『龍が如く』(2007年/東映)

監督:三池崇史。
出演:北村一輝。岸谷五朗。塩谷瞬。サエコ。高岡早紀。

かつて「堂島の龍」と呼ばれた一人の極道桐生一馬が10年の刑期を終え、ネオン街神室町へと帰ってきた。そんな彼の前に遥という一人の少女が現れる。少女は消息が途絶えた母親美月を探すため孤児院を抜け出し一人この町にやってきたという。少女の母親探しを手伝う桐生。一方、彼との勝負に執念を燃やす真島組組長で桐生の兄貴分でもある真島は桐生の出所を知り桐生を付け狙う。そして桐生を狙うのは真島だけではなく、東城会の消えた100億円に絡む錦山もまた桐生を狙っていた。
・・・と、とりあえずあらすじ書きましたが、本編はあらすじなんて書けっこない・・・いや、必要ない。ってなモンになってます。この作品観に行ったときは『龍が如く2』をプレイして、とりあえず1のおおまかな物語もその中で見ていたから、それなりに頭の中で変換しながら鑑賞でき、頭グルグル状態だけは避けられたのですが・・・。はっきり言います「なんじゃこりゃ?」。ゲームがねぇ、かっこいいんですわ。すっごく。そのかっこよさ期待してたんですよ。ところが・・・まず、劇場前のポスターを見て「あれ?」主人公桐生役の北村一輝と同扱いで写ってるキャラこれってもしかして・・・真島の兄さん?え?なんで?なんでこんなに扱いが大きいの?その時点で私の頭の中はどよ〜んといや〜な予感で澱んでいた。で、結果は思ってた通り!キワモノ映画じゃないか!消えた100億も母親探す美月も、風間のおやっさんも、神宮も、基本的にいらないじゃないか!もしかしたら主役の桐生だってどうでもよかったのかも。比重はすべて真島の兄さんじゃないか!(笑)。この映画の製作発表の席で三池監督は「評論家から冷たい目でみられるくらいに突き抜けたアクションとストーリーを持つ映画にしたい」とおっしゃったそうで・・・(^^;)。どうやらそのような作品にしっかりと出来上がったようですね。ま、いいや真島の兄さんのキャラ私好きだから。あ〜・・・でも、あのゲームの脚本そのまんまの物語も観たい。Vシネでいいからやってくれないかなぁ。

2007年3月5日(千日前国際シネマ)

BACK

『あかね空』(2006年/角川映画)

監督:浜本正機。
出演:内野聖陽。中谷美紀。中村梅雀。石橋蓮司。岩下志麻。

江戸深川の裏長屋。そこへ京都からやってきた豆腐職人永吉が長屋の一角で豆腐店「京や」を開く。最初は物珍しさと同じ長屋のよしみということで瞬く間に売り切れた豆腐だが、江戸の豆腐と違い永吉の作る京風の豆腐は形も小さくやわらかく、深川の人の舌には全く受け入れられず、毎日大量の売れ残りを出す始末だった。しかし永吉が長屋に来てから彼が気になって仕方のない同じ長屋の大工の娘おふみの応援と、賑わう永代橋の上で行方不明になってしまった4歳の息子が、今生きていれば永吉と同じような年齢ということから、息子の姿と重ね合わせ影ながら応援してくれる永代寺出入りの老舗の豆腐屋相州屋のおかげで、永代寺出入りとなり、多くの料理屋の得意先も増え、「京や」は繁盛しだす。永吉とおふみが夫婦になってから18年。3人の子供にも恵まれ、相州屋のあとを受け表通りに店を構え、幸せな日々を送る「京や」一家だったが・・・。
市井に暮らす人々の小さな幸せと、哀しみ、日々の生活の中で誰もが持つ喜怒哀楽。悪人もいれば善人もいる。善人だって悪人になるし、悪人だって善人になる。なんとも清清しい人間賛歌の物語だ。内野聖陽さんは、NHKの『風林火山』でインプットされているものだから、京言葉を話す人の良いさわやかイメージの永吉にまず驚いた。この人やっぱ巧いんだなぁ〜。傳蔵役との演じ分けはすごい。でも傳蔵役の方が私にはしっくり見えたんですけどね(^^;)。内野さんも上手いですが、中谷美紀さんもいいし、この作品で唯一憎たらしい平野屋を演じる中村梅雀さんもいいわ。もう出てる人みんないい。良い作品です。でもねぇ・・・実は私このCGってヤツはどうも好かんのですわ。絶対に使わないと雰囲気の出ない作品に使用するのはいいんですけど、SFだとか戦争モノだとかね。でもこういう作品で別に無理に永代橋の再現することないと思うし、セットだって丸わかりのあかね空だったっていいと思うんですけどねぇ。

2007年4月2日(梅田ガーデンシネマ)

BACK

『シルクハットの大親分』(1970年/東映)

