虫たちの不思議な世界 |
2007/4/29 王の墓から黄金のブローチが出土した?
スキバジンガサハムシ Aspidomorpha transparipennis |
甲虫目/カブトムシ亜目/ハムシ上科/ハムシ科/カメノコハムシ亜科
分布:北海道、本州、九州 大きさ:6〜7mm
日出町(大分県速見群)に住む昌子義姉がスキバジンガサハムシを紙袋に
入れて持ってきてくれました。
丸くて扁平な形がユニークだが、画像でみるよりも、色が金ぴかなのです。
この形を陣笠に見立ててジンガサハムシ(陣笠葉虫)という名がついたようです。
幼虫の行動もさらにユニークらしい。幼虫は脱皮で皮を脱いでも、抜け殻をその
まま背中に背負っていて、蛹になっても背中に乗せたままであるらしい。
食草はヒルガオで、どこにでもふつうに見られる虫とのことですが、私には何と
も珍しく感動的な出会いでした。
2011/9/20 クロシジミの不思議〜クロシジミとアリの同居生活
クロシジミ 黒小灰蝶 Niphanda fusca |
クロシジミ/チョウ目・/シジミチョウ科
分布:本州・四国・九州/前翅長:17-23mm
本当に生き物の不思議な世界ですね
2011年9月20日付のブログ「陽鳥?!」に掲載した蝶について津郷勇先生(越前市)か
ら、クロシジミ♀であろうと、クロシジミの生態を説明された資料をEメールに添付し
ていただきました。
成虫は年に1回、6〜8月ごろに発生する。幼虫は若齢のうちはアブラムシなどの分泌物
を摂取するが、2齢後期になるとクロオオアリの巣内でアリに育てられ、翌年の6〜7月
頃に蛹となる。
「生き物の不思議な世界」(抜粋)
クロシジミは幼虫の時クロオオアリの巣で過ごし育ててもらいます。
クロシジミの卵はアブラムシのいる草で、近くにクロオオアリがいる場所に産み落とさ
れます。
草に産みつけられた卵から孵化した幼虫は、アブラムシの分泌物をなめたり、クロオオ
アリからエサをもらったりして地上で成長します。
3歳頃になるとクロオオアリによって巣に運ばれ、クロオオアリと同居生活をするよう
になります。巣ではクロオオアリに口移しでエサをもらいながら成長します。
クロオオアリがクロシジミの幼虫の世話をする理由として、アリの好む分泌物(蜜)を
体からだし、クロオオアリに与える事があります。また、アリの匂いを身にまとい、ア
リに自分の仲間だとだまして世話をさせていることが最近の研究でわかってきました。
冬の寒い時期も温かいアリの巣で過ごしたクロシジミの幼虫は、春になると巣の出口付
近でさなぎになります。さなぎになると蜜は出さなくなるのですけど、匂いは残ってい
るので攻撃されません。
羽化するとクロシジミの幼虫は今までアリをだましていた匂いをださなくなり、攻撃さ
れる心配があるので、アリから逃げるように一目散に地上に出てきます。
草の上にたどり着いたクロシジミの成虫はゆっくり羽をのばし飛びたっていきます。
クロシジミはアブラムシ、クロオオアリと共生する珍しい生態や生育環境の悪化のため
に年々減少して、絶滅危惧種に指定されています。
何となく撮った蝶が、絶滅危惧種に指定された蝶であり、しかもその生態が不可思議で
す。羽化するとアリから一目散に逃げ出す〜とは、ずるがしこさに呆れるが、滑稽でも
あります。クロシジミとの偶然の出会いであったことを知ることができたのは津郷先生
のおかげでした。いつの日にかクロシジミのオスにも出会いたいものです。
(2011/9/23)
2012/6/6 アゲハモドキの擬態の不思議
「珍しい蛾アゲハモドキを今日11時30分ごろに玄関先の外灯の下に張り付いていたの
を、妻が偶然見付けて大急ぎで写真を撮りました。」
このように申して、越前市にお住いの津郷勇先生からアゲハモドキの写真を添えてEメ
ールをいただきました。
アゲハモドキ 擬鳳蝶蛾/揚羽擬蛾 Epicopeia hainesii |
よく見れば裏面も体の形、模様もよくジャコウアゲハによく似ており、
完成された擬態と感心しきりです。 (2012/6/9 津郷先生 談)
