花の歳時記 |
春
ウメ(梅) Prunus mume
バラ科・サクラ属の落葉高木またはその果実のこと。
英名:Japanese apricot
原産:中国。日本には8世紀ごろ渡ってきていたとみられる。
「万葉集」には119首もの梅の歌を収め、このころは花といえば桜よりも
梅であった。
別名:好文木・春告草・木の花・初名草・香散見草(かざみぐさ)・匂草。
季語《春》 梅(うめ):好文木(かうぶんぼく)・花の兄・春告草(はるつげぐさ)
・野梅(やばい)・白梅・臥龍梅・豊後梅・枝垂梅・盆梅・老梅
→梅見・探梅(冬)
よき友が妻にはゐたり梅白し 渕野陽鳥
クサイチゴ(草苺) Rubus hirsutus
バラ科・イチゴ属の落葉小低木背丈が20〜60pと低く、草本のように見える
ため、このように呼ばれるが実際は木本である。
別名:ワセイチゴ(早稲苺)
季語《春》 苺の花:花苺・草苺の花・蛇苺の花 ⇒「苺」(夏の季語)
祖母山を遠見の峠花苺 渕野陽鳥
ハナズオウ(花蘇芳) Cercis chinensis
マメ科・ハナズオウ属。 中国原産の落葉低木。日本には江戸時代に伝わった。
開花:3〜4月ごろ葉に先立って開花する。英名:Chinese redbud
和名の紫荊は花の色が染料の蘇枋に似ていることからつけられたといわれる。
4月18日の誕生花。花言葉は「豊かな生涯」
季語《春》 紫 荊(はなずはう):すはうばな・花蘇枋(はなずはう)
真盛りは一日二日紫荊 草本美沙
オオイヌノフグリ Veronica persica
↑果実
ゴマノハグサ科・クワガタソウ属の越年草
ヨーロッパ原産。最初に定着が確認されたのは1887年の東京である。
果実の形が犬のフグリに似てい るところから名づけられたといわ れる。
別名:瑠璃唐草、天人唐草、星の瞳。
近縁種にイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、フラサバソウなどがある。日本
の同属には山地から高地に分布するクワガタソウの仲間がある。
季語《春》 犬ふぐり:いぬのふぐり
約束をとんと忘れて犬ふぐり 渕野陽鳥
「ふぐり」は古語で睾丸のことで、この草の実の形が、犬のそれに似て
いるのでこの名があります。見かけることは少ない在来種のイヌノフグリは
花が貧弱で、実の方が印象的です。普通俳句に詠まれるのはオオイヌノフグ
リです。
イヌノフグリ Veronica didyma var.lilacina
ゴマノハグサ科・クワガタソウ属の越年草。
葉は茎の下部で対生、上部で互生し卵円形(長さ・幅共に0.6−1cm)で
縁には4ー8個の鋸歯があり両面にも毛が散生する。花は上部葉腋に1個づ
つ付き、花冠は(径2−3o)は淡い紅紫色のすじがある。
雄しべ2個に雌しべ1個。果実は丸みを帯び毛むくじゃらの実(オオイヌ
フグリの実は扁平な形で毛もイヌフグリに比べ少ない)である。
環境庁のレッドデータブック絶滅危惧種U類に指定されている。
シキミ(樒) Lllicium anisatum
シキミ科・シキミ属の常緑高木⇒かってはモクレン科に分類されていた。
英名:Japanese star anise
実が多くつく、つまり重実であることから樒とついたともいわれる。
仏前に供える植物だったことから仏前草ともいいう。
星形の果実は有毒。葉・樹皮からは抹香、材から数珠を作る。
季語《春》 樒の花(しきみのはな) 花樒・かうしばの花・樒売
奥山の樒が花のごとやしくしく君に恋ひわたりなむ
(万葉集・大原今城)
ハコベ(繁縷) Stellaria media
ナデシコ科・ハコベ属の越年草
路傍や畑などいたるところに自生している。
・春の七草では「はこべら」
・タンパク質・ビタミンB、Cなどに富む。昔は食用にしていた。
別名:朝しらげ(「日出草」とも書く)
季語《春》 繁縷(はこべ) はこべら あさしらげ
はこべらや焦土の色の雀ども 石田波郷
ノジスミレ(野路菫) Viola yedoensis
スミレ科・スミレ属の多年草。
葉は長披針形〜へら形で、毛が多く縁が波打つ。側弁が無毛である点が、
よく似たスミレやヒメスミレとの見分けのポイントとなる。
花期:3〜5月 ⇒スミレは東アジアの温帯に広分布し、日本では日当
たりのよい山野に約50種が自生する。
ヨーロッパ原産で園芸品種となっているのは「三色菫」
季語《春》 菫(すみれ) :菫草・花菫・香菫(にほひすみれ)・相撲取草
・相撲花・一夜草・一葉草・壺菫・三色菫・パンジー
山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉
芭蕉の足を止めたすみれ草?