監督:鈴木則文。
出演:若山富三郎。藤純子。伊吹吾郎。清川虹子。春川ますみ。

日露戦争に人夫として組をあげて参加し、大活躍をした四国道後の熊虎一家は、大歓迎を受けるものと勢い勇んで神戸港へと帰港した。ところが出迎えたのは妹の清子と代貸の二人だけ。しかも同じように大陸へ渡っていたものの、軍の高官と結託して私欲を貪っていた熊本鎮台一家の谷垣の歓迎会が盛大に開かれていると知った熊虎は、その会場を大混乱に陥れる。なんとかその場は大阪の堂島組の女組長おたかの裁量で納まったものの、鎮台との遺恨は残ったまま。そんな中熊虎は陸軍省防衛部長の松村から、君の活躍は乃木大将からの手紙で知った、ぜひとも今後の戦局に重要となる遼東半島の要塞構築にかかる人夫と食料調達の任を与えられる。しかし仕事場は鎮台の地元九州。何としても熊虎を排除したい鎮台一家は彼らとつるむ陸軍中佐鬼頭と共に執拗な妨害工作が始まる。
この作品は『緋牡丹博徒』のスピンオフ。私は『緋牡丹博徒』シリーズではこの熊虎親分好きなんですよねぇ。ふざけたチョビ髭にとってつけたように不細工にするために施されたそばかすメイク。この役でのトミーのはじけっぷりには本当に驚かされます。とんでもメイクにコミカル演技だけども熊虎親分かっこいいんですわ。すっかり惚れられた芸者の蝶子にせがまれ唄う小唄がさすがお父様が長唄の師匠でご自身も長唄をやってらしただけあってお上手ですし、仁侠映画ではお決まりの殴りこみシーンには大砲を引きずってのご登場。決めのシーンにも笑いを盛り込むなんてサービス満点です。しかし、そこは殺陣の上手さはピカ一のトミー。いざ殴りこみとなると、かっこよくない訳がない!
この作品観てふと気付いたのですが・・・天津敏、遠藤辰雄の悪役コンビ。よく見かけるなぁ〜。仁侠映画観るたび、この二人が悪役のような気がする(笑)。天津・遠藤悪役コンビシリーズってまとめてみようかしら。

BACK

『関の彌太っぺ』(1963年/東映)

監督:山下耕作。
出演:中村錦之助。十朱幸代。木村功。大坂志郎。

生き別れになった妹を探して旅を続ける渡世人の弥太郎、通称「関の弥太っぺ」は、川に落ちた少女お小夜を助ける。別れた頃の妹と同じ年頃のお小夜に妹を重ね、いいことをしたと娘の手を引き去っていく父とお小夜の後姿を見送る弥太郎だが、その父子を「ごまのはえ(盗人)」だと追ってきた同じ渡世人箱田の守介に斬られ瀕死となった父親に頼まれ娘をある旅籠に届けることになる。それから10年。金で人を斬るやくざな暮らしで面相がすっかり様変わりしてしまった弥太郎は、出入りで出会った旧知の田毎の才兵衛から、美しく育ったお小夜とその家族が10年前に助けてくれた旅人を探していると聞く。
道頓堀東映閉館イベントでこの作品を観たのですが、上映前に大阪人にはおなじみの浜村淳さんによる舞台挨拶があり、この作品についてのお話をして下さいました。何でもこの作品は錦之助さんがやりたいと言い出し、監督もぜひとも山下耕作さんでとまだ3本ほどの作品しか撮っていない新人の監督だった山下監督を指名したとか。そして最初成長したお小夜役は藤純子さんの予定だったけど、まだ学生だった藤さんのスケジュールが合わず、ちょうど売り出してきていた十朱さんになったとか、この方のお話は面白くって上手くって嫌いではないんですが、こと映画の話になると要注意なんですよね。見事にラストまでおっしゃってくれますから(笑)。「そしてラストが素晴らしい」って言ったときにはドキドキしましたよ。「それはこれからしっかりとご覧下さい」って言葉で一安心。ラストを知らないままでしっかり映画を堪能しました(笑)。さすが名作と言われるだけあっていいですねぇこの作品。長谷川伸原作で、元々舞台劇だから、脚本がきっちりしてるし、浜村さんじゃないけど「ラストがいい!」でもって有名だという名セリフこれがまたいいですねぇ。「このシャバにゃあ、悲しいこと・辛えことがたくさんある。だが、忘れるこった。忘れて日が暮れりゃあ明日になる。ああ、明日も天気か...」。コマ落ちが激しくって、ちょっとつらいものはありましたが、劇場で観られてよかったと思う作品でした。

2007年4月19日(道頓堀東映)

BACK

『日本橋』(1956年/大映)

監督:市川崑。
出演:淡島千景。山本富士子。若尾文子。品川隆二。柳永二郎 。

日本橋元大工町。路地の細道を入った幽霊が出るという噂のある家に移転してきた雛妓お千世を始め抱妓九人を抱える稲葉屋のあるじお孝は、ことあるごとに日本橋で有名な美人芸者清葉に張り合い、清葉に振られた男を拾っては「私が嫌になったらおしまいよ」とはっきり言い渡し付き合うということを繰り返していた。そんなある日行方不明となった姉に似ている清葉に思いを寄せる医学士葛木晋三が、思い切って清葉に心情を打ち明けるも、清葉は旦那持ち、通らぬ思いに苦悩しながら別れの盃を交わす。その帰路葛木は一石橋で巡査にしつこく不審尋問を受けるがお孝に助けられ、葛木が清葉に振られたと知ったお孝は葛木を口説き二人は結ばれる。しかしいつもの男たちの場合と違い、お孝は真剣にそして一途に葛木に惚れていくが・・・
泉鏡花原作の文芸作品です。なんでもこの作品が市川崑監督が初めて撮ったカラー作品だとか・・・。おまけにこの作品の助監督は増村保造監督。なんだかそれだけでもすごい作品って気がしますが、名作!っていう作品ではないようです(笑)。秀作ですね。私は好きですよコレ。映像もきれいだし、時間経過がわかりやすくって流れがいい。そして淡島さん演じるお孝がいい。きれいだしチャーミングだし。清葉役の山本富士子さんもこれまたすごくきれい!この美しく貞淑で、母と子のために苦労する健気な清葉役にぴったりです。このキャスティングでこの作品は持ってるんじゃないかな?って気がする。でもなんで私がこの作品を観たか?と言いますと、実は最近昔懐かしい『素浪人月影兵庫』を観てましてね(笑)。で、それで大好きなキャラクターである「焼津の半次」を演じる品川隆二さんが、昔は二枚目役だったということで、ぜひとも確認して観たかったんですよ、その二枚目ぶりを。淡島さん、山本さんの超美人ぶりにも驚きましたが、品川隆二さんには一番驚いた(笑)。全然結びつかない。別人ですよ。まぁ確かにこの作品の時は多分20代だと思うんですが、それにしても10年でそんなに変わりますか?ここ何年かでかなり昔の邦画を観ていて、何度か「え〜!!この人が○○さん!!」という驚きはありましたが、今までで一番驚いた。見た目の変貌ぶりではなく、雰囲気が全然違う。そら役柄が全然違うんだから違って当たり前なんですけど、それにしても、違いすぎ。最近読んだ品川さんのインタビュー本の中で、当初この役は鶴田浩二さんがやるはずで、鶴田さんが逃げた(笑)からまわってきたとか・・・。私はこの役鶴田さんじゃなくって品川さんで大正解だって思いましたけどね。あ・・・あと柳永二郎さんにも驚いたなぁ。どっかで見た名前だと思っていたら『本日休診』の八春先生じゃないですか!?これもまた全然違う役で見事な別人ぶり。いつ頃からなんでしょうかね。この俳優さんはこんな役って決まりもんみたいになったのって・・・。

