか分かりませんが、
それを気にしなくても、症状が良くなっている方が多いことも事実なのです。


私がここで最も言いたい事は、骨盤の分析を足の長さの比較だけに頼るのではなく、
どのような条件下でも正確な分析ができるだけの研鑚を積むべきである、
という事なのです。
すべての人に、下肢長分析が可能というわけでは無いのですから。