角川『俳句』 2022年10号
<角川「俳句」2022年12月号>
合評鼎談 第12回『俳句』10月号を読む
●渕 野 陽 鳥(花鶏)「つくづく」
佐怒賀 新涼や蛤碁石の縞模様
蛤で作った碁石は高級なもの。貝殻を研いでいくうちにだんだんきれいな
網目模様になってくる。それに「新涼」を置いたのが読み応えのあるところ。
前山に日暮の及ぶ藁こづみ
実景をしっかり書き留めていて、下五の「藁こづみ」のあしらいがよい。
牛蒡引く地球の裏も誰か引く
農作業もこんなことを考えながらやっていると楽しいだろうな。
相子 天平の伽藍の跡のねこじやらし
〈ねこじやらし〉が素朴。一読、スッと風が抜けていくような奈良の感じ。
〈牛蒡引く〉の句、みずみずしい詩心で、楽しい一句です。
秋を訪ふにつころがしといふを手に
〈につころがしといふを手に〉に、「お口に合えばいいのですが」という
感じがちょっと見えて、そこが笑いにつながっています。
望月〈牛蒡引く〉の句、およそ〈牛蒡〉には不釣合いなスケールの大きさが
ユニーク。
鬼灯をかかげ閻王とはをかし
閻王様と鬼灯のかかわりが分らない。供えられているのか、たまたま鬼
灯が掲げられているのか、いずれにせよ、同系色ですね。色味の差異が面
白い。
(佐怒賀正美「秋」主宰・相子智恵「澤」同人・望月 周「百鳥」編集長)
角川『俳句』 2019年7月号
東京四季出版『俳句四季』2019年9月号