BACK

『女王蜂の逆襲』(1961年/新東宝)

監督:小野田嘉幹。
出演:三原葉子。天知茂。大原譲二。沖竜次。

関東桜組の親分桜珠美は自殺した大滝組の金竜親分の弔いに鬼怒川温泉へとやってきた。ところがそこで、今では組を解散し、旅館経営をしている金竜の息子慎介から、元湯の権利譲渡を金竜が断ったことで、黒部組から嫌がらせをされていることを聞き、金竜の自殺に不審を抱く。元湯の権利を巡り暗躍を続ける黒部組の悪事を暴こうと探りを入れる珠美の前に現れる「無鉄砲のマサ」と名乗る不思議な男。職探しさと黒部組にやたらと自分を売り込むマサに黒部は慎介を消せば雇ってもいいとピストルを手渡す。
これは1961年の作品。つまり新東宝最後の年の作品だそうです。最後の方になってやっといい人の役がやってきた天知さん。ノリノリの作品です。犬シリーズのしょぼくれが落ち着きなく、やんちゃになった感じ(笑)。いつ潰れるかわかんないから、とにかくやっちまえ!的なノリなのか、なんかみんなテンション高いです。無鉄砲のマサなんてネーミングからしていい加減だ。そのマサが大暴れするクラブのシーンなんて、安もん臭いセットながら、そこまで長まわししますか?ってくらいにカットなしのアクションシーン。予算が少ない中でのフィルム温存のためなのか、とにかくいくとこまでいっちまえ!っていうやけくそのノリなのか・・・。天知さんはちょっぴり息があがっちゃってますけどね。三原葉子ねえさんのセクシーシーンもほとんどなく、とは言っても新東宝、お色気担当を魚住純子さんが本作品ではちょっぴり担当してますが、新東宝と言えば!のキワモノ度の非常に低い作品で、ごくごく普通の娯楽アクション作品です。出演者の妙なテンションの高さを除けば(笑)。

BACK

『唄祭り赤城山』(1962年/東映)

監督:深田金之助。
出演:近衛十四郎。品川隆二。北原しげみ。立川さゆり。

上州国定村の忠治の子分板割の浅太郎は、代官所の役人を斬ったことで長の旅に出ていた。祭り太鼓に今頃国定村でも祭りの時季だと村を懐かしむ浅太郎だったが、国定村では飢饉と代官の横暴に苦しむ村人の心やすめにと、忠治が私財を叩いて催した祭りさえも代官によって邪魔され、怒った忠治は代官所を襲い代官を斬り、子分たちと共に赤城山へと立てこもっていた。旅先でそのことを知り急ぎ赤城山へと駆け付けた浅太郎はそこで叔父勘助の裏切りを聞く。
「国定忠治」って話は知っているような、知らないような・・・。百姓思いのいい親分で、代官と戦って逃げ切れないということで赤城の山で子分たちと別れる。で、そこで終わりだと思ってたんですよ。赤城の山で終わりじゃないんですね。そっかこういうお話だったのかってすごく納得しながら楽しんで見ちゃいました(笑)。でもねぇ、劇中劇でよく演じられるのがこの「国定忠治」のこの赤城山の子分たちと別れるシーンだから、なんか見てて変だったなぁ。あまりにも有名すぎるもんだから、妙に芝居がかっちゃうんですよね。ここだけ(笑)。「生涯てめぇという強えぇ味方があったのだ」って・・・ねぇ。普通にしたら変だし、かといってこの芝居口調も・・・むずかしいとこだね。それでも今までまともにこのお芝居見たことなかったんで、面白かったな。しかもこれ「素浪人月影兵庫」の旦那と半次だし(笑)。「唄祭り」なんて頭についてて、一体なんだ?って話なんですが、劇中の歌が多いってことのようです。だからちょっぴりノリの軽い作品となってますが、ラストの捕り方に囲まれた忠治と浅太郎の斬り抜ける、大立ち回りのシーンはすごいですよ。こういうちょっぴり小粒っぽい作品でも、この時代の時代劇の殺陣のシーンは半端じゃないですね。

BACK

『妖刀物語 花の吉原百人斬り』(1960年/東映)