蝶かと見紛う姿にその変装ぶりに感心しきりです。
アゲハモドキは蛾に多い夜行性であり、蝶のような昼行性ではないので天敵から身を
守るために擬態している意味があるのか・・・不思議だと言うほかはありません。
アゲハモドキは毒を持ち天敵の鳥から捕食を避けるジャコウアゲハ♂に擬態している
ようです。
ジャコウアゲハは麝香鳳蝶と書きます。ジャコウ(麝香)は別名ムスク、雄のジャコ
ウジカの臓器の一つ、麝香の分泌物を集めて乾かした生薬でいい香りを発するもので
す。雄の成虫がジャコウのような香りを発することからジャコウアゲハと名付けられ
たらしい。この蝶は幼生時代に毒性を持ったアリストロキア酸を含んでおるウマノス
ズクサを食べて育つ。この毒素はジャコウアゲハの幼生に蓄積され成虫になっても体
内に残り続ける。ジャコウアゲハの幼虫、成虫を捕食した鳥などは中毒を起こす危険
を学習して捕食を避けると考えられる。
さらに、黒と灰色の羽に点々と並ぶ赤い紋は危険であると警告していると思われるの
で、捕食者にコイツは食べられないと認識させているのです。
アゲハモドキは毒素をもっていないが、ジャコウアゲハに擬態することによって危険
なもであるがごときに捕食者に思わせるのです。なんとも賢い選択であろうか。
このように、無害なものが危険なものに擬態することをベーツ擬態というそうです。
アゲハモドキの擬態の秘密を知った私はこんなことを考えた。
もし、アゲハモドキを食べて何でもなかった捕食者が、これを学習してジャコウアゲ
ハを食べて中毒をこすことはないのだろうか?そうなると、ジャコウアゲハにとって
はアゲハモドキの擬態は迷惑千万なことでしょう。
ジャコウアゲハの幼虫はグロテスク?ですが、アゲハモドキの幼虫は
なんとお洒落なのでしょう!
それにしても、捕食者(鳥)は危険であることをどうして知るのであろうか。
@毎回経験することから学習する。
A鳥語によって伝達(教える)手段がある。
B遺伝的に警告色を持った生物に対して避けるようなプログラムを持って生まれる。
どれもが正しい答であるように思えるが、謎は深まるばかりである。
ほんとうは、醜い姿だと思っている蛾は美しいジャコウアゲハの容姿に少しでも近
づこうと想いつづけているのではないか。それにしても、アゲハモドキは蛾では活
動時間は主に夜間であるのに、どこでジャコウアゲハについて知識を得たのか、
いろいろ不思議でならない。
ジャコウアゲハの戦略
アゲハモドキの写真をいただいた翌々日、津郷先生がジャコウアゲハとウマノスズ
クサの資料を届けてくださった。
アゲハモドキのベーツ擬態を語るには、ジャコウアゲハの戦略を語らなければアゲ
ハモドキの狡賢い、いや、健気な生き方を知ることはできないことを知った。
ウマノスズクサにとまり羽化した直後のジャコウアゲハ
画像: Namihei Science Updata
ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサを食草としている。そのうえ、ジャコウア
ゲハは一生にわたってウマノスグサとは切っても切れぬ深い関係があるらしい。
ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズグサの葉や茎を食べて育つ。4回の脱皮を経て
幼虫は蛹になり羽化して成虫になる。交尾した♀は必ずウマノスズクサの葉の裏側
に産卵するという。
前述のとおり、ウマノスズクサにはアリストロキア酸が含まれている。しかもこの
アリストロキア酸は数ある植物の中でウマノスズクサだけに含まれる。アリストロ
キア酸には強い毒性があるが、昔は生薬として重宝されたようであるが腎不全をも
たらすので注意が喚起されている。
ウマノスズクサはこの毒を作ることによって昆虫による食害から身を守っている
と言えるが、ジャコウアゲハはその裏をかいて毒に対する耐性を獲得し逆に利用し
ているという。つまり、ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサをせっせと食べて