ある植物写真家がこの句の詠まれた同じ時期に、京都の伏見から大津
まで、芭蕉のたどった山路を歩き、それが有茎種のタチツボスミレであ
ると確かめたという。俳論、考察の中にいろいろあると思いますが・・・
タチツボスミレであると思います。(2014/2/8 遊子先生のおたより)
タチツボスミレ Viola grypoceras
画像:荒金正則著「豊の国大分の植物誌」
コデマリ(小手毬) Spiraea cantoniensis
バラ科シモツケ属の落葉低木。中国(中南部)原産。
別名:スズカケ。変種に八重咲のヤエコデマリがある。
開花期:4/20〜5/15頃。
鈴を掛けたように見えることから鈴懸ともいう。
ただし、スズカケノキ科の鈴懸の木とは 別種である。
季語《春》 こでまりの花:小粉団の花・小手毬の花・団子花・すずかけの花
こでまりのいそいそ間合つめにけり 渕野陽鳥
ゲンゲ(紫雲英) Astragalus sinicus
マメ科・ゲンゲ属の越年草。中国原産。
レンゲソウ、レンゲとも呼ぶ。かっては緑肥として刈取りの終わった稲田で広
く栽培されていた。葉は互生し、4〜6月に葉腋から花柄を伸ばし先端に多数
の蝶形花をつける。
季語《春》 紫雲英(げんげ): 蓮華草・げんげん・五形花(げげばな)
手に取るな矢張野に置け蓮華草 滝瓢水
アケビ(通草) Akebia quinata
アケビ科アケビ属。蔓性落葉低木。
花は4〜5月に咲き、木は雌雄同株であるが雌雄異花である。日本原産で
本州・九州・四国の山野に自生。秋に身が熟すと割れ、中の果実は美味。
⇒通草(秋)
←雌花
←雄花
季語《春》 通草の花(あけびのはな): 木通の花・花通草
そのかみの籠の渡し場花あけび 千石比呂志
ムベ(郁子) Stauntonia hexaphylla
アケビ科ムベ属の蔓性常緑低木。原産地:中国・日本。
アケビと違い果実は熟しても割れない。果実は食用となる他、茎や根は
薬に用いられる。
日本では伝統的に果樹として重んじられ、宮中に献上する習慣もあった。
花は単性で雌雄同株。
季語《春》 郁子の花(むべのはな): 木うべの花・常磐あけび
東端の埼は土へん郁子の花 渕野陽鳥
ホトケノザ(仏の座)Lamium amplexicaule
シソ科オドリコソウ属の一年草あるいは越年草
別名:サンガイグサ(三階草)。開花時期 2〜5月。
春の七草の一つにホトケノザがあるが、これは
コオニタビラコ(キク科)である.。
コオニタビラコ(小鬼田平子)
Lapsana apogonoides
キク科・ヤブタビラコ属の越年草。花期3〜5月 春の七草の一つ。
名前の由来:冬越しの根生葉は田にぴったりはりつくように広がっ
ていることから「田平子」に。
華の円座に似た形から仏の座の名がついた。
⇒シソ科のホトケノザは別種。
別名:土器草(小苗が丸く生じた形があたかも土器を置いたよう
に見えるため)
季語《新年》 仏の座: 田平子(たびらこ)
たびらこの在れば日向のあるところ 渕野陽鳥
シロツメクサ(白詰草) Trifolium repens
マメ科・シャジクソウ属の多年草。花期:5月〜9月
別名:クローバー
原産地:ヨーロッパ。花期:春〜秋
アカツメクサ(赤詰草) Trifoliumpratense
マメ科・シャジクソウ属の多年草。 花期:5月〜9月。
別名:ムラサキツメクサ・赤クローバー。英名:Red clover
季語《春》 苜蓿(うまごやし): クローバ 白詰草
青春にもどる四葉のクローバー 渕野陽鳥
ウマノアシガタ(馬の足形・毛莨) Ranunculus japonicus
キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草。有属植物とされるが、漢方薬に
も用いられる。
別名キンポウゲ(金鳳花)はウマノアシガタの八重咲のものをさすと
いわれるが、現在は混同され区別はない。開花時期:4〜6月。
花言葉:栄誉・栄光・楽しみ到来・子供らしさ・中傷
季語《春》 金鳳花(きんぽうげ):毛莨(きんぽうげ)・馬の脚形・駒の脚形
百歳の折返し点金鳳花 渕野陽鳥
スイバ(蓚・酢い葉) Rumex acetosa
タデ科・スイバ属の多年草。
葉や茎に酸味があることからこの名がついた。ギシギシという地方名
もある。
スカンポ、スカンボなどの別名でも呼ばれることもあるが、これらは
イタドリの方言名として用いられることが多い。 雌雄異株で花は春か
ら初夏にかけて咲く。日本では新芽を山菜とするが、ヨーロッパは古
くからスープの具などにされ、栽培種もあったそうである。
季語《春》 酔葉(すいば):すかんぽ 酔模(すいば)
スカンポや女上位の世に生れ 南 冨美子
フジ(藤) Wisteria floribunda
マメ科・フジ属のつる性落葉木本。
たくさんつけるのは野田藤。花房が短いのは山藤。
異名に「さのかたのはな」「むらさきぐさ」「まつみぐさ」
「ふたきぐさ」「まつなぐさ」などがあるそうです。
季語《春》 藤(ふじ):藤の花・白藤・山藤・藤の房・藤浪・藤棚
藤房の風に素直でありにけり 渕野陽鳥
藤 の 花 西寒多(そうだ)神社 ぶらり/2007.4.30 |