監督:内田吐夢。
出演:片岡千恵蔵。水谷良重。木村功。沢村貞子。

武州佐野の絹商人次郎左衛門は、先代に拾われた捨て子だったが、今では先代の後を継ぎ真面目な性格で商いを繁盛させ、奉公人たちにも慕われていた。しかし彼には生まれながらに顔に大きな痣があり、そのためか嫁の来てがなく、何度も見合をしては断られていた。今日もまた商売仲間越後屋の仲人で見合いをするも、また断わられる。そんな次郎左衛門を気遣ってか、越後屋は彼を吉原へと案内する。生まれて初めて吉原へと足を運んだ次郎左衛門だが、遊女たちにさえ顔の痣を厭われる。ところが最後にやってきた岡場所あがりの玉鶴は、痣など気にも留めず次郎左衛門に優しく接する。そんな玉鶴にすっかりのぼせあがった次郎左衛門は、足繁く吉原へと通い、茶屋の主人たちにもいいカモだと、うまくあしらわれ、多額の金を貢ぐことになる。ところが信州には雹が振り、次郎左衛門の商売は苦しくなる。金の切れ目が縁の切れ目・・・そこまできてやっと次郎左衛門は自分が利用されていたことに気づくが・・・。
まさかこの作品がネット配信で見られるとは・・・。観たかったんですよねぇコレ。顔の痣が原因で女性に疎まれ、縁遠いっていうあらすじは知ってましたが、それだけで?って思っちゃってたんですけど、こうしてしっかり映像で見ると、なんとなくわかるような気がするから不思議です。で、正直おまえはどうなんだ?って聞かれると・・・ごめんなさい。多分ダメだと思います。だから余計にこの主人公次郎左衛門が玉鶴に入れあげていくのがすごくわかりやすいんですよね。片岡千恵蔵さんってそんなに上手い俳優さんではないと思うんですが、変に計算しない芝居のせいか、この次郎左衛門の朴訥とした田舎者の不器用さと、常に顔の痣を厭われて、それだけで男としての自分を否定され続けてきたため妙に男の色のない卑屈さが見事に醸し出されている。このあたりは監督の勝利かな?それと水谷良重さんもいいわ。あの一般庶民な顔立ち(笑)。美形な女優さんがこの役やってたら、きっとこんなにいい映画にはならなかったでしょうね。おまえら見返してやるぅ!っていう根性ありありの顔つきがいいんですわ。 あと驚いたのが片岡千恵蔵さんのキスシーン!初めてみましたよ。 そしてラスト。あの桜吹雪の演出いいですねぇ。百人斬り・・・百人もいなかったように思うのですが・・・ってそんな突っ込みはなしか・・・(^^;

BACK

『破戒』(1962年/大映)

監督:市川崑。
出演:市川雷蔵。長門裕之。船越英二。藤村志保。三國連太郎 。

飯山の小学校教員の瀬川丑松は、父の身に不安を覚え十年ぶりに信州烏帽子嶽山麓の番小屋へとやってきた。丑松の不安は的中し父の死を知る。しかし部落民だという素性を隠す丑松は父の死に顔を一目見ることしか出来なかった。父の死を大っぴらに嘆くことすら出来ない自分の身の上を恥じながらも、父の言いつけ通り自身の素性を明かすことはしないと誓うのだった。自分の目の前で繰り広げられる部落民への差別に苦悩する日々を送る丑松。そんなある日丑松は尊敬する部落解放を叫ぶ猪子蓮太郎と出会う。しかしその猪子にも部落民であることを隠す丑松だったが、やがてどこからともなく丑松が部落民であるという噂が流れだす・・・。
島崎藤村「破壊」と中学校時代の文学史で覚えさせられ、有名な作品であるにも関わらず私はこれは未読なんですよね。みんなこの作品読んでるのかなぁ?どうも・・・ねぇ、手に取る気になれず中学、高校を過ぎ、さすがに大人になってからこういう作品を読むか?と言われるとまず読むわけない(笑)。でもまぁ、内容を知らないってのもどうかな?と常々思ってきたので、今まで暗そうだと躊躇していたのですが、今回CATVで放映するし・・・ってことで録画して視聴。
暗いと言えば暗い(笑)。でも見てるのが苦痛だっていうのは全然なかったですね。やはり名作なのかな。ただ雷蔵さんと長門さんという組み合わせがすごく不思議だった。長門さんって日活か東映っていうイメージがあるもんだから、ある意味新鮮でしたね大映での長門さんって。映画自体は多分しっかりと原作を元に描いている文学作品っぽくって、いいも悪いもない手堅い作品って印象でした。これはキャストもいいからでしょうね。ま、ともかく島崎藤村の『破壊』って作品はこういう物語なんだとわかっただけでもよかった。よかった(笑)。

BACK

『緋牡丹博徒 一宿一飯』(1968年/東映)