アリストロキア酸を体内に蓄積して小鳥などの天敵から身を守っているのだ。さら
に♀はウマノスズクサに産卵する際、産んだ卵にアリストロキア酸を含むクリーム
を塗布して外敵から守るという念の入れようである。孵化した幼虫はまずこの卵の
殻を食べて効率的に毒で武装する。
(Namihei Science Updataの記述による)
ウマノスズクサ 画像: Namihei Science Updata
ウマノスグサ科ウマノスグサ属の多年生つる植物
⇒葉が馬の顔の形に似ていて、花の球形の部分が馬の首に掛けるような鈴に似て
いる
ことから。花は雌性先熟で糞や腐肉に似た匂いで小型のハエをおびき寄せ花筒の
奥の球形の部屋へと誘導する。部屋には柱頭があり、ハエは後戻りできずに、そ
こに閉じ込められる。その後雄蕊が花粉を出すと、ハエは部屋から脱出できるよ
うになる。
ウマノスズクサは食べられるかわりにジャコウアゲハからもらうおみあげは?
ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサの茎まで食べてしまうが、地上部の5セ
ンチほどを残す。
しばらくするとどの食い残しの茎から芽が出てきてぐんぐん成長する。食いちぎ
られた茎も、ただ切っただけよりも幼虫に切られたほうが発根活着が良くなるよ
うにある。
(Atelier Mochamura なんでも研究室)
写真を比べてみるとアゲハモドキという蛾はその姿がジャコウアゲハという蝶に
そっくりである。小鳥もだまされて敬遠するはずであることがよくわかる。それ
にしても、アゲハモドキは意識的に狡賢くジャコウアゲハを真似ているとは断定
できないと思う。
私は、アゲハモドキは美しいジャコウアゲハの容姿に少しでも近づこうと想いつ
づけているのではないかと感じるのである。
自然界における虫たちの不思議な世界に好奇心を向けててくださる津郷先生に感
謝します。
2012年6月18日 13:01 関崎岬での珍しい出合
関崎岬の紫陽花が見ごろだとのKiki さんからお誘いをうけて訪ねた折でした。
駐車場の上空をぎこちなく飛んで来て地上に落ちるように降りてきました。
クロアゲハかと思いましたが、それにしては小振りだなと話しながら撮影しまし
た。帰宅して、津郷先生に画像を見ていただくとなんとアゲハモドキであるとの
ことで、「昼間、何かに刺激されて驚いて飛ぶことがある。珍しい出合でした」
とご回答くださいました。偶然の出合に大変興奮した一日でした。
2018/6/11 国宝<玉虫厨子>に使われた翅〜ヤマトタマムシ
国道197号線・大分市大平の海岸線に沿ってハンカイソウが群生している。
直径10pを超える黄色の花に惹きつけられたヤマトタマムシに出合った。
ヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima |
ハンカイソウに留まるヤマトタマムシ
ヤマトタマムシ:タマムシ科は日本国内にも多くの種類があるが、中でも標準和
名タマムシ(ヤマトタマムシ・学名Chrysochroa fulgidissima) として知られる種
は、美しい外見を持つことから古来より珍重されてきた。天敵である鳥は、この
虫が持つ金属光沢を怖がり寄り付かない。
上翅(鞘 翅)は構造色によって金属光沢を発しているため、死後も色褪せず、装身
具に加工されたり、法隆寺宝物「玉虫厨子」の装飾に使われたりしている。
日本にはタマムシを箪笥に入れておくと着物が増える」という俗信がある。
タマムシ(玉虫、吉丁虫)とは、コウチョウ目タマムシ上科に属する昆虫の総称、
または日本における代表的な種Chrysochroa fulgidissimaの和名である。
(出典:Wikipedia)
<出合ったヤマトタマムシは、手にすることもなく別れを惜しみました。>
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