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双子のパラドックス


 アインシュタインの相対性理論では、速く動くと時間が遅れるということになっています。

 >速く動くと時間が遅れる

 本当にそうなのでしょうか?そこで有名なのが「
双子のパラドックス」という話です


 双子の兄が高速の宇宙船で旅行をして10年後に地球に帰ってきました。宇宙船の速度は光速に近い速さ、例えば秒速20万キロメートルとします。相対性理論では、高速で動くものの時間は遅れるとされているので地球では12年の月日が経っていました。しかし、この時宇宙旅行をしていた兄の時間では8年しか経過していません。つまり、光速に近い速度で動いていた兄の時間は地球に残った双子の弟よりも遅く進んでいたため弟よりも2歳若くなるというものです。


 しかし、よく考えてください。地球にいる弟から見れば兄が宇宙船で飛び立っていったように見えますが、一方、兄から見れば、地球の方が秒速20万キロの速度で遠ざかっていったとも見えるはずです。ということは、地球にいる弟の年齢が若くなってもいいんじゃないか?というお話です。

 これが、アインシュタインの相対性理論に対するパラドックス(矛盾)とされていました。

 実際、特殊相対性理論では、「動いているものは、お互いに時間の進みが遅くなるように見える」とされています。それを逆手にとったものです。

 ですが、この特殊相対性理論は「観測者が等速直線運動をしている場合のみ」に適応されます。そして、「お互いが等速直線運動をしている場合」のみお互いに相手の時間が自分より遅く進むのです。

 宇宙船では必ず加速度運動という「見かけの力」が働きます。見かけの力とは慣性力。電車なんかで急に発進すると中にいる人は「おっとっと」ってなちゃいますね。”あれ”です。

 宇宙船では、地球を飛び立つとき、また折り返して帰ってくるときに加速しなければなりません。

 相対性理論の後にアインシュタインにより発表された一般相対性理論では「加速度運動するものは、時間の進み方が遅くなる」ということがいわれています。つまり、上の宇宙旅行の場合、時間の遅れはお互いさま
ではないんです。

 つまり、兄の方が地球に残った弟よりも時間の進み方が遅くなり、地球に帰ってきたときには兄の方が若くなっているということになります。

 「でも、宇宙船が加速運動しているとしても、宇宙船から見たら地球が加速運動しているように見えるんじゃないの?」

 と、いう話もよく出てきます。しかし、これは錯覚のようなものですね。地球にいる弟には「見かけの力」は働きません。「おっとっと」となりませんからね。つまり、加速しているのは、宇宙船なわけです。

 では、実際にどのような過程で時間が遅れるのかを見てみましょう。

 

 ややこしくなるので出発の時の加速運動は省きます。上の図では、宇宙船の兄の時計を見ていきます。まず、赤線の部分。この部分では宇宙船は一定の速度(秒速20万キロ)で飛んでいるため等速直線運動をしていることになります。つまり、この赤線の部分では、「お互いの時間が遅れて見える」ということになるんです。ですから、兄の時計では5年たっていた場合、地球の時間では4年しか経っていません。この時点では、兄から見たら弟の方が若く見えるんですね。(直接会うことはできませんが・・・)

 問題は、緑の線の部分。Uターンするところです。ここでは加速運動が働きます。この折り返しのところで兄の時計では、ほんのわずかな時間しか経っていないのに兄から見た地球の時計は一気に進むことになります。Uターン前までは、4年しか経っていなかった地球の時計がいっきに8年まで進んでしまいました。折り返しを終えた時点で兄の時計では5年。兄から見た地球の時計は8年と逆転してしまったことになります。

 そして、帰り道もまた兄から見た地球の時計は遅く進むことになります。行きと同じ距離なので兄の時計で5年。兄から見た地球の時計は4年です。つまり、兄の時計では、行き5年+折り返し(ほぼ0)+帰り5年で10年しか経っていないのに地球の時計では行き4年+折り返し4年+帰り4年と12年の月日が流れたということになります。

 なんだか、余計に意味わかんなくなっちゃいましたか?では、弟の時計も見ておきましょう。

 

 地球にいる弟の時計でもやはり、赤い直線の部分では、お互いの時間が遅れて見えることになります。つまり、弟の時計で6年経っているのに弟から見た宇宙船の時計は5年しか経っていないように見えます。

 さて、問題のUターン。ここでは、弟から見た宇宙船は少しの時間で折り返しているように見えるので、ほぼ0です。弟の時計でも弟からみた宇宙船の時計でも少しの時間しか経っていませんので弟の時計では6年。弟から見た宇宙船の時計は5年のままです。そして、帰り。ここでは、行き同様、弟の時計6年。弟から見た宇宙船の時計5年が経ちます。つまり、弟の時計では、行き6年+折り返し0+帰り6年で12年経っているのに弟から見た宇宙船の時計は行き5年+折り返し0+帰り5年で10年しか経っていないことになります。

 そのため、結果、兄の時計では10年しか経っていないのに地球にいた弟の時計では12年の月日が流れたということになり、兄が弟よりも2歳若くなるという結果となります。



 では、こんな場合はどうでしょう。等速直線運動をしている距離をずっと長くするんです。

 10倍くらい長くして、折り返しは同じ時間で折り返すようにします。すると、等速直線運動、つまり、お互いの時間が遅れる期間が長くなるから、計算上、地球に戻ってきた兄の年齢の方が上になってしまうのではないか?

 

 つまり、宇宙船の兄から見た場合、赤い線(等速直線運動)の時間を10倍にしますので宇宙船の時間で50年経っていても地球の時間では40年しか経っていないことになります。そして、折り返し地点。ここは、同じ時間で折り返すので兄の時計では一瞬。地球の時計では4年経つことになります。帰りは行きと同じですね。宇宙船の時間で50年。地球の時間で40年です。すると、兄(行き50年+折り返し0+帰り50年)で100年。地球にいる弟(行き40年+折り返し4年+帰り40年)で84年。

 おっと、これでは、地球にいる弟の方が若くなる計算ではないか・・・!という例です。

 しかし、実際にはUターンの時に地球にいる弟の時計がどのくらい進むか、宇宙船とどの程度差が出るかは地球と宇宙船との距離が離れれば離れるほど大きくなります。ですので、秒速20万キロで距離だけ伸びた場合、折り返し時に10倍距離が伸びた分、宇宙船の兄からみた地球の時間が一気に進む割合も大きくなるのです。ですから、宇宙船から見た地球の時間は折り返しで40年が一気に時間が進むことになります。つまり、地球にいる弟(行き40年+折り返し40年+帰り40年)で120年。距離が延びる分、年齢の差も大きくなるのです。

 さて、双子のパラドックスでは、秒速20万キロという速度を例にあげました。こんな速度のロケットは、現実の世界には存在しません。では、この時間の遅れというのは、計算上の理論でしかないのでしょうか?

 いや、実は、飛行機に乗っても車に乗っても電車に乗っても速く動く人の時間は遅くなるんです。ただし、飛行機や車では、ほんのちょっとでしかないので気が付くはずもないんですね。