監督:鈴木則文。
出演:藤純子。鶴田浩二。若山富三郎。菅原文太。水島道太郎。

明治17年上州。高利貸しの倉持に収穫物をカタに取られて困っていた農民たちの我慢は限界にきていた。常に事を大きくしないようにと農民たちをなだめていた戸ヶ崎組だったが、農民たちのため倉持との決着を付けることにする。しかし舎弟分の笠松が裏で倉持と結託し、戸ヶ崎を陥れる罠を張っていた。戸ヶ崎組長は急襲した警官隊に射殺され、戸ヶ崎組は実質上解散したも同じ状態となってしまう。四国の熊虎一家でそのことを聞いたお竜は急ぎ上州へと戻る。戸ヶ崎を亡きものとし、次に笠松は戸ヶ崎組の持つ郵便馬車の権利を狙っていた。笠松の悪事をなんとしても阻止しようと動くお竜だったが・・・。
戸ヶ崎により、お竜を巻き込まないようにとの計らいで四国の熊虎親分への使いに出されたことでやってきたお竜との再会を喜ぶ熊虎親分。ってだけで登場の熊虎親分の扱いが、ちょっぴり寂しい。なんかとりあえず出しておけって感じなんだもんなぁ。激シブ!な鶴田浩二さんがいちゃあ、それも仕方ないか・・・。しかしこれ見てびっくりしたのは、文太さんが悪役なんだもんなぁ〜、しかもセリフ少ないし、やっつけられちゃうし。なんか贅沢ですな(笑)。しかし鶴田さんってとにかくおいしいとこ持っていきますねぇ。渋すぎです。お竜に「あんたならまだ間に合う。ドスよりもお針の方が似合ってると思うけどな・・・」こりゃ鶴田さんだから似合うセリフですな。でもって、殴り込みにいくシーンでお竜を呼び止め、拾って持っていた彼女のかんざしを髪にさしてやるシーンにクラクラきちまいましたぜ。かっこぇ〜!!様式美ですな。様式美。あ・・・それとまたこの作品天津&遠藤悪役コンビ。その上なんと!藤岡重慶さんがお竜さんを助けるいい親分なのにびっくり(笑)。でもいい人に見えるんだから上手い役者さんなんでしょうねぇ。

BACK

『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE ~総統は二度死ぬ~ 』(2007年/)

監督・脚本・キャラクターデザイン・録音・FLASH・編集・声の出演 : FROGMAN

世界征服をもくろむ秘密結社「鷹の爪団」。しかし今彼らは、資金難のため家賃すら払えない状態だった。執拗な家主からの取り立てに、とうとう彼らは夜逃げを実行する。ところが夜逃げを決行した彼らの車に逃がすものかと貼り付いた家主が!その家主を振り払おうと出力全開にあげたマシンは勢いがつき過ぎてなんと宇宙空間へと飛び出してしまう!宇宙で途方に暮れる彼らを救ったのは宇宙実験施設ピースボール。これで家賃なしの生活が出来ると喜んだ彼らだったが・・・。
TOHOシネマズで映画を観ると必ず最初にかかるマナームービーがこの「秘密結社 鷹の爪」。初めてこれ見たときは「何じゃ?」って感じだったんですが、何度も見ているとすっかりツボにはまり、これが映画化されると知ったときには絶対に観ようと心に決めていた(笑)。なんでもこの作品は深夜テレビで放映されていて、マニアックな人気を誇る作品なんだそうですが、実はテレビ版は未見。テレビ版を観てからこれ観るともっと面白く感じるらしいんですが、これはこれだけでもOKですよ。まず映画中ずっと表示される資金ゲージがいい!このゲージが無くなると資金切れで映画の内容が変わるんですよ。で、これまたお決まりのパターンなんですが、映画のファーストクレジットの時点で3D映像を惜しみなく使ったもんだから、いきなりこのゲージが半分以下に減る(笑)。このゲージ、増えたり減ったりするだけで最初から最後まで笑わせてくれます。好きだなぁ、こういう単純な発想。映画の中身もおバカと言えばおバカかもしれないんだけど、結構ブラックユーモア満載で、面白いんですわ。それに映画好きをくすぐる「SWネタ」。まぁ、ちょっとゲロ多くないかい?って気もしなくはないですが・・・(^^;。でも、それも最後の家主の名セリフで帳消し!最後は熱いですぜ。

2007年6月1日(TOHOシネマズ泉北)

BACK

『しゃべれども しゃべれども』(2007年/)

監督:平山秀幸。
出演:国分太一。香里奈。森永悠希。松重豊。八千草薫。伊東四朗。

東京の下町。うだつの上がらない二つ目の落語家の三つ葉は、ひょんなことから、落語教室を開くことになる。美人だが無愛想で、会話が苦手なために他人とのコミュニュケーションがとれない五月。関西弁のためにクラスになじめないでいる村林少年。極度の口下手のため、野球解説が出来ない元野球選手の湯河原。三つ葉が彼らに与えた課題は『まんじゅうこわい』。文句は多いしケンカはするし・・・何度も頭を抱える三つ葉だが、彼らと接するうちに自分自身の落語への思いも少しづつ変化していく。
主役の国分クンいいわ。地味にうまいんですよね。落語もうまいし・・・TOKIOのメンバーってホントみんな器用ですよねぇ。でも、私はこの作品彼なくしては語れない。そこはやはり関西人だからだろうか?(笑)森永悠希クンいい!君うますぎ。彼の演じる「まんじゅうこわい」は最高ですよ。関西弁だから上方落語の枝雀さんっていうのだけじゃなくって、枝雀さんの見せる落語っていうのもポイントにしているんでしょうね。村林が演じる「まんじゅうこわい」が枝雀さんの演じ方も真似ていて、これはうれしかったなぁ。物語もすごく気持ちのいい流れで、見終わって優しい気持ちで映画館を後に出来る作品でした。昨年から生の落語が観てみたい!って思ってるんですが、この作品観てますます観たくなりましたよ。

2007年6月10日(MOVIX八尾)

BACK

『パッチギ!LOVE & PEACE』(2007年/)

