キャラバン日記
ニール・マクファーソン
8月2日午前5時40分、タウンズビル(Townsville)を出発。520キロを走り、クラーモント(Clermont)で一夜を過ごす。68日間も「冬眠」状態だったので、今日の一日は長く感じた。明日も500キロ余りを走る。
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カナマラのオアシス
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8月3日、クラーモントからブラッコール(Blackall)へ。道の両端には死んだカンガルーや生きているカンガルーがたくさんいる。これら奥地の町々はオーストラリアでもとりわけ孤立しているが、住民の親切心は厚い。
8月4日、ブラッコールからカナマラ(Cunnamulla)へ。旅を初めて3日目。3日とも朝5時に起床して、8時間も運転を続けた。明日は休日にしよう。道路にもいろいろあるが、1車線の道路がまっすぐ続くような場合は常に気を引き締めて運転しなければならない。すぐ後ろには大きなキャラバンホームを牽引しているのだから。
ニールのFord F100とキャラバンホーム
8月5日。カナマラは人口1,600人の町で、自給自足ができるようだ。他の町からかなり離れている。北のチャールビル(Charleville)へは200キロ、南のバーク(Bourke)へは257キロ、東のブレワリナ(Brewarrina)へは96キロ、また西のサーゴミンダ(Thargomindah)へは195キロだ。ワレゴ川(Warrego
River)が町を流れ、この乾燥地帯をいくらか潤している。
8月6日。午前6時まで寝た。夜中に運転するのは余りにも無謀だ。このあたり一体にはカンガルーが多く生息しているからだ。午前6時40分に出発。夜が明け始める。カンガルーが何百頭も群れをなして道路脇で草を食んでいた。運転中、速度は控えめにする。道路を横切るカンガルーとの衝突を避けるためだ。車とぶつかるカンガルーはとても多い。
車に轢かれ、人が近づくと、それでも必死に立ち上がろうとするカンガルーを見るのは心が痛む。たぶん、背骨が折れたのだろう。しかし、この哀れな動物を救う手だてはない。ちょっと前に轢かれたのであろう。この辺を頻繁に走る連結トレーラーにでも轢かれたか。
バークには驚くことがある。町へ通じる道路沿いには、オレンジ果樹園やブドウ園が延々と続いているのだ。ダーリング川(Darling River)の源はここバークだ。小さい川が4つバークで合流してダーリング川になる。
私達が一夜を過ごす町、コバー(Cobar)はとてもにぎやかだ。ほとんど住む人のいないうち捨てられた町を想像していた。この町にあった鉱山は、私達がここを最後に訪れて以後、閉山されたからだ。新聞の見出しには、鉱山労働者は倒産した会社からはなんの保証も得られない、とあった。ちょうど時を同じくして、ハワード一族が経営する衣料工場も倒産したが、政府は被雇用者に公的給付金制度を適用すると確約した。失業した鉱山労働者にはなかった保証である。
8月7ー8日。ブロークンヒル(Broken Hill)でまた休日を取る。最後の大型鉱山、パスミンコ(Pasminco)が閉山して以来、町の人口は減り続けてはいるが、それでも24,500人もある。この地で長い散歩をすることができた。自分の健康を維持するにはとにかく歩くことだ。
弟のジャックと私はこの地で休日を取っている。この後、ナラーボー(Nullarbor)を抜ける長い旅に向かう。ナラーボーまでの道のりもこれまた遠い。狭い道路を毎日8時間車を走らせる。道路には危険がいっぱいだ。カンガルーや羊、エミュー、山羊などが私達の行く手を阻む。
スペンサー湾の奥に位置するポート・オーガスタに到着。この地で給油を済ませ、必需品を車の屋根に載せた。旅はまだ3,600キロもあり、その大部分は辺境の地だ。
スペンサー湾に面するポートオーガスタ
セデューナ(Ceduna)・ノースマン(Norseman)間2,000キロの間にあるのは点在する建物だけで、各々は200キロも離れている。ここで旅人が得られるのは燃料と食事だけだ。この間、自動車整備を受けられる場所などありはしない。まさに、自己責任で生き延びていかなければならない。
クイーンズランド州やニュー・サウス・ウェールズ州西部の干ばつ地帯では、カンガルーやエミュー、家畜はみんな道路際で草をはむ。そこにはそれでも少しばかりの草があるのだ。他の草は枯れはて、上を歩くとパリパリと音を立ててくずれる。
私達はこの地域にはあまりなじみがない。通常はアイサ山(Mt. Isa)、テナントクリーク(Tennant
Creek)、アリススプリングス(Alice Springs)を通るルートを取るが、聞いたところによると、チャーターズタワーズ(Charters
Towers)、エメラルド(Emerald)、バーカルデン(Barcaldine)、ブラッコール、チャールビル(Charlevill)、バーク、コバー(Cobar)、ブロークン・ヒルを巡るルートなら600キロも行程を短縮できるそうだ。
バークやその少し下流でダーリング川と合流するのは、クルゴア川(Culgoa)、バーウォン川(Barwon)、ボーエン川(Bowen)、マルガ川(Mulga)、ヤンダ川(Yanda)、ワレゴ川などであるが、この時期、これらの川のほとんどは干上がっている。
これら点描によってオーストラリア奥地の旅がどのようなものか少しは分かるだろうか。オーストラリア旅行で訪れただろう都市とは少し違っているだろう。
(和訳:近藤 芳一)
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