監督:井筒和幸。
出演:井坂俊哉。西島秀俊。中村ゆり。藤井隆。

1974年の東京。アンソンは妻亡きあと母と妹、そして一人息子チャンスと暮らしていた。彼らは筋ジストロフィーという難病にかかったチャンスの治療のために京都から出てきたのだった。しかし、東京の病院でもチャンスの病気を治す手立てはなく、アメリカでなら・・・という言葉を信じ、無謀な計画を立てる。一方妹のキョンジャは、チャンスの治療費を稼ぐために、焼き肉屋でスカウトされたことをきっかけに芸能界に入る。やがてキョンジャは日本の特攻隊を扱った映画の主演を射止めるが、日本軍への徴兵を逃れ、生き延びた父親への思いが映画への思いとすれ違うことに・・・。
まず一言!『パッチギ』の方がいい!
もうねぇ・・・なんでこの作品作ったんだろう?この作品はテレビで毒舌吐いてるうっとうしいおっさんそのまんまの作品じゃないか。芸能界には在日が多い?だから何なんだよ!?今と違って在日が大金を儲けようと思ったら芸能界しかなかったのかもしれない。それも在日であることを隠してね・・・。だったら、それをもっとそういう風に描けば?厭味ったらしく「在日がいなければ紅白歌合戦は出来ない」なんてセリフ入れることないじゃない?それとも何かい?芸能に関しては日本人より在日の方が芝居もうまいし、歌も上手い!上なんだぜってこと言いたいのかい?違うだろ?『パッチギ』で、在日なんて知らなかった主人公の行動と目を通して同じように知らなかった私に、差別意識の怖さ痛さを感じさせてくれたのに・・・一体どうしちまったんだい?おまけにあれもこれものテンコ盛りの節操のない物語。久し振りに観終わって気分の悪い作品にあたったな・・・。ま、一番気分悪かったのは、ラストのキョンジャの舞台挨拶なんですけどね・・・。多くの人が係わって出来上がった一本の映画。それを自分の気持ちだけで壊していいのかどうか・・・いい歳した人間がわからないわけないと思うんだけどね・・・。実際にこんなのがあったらどうするの?フィクションだからOK?その映画の完成を楽しみにしている映画ファンってのもいるんだけどねぇ。ま、つまりはこの作品「オレ様映画」ってことだよね。

2007年6月11日(TOHOシネマズなんば)

BACK

『キサラギ』(2007年/)

監督:佐藤祐市。
出演:小栗旬。ユースケ・サンタマリア。小出恵介。塚地武雅。香川照之。

グラビアアイドルの如月ミキが自殺してから1年。彼女のファンサイトの常連である5人が追悼会に集まる。彼女の思い出話とこの会主催の家元の如月ミキお宝コレクションで大いに盛り上がるはずだったが、オダ・ユージの一言「彼女は殺されたんだ」という言葉から、事態は思わぬ展開を見せる。
すっごい面白かった。ハイ、感想終わり。としか言えない作品だ(笑)。もう何をどう言ってもネタばれになっちゃって、どれかひとつでもわかっちゃうと面白くなくなっちゃうという、緻密な作品です(笑)。私はこういうの大好きだ。ただこれ観た人のほとんどが言ってるラスト。あれは確かに余分ですね。続編に色気をみせてしまったのか、なんだか・・・。これはこれで、終わるからいいのに。しかし・・・香川照之さんうますぎ。何でもやりすぎ。最高ですわ。

2007年6月25日(シネ・リーブル梅田)

BACK

『長脇差忠臣蔵』(1962年/大映)

監督:渡辺邦男。
出演:市川雷蔵。本郷功次郎。勝新太郎。宇津井健。天知茂。

時は幕末。徳川幕府の威信が揺らぎ始めた頃。遠州の宿では、二俣の藤兵衛が自分の娘を老中老中本多備前守の妾にさし出したことで、元からもっていた十手の威光をさらに振りかざし、「お上の御用」をいいことに、民百姓たちに無理難題を押し付けていた。その横暴を見るに見かねた掛川の次郎吉は、なんとか民百姓の生活が成るようにと老中へと掛け合いに赴くが、勤皇の中村半次郎と気脈を通じていることを、藤兵衛が老中に進言。ただでさえ自分に刃向う次郎吉をよく思っていなかった老中は、詮議もなしにあっさりと打ち首獄門にしてしまう。その上、一家は解散、家も明け渡しさせられることに。親分の無念を晴らそうと決起にはやる若い衆たちをなだめ、一家の大黒柱でもある堀の内の喜三郎は、今はまだその時ではないと、親分の仇討を誓い、一家を解散させる。
面白い。面白すぎる。こんなにもしっかりと忠臣蔵なぞってるとは思いませんでしたよ。忠臣蔵お決まりの物語がシンクロするたんびに爆笑しそうになっちゃったよ。城明け渡しに、義父から仇討をしないなんて!と罵られる勝田新左衛門風なのもあるし、姐さんが、尼さんになっちゃって遥泉院風になってるし、おまけに別れの挨拶にきて、他の一家に世話になることになりました・・・なんて大石さんの行動そのまんま(笑)。もひとつそのまんまなのが、垣見五郎兵衛のシーン。この作品では大前田英五郎が垣見五郎兵衛に見立てられてるんですが、あんたが本物ならそのための書付を持っているはずだと言われ、血判状を見せるのも、まるまる忠臣蔵です。これ脚本書いてる間楽しかっただろうなぁ(笑)。映画としての出来云々は、微妙・・・な感じなんで、名作とは言えないでしょうが、このお遊び精神や良し!って感じですね。 しかし、この作品最初に名和さん登場で「えっ!?なんで?」って思っちゃいましたよ。どうも名和さんって東映!ってイメージなんで、大映作品で見る名和さん、なんか不思議でした。あ、あと討入人数が50人くらい・・・というアバウトなのが、妙に私のツボに入ってしまった。最後の人数さすがに数えてないんですが、案外しっかり47人にしてたんじゃないかな?今後、CATVか何かで放映されるようなことがあったら、しっかり録画して数えてみたいものです。

2007年7月16日(京都みなみ会館)

BACK

『座頭市血煙り街道』(1967年/大映)

監督:三隅研次。
出演:勝新太郎。近衛十四郎。高田美和。朝丘雪路。伊藤孝雄。

市はたまたま宿で相部屋になった母子の、病んだ母親の死に目に立ち会う。そしてその母は死に際に、息子の良吉を前原にいる良吉の父親庄吉のもとへ連れて行って欲しいと頼まれる。途中、旅の一座と知り合い道中を共にする市は、そこで一人の浪人赤塚多十郎と知り合う。その後、前原宿へとたどり着いた市は、庄吉が働いていたという窯へ行くが、庄吉は一年ほど前から行方知れずだという。庄吉はやくざの権造一家の賭場に出入りしていたと聞いた市は権造一家を当たるが、そこで市は、再び赤塚と出会う。彼もまた何かを探っていたのだった。やがて市は庄吉が権造の手により軟禁されていることを知り、彼を助け出そうとするが・・・。
座頭市シリーズの中の傑作のひとつらしい。しかし、まぁこの良吉ってガキがなんとも言えず憎らしいんだ(笑)。その憎らしさがまた、かわいくもあるんですけどね。で、この生意気で憎らしいガキと市との関係がいいんだ。市に意地悪したり、わがまま言ったりしながらも、良吉が市に母親の絵だと渡した絵が、市の似顔絵だったというシーンに生意気でかわいげのない良吉の本心が表れていて、うまいなぁ〜って思う。そしてその絵を見た庄吉は庄吉で、これはあなただとは言わずに、懐にその絵をしまうんだけど、ここにまた、父親としての嫉妬があるようで、短くさりげないシーンに大きな心の動きを描いていてすごくいい。こういうの三隅監督って上手いですよねぇ。 そしてこの作品の一番の見どころは、勝さんと近衛さんの決闘シーンなんですが、これはホントにマジすごい。時代劇史上屈指の名勝負と言われるのも大きく納得です。日本一の剣劇役者近衛十四郎に真っ向勝負の勝新太郎。もうすごい迫力です。早いし、重厚だし。もうこういう殺陣は二度と出来ないと言われるのも当たり前ですね。 近衛さんの使う刀は他の人のモノより長いと言うのは聞いていたんですが、今まであまり気付かなかったんですよね。ところが、この作品ではその長さがすごくよくわかる。それだけ真剣勝負のリアリティがあるからでしょうね。 それにしてもこの作品の近衛さんかっこいいわぁ。

BACK

『洲崎パラダイス 赤信号』(1956年/日活)

監督:川島雄三。
出演:新珠三千代。三橋達也。轟夕起子。植村謙二郎。河津清三郎。

所持金もなく、あてもなくふら付く義治と蔦枝。そこで蔦枝は、洲崎まで行き、「洲崎パラダイス」の入口前に「女中の入用」の貼り紙をした一杯飲み屋"千草 "をみつけ、そこの女将お徳に職探しを頼み、蔦枝はお徳の店で働くことになり、義治は千草に近いソバ屋で働くことになる。ところが、元は遊廓にいた蔦枝の奔放な客あしらいが気になって義治は一向に仕事に身が入らない。おまけに蔦枝は、その義治のだらしなさに苛立ちがつのり、とうとう義治を見限り千草の客で羽振りのいいラジオ商の落合の元へ。一方千草の女将お徳の数年前に洲崎パラダイスの女と出て行った亭主がふらりと舞い戻ってくる。元の暮らしに戻る千草の夫婦。そして義治も必死に蔦枝を探すも、諦めて千草に戻り、お徳に意見されたことで堅気の暮らしをと、真面目にソバ屋で働きだすが・・・。
どうしようもない男と女の物語・・・かな?(笑)。でも考えるに、結局男と女ってこうなのかなぁ〜って気がする。理屈じゃないんでしょうね。最初は全然覇気のない義治になんで蔦枝はいつまでもくっついてんの?って思うんだけど、蔦枝のキャラを見ていると義治がこうなるのも仕方ないって気がしてくるんだから、この演出は上手い。情の深い女たちと気が良すぎるんだか、だらしないんだか・・・そのあたりの線引きの難しい男たち。描き方によると、結構ドロドロっと濃い物語になりそうな内容を、なんともあっさりと手際よく描ききった作品ですね。こういうのをあっさりとかわせたこの時代がうらやましい。新珠三千代さんって、テレビドラマの楚々としたイメージしかなかったんで、こういうはすっぱな役がすごく新鮮に感じましたよ。いつでも上目使いで情けない三橋達也さんも目新しくってよかったな。悪い親分じゃない河津清三郎さんも新鮮だった(笑)。

2007年9月10日(CATV録画)

BACK

『斬る』(1962年/大映)

監督:三隅研次。
出演:市川雷蔵。藤村志保。万里昌代。柳永二郎。天知茂。

小諸藩士高倉信右衛門の息子高倉信吾が、三年の旅を終えて小諸へ戻ってきた。 あたたかく迎える父信右衛門と妹の芳尾。そして藩主牧野遠江守も、信吾を寵愛していた。実は信吾は高倉信右衛門の実子ではなかった。信吾の実母は山口藤子という飯田藩江戸屋敷の侍女で、城代家老安富主計の命をうけて藩に害をなしつつあった殿の愛妾を刺し、処刑送りとなる所を1年もすれば藩主の怒りも冷めるであろうと、城代家老安富主計は、長岡藩の多田草司にすべてを打ち明け、逃亡させたのだった。そして一年、二人の間には信吾が生まれたが、藩主の怒りは解けず藤子は夫である多田草司の手によりこの世を去った。その不幸な運命の子信吾を哀れんだ遠江守公は、彼を高倉家の養子として迎え入れさせたのであった。しかし彼が三年の旅で会得した剣技が、彼をまた不幸な運命へと導くことになる。
物語は全く救いのないお話である。これ主役が雷蔵さんではなく天知さんだったら、それこそ悩みまくって、苦悩だらけの『地獄』のような状態になってしまうのでしょうが、そこは、劇画タッチの天知さんとは違うあっさり風味の雷蔵さん。苦悩しつつも、自らの運命を受け入れてしまうさわやかテイストも醸し出して、さすがの演技です。千葉道場主栄次郎により推挙され幕府大目付松平大炊頭の元に仕えるようになった信吾が、松平大炊頭に父のような安らぎを感じたような茶室での表情がすごくいい。これにはその劇画タッチの天知さんのご出演なんですが、これまたいいんですよねぇ。悩まないのが(笑)。もうすべてを運命と受け入れちゃってるもんだから、珍しくさわやかなんですよ(笑)。私はこれはレンタルで一度観ているんですが、この写真のシーンの微笑みあう二人を大きなスクリーンで観たい。ってだけで京都くんだりまで出かけちゃいました。好きだなぁこのシーン。 とにかく物語は本当に救いようがないくらいに不幸な話です。だけど、様式美で持っていってるもんだから、全編通して美しい。もっと大きなスクリーンで観たいもんです。

2007年9月30日(京都文化博物館)

BACK

『婦系図』(1962年/大映)

監督:三隅研次。
出演:市川雷蔵。万里昌代。船越英二。三条魔子。木暮実千代。

帝大教授酒井俊蔵の元で書生をする早瀬主税は、少年の頃スリを働き、酒井に捕まったことで、彼の家で立派な教育を受け、ドイツ語の学士となる。先生の家を出ることをきっかけに恋仲だった芸者お蔦と暮らし始めるが、お蔦が芸者であった身をすべて忘れ、世間の妻女たちのような所作を身につけたら、酒井先生に打ち明け、本当の夫婦になると酒井には内緒の世帯だった。ある日酒井の娘妙子に一目惚した主税の友人である河野が、自らの家系をひけらかし、議員を使い酒井家に縁談を持ちかけるが、酒井は娘のことを一番知っている早瀬主税が決めることだと主税に一任する。その主税は出入りの魚屋めの惣から、河野の母が馬丁と密通し、子までなしていたことを聞いていたために、この話を断る。しかしそれを根に持った河野により、スリの一味であるというスキャンダルに陥れられることになる。
『婦系図』の原作は全然知らなくって、新劇やなんかの「別れろ切れろは芸者の時に言う言葉、今の私にはいっそのこと死ねとおっしゃってください」ってな有名なセリフの湯島天神の場面だけ知っていた。だから、これは完全に悲恋モノなんだと思いこんでたんですよねぇ。それと、その前にこれの新東宝版『婦系図 湯島に散る花』を観てるんですが、これがまた悲恋モノですよぉ〜ってのを全面に出したような作品だったので、この作品にはあまり期待してなかったんですよ。 ところが、早瀬主税が元スリ?この地点でびっくりです。そしてお蔦と別れることになった後の主税の行動にこれまたびっくり。え?復讐ですか?すごい。なんて深い物語なんだ。おまけに酒井の娘妙子の実の母親がお蔦の姉芸者である小芳だということで、たまたまお蔦を訪ねてきた妙子と、対面することになる小芳の今まで会うことの叶わなかった娘を目の前にしての喜びと悲しみ。このシーンがすごくいい。お蔦が妙子から半襟をもらったことを本当にうらやましそうにする小芳に、ごめんなさいね。気を悪くなさらないでね。とお金を包み渡す妙子。そしてそのお金を心から喜ぶ小芳。もうこのシーンだけで三益愛子の「母」シリーズ一本分です(って「母」シリーズ見たことないですが・・・)。 なんでもこのタイトル『婦系図』って言うのは、主税を陥れる河野家が、妙子の出生やら家系やらのことをとやかく詮索することを指してるそうで、悲恋がメインの作品ではないらしい。 で、調べてみると、悲恋をメインにする作品名は大抵『婦系図 湯島のなんとか・・・』って『婦系図』だけでは終わらないようですね。 これ、ホントだったら「悲恋モノ」って思い込んでたから、観ることなかったんですが、偶然、絶対に観るぞと思ってた『眠狂四郎無頼剣』との2本立てだったんで、観ることが出来たんですよね。そう考えると思いこみで観ないってのはダメだなぁ。とつくづく思います。いい映画を一本見損なってるとこですもんね。

2007年10月15日(千日前国際シネマ)

BACK

『眠狂四郎無頼剣』(1966年/大映)

監督:三隅研次。
出演:市川雷蔵。天知茂。藤村志保。工藤堅太郎。島田竜三。

ある日油問屋弥彦屋に、一人の賊が押し入る。弥彦屋の末娘とかくれんぼに興じながら、目当ての油精製の図録を盗み出したのは、この図録を書いた大塩忠斉親子を信奉する大塩の乱の残党の首領愛染であった。かつてこの弥彦屋は大塩忠斉親子の義挙を助けるかのように近づき、まんまと図録を奪い大塩親子を幕府に売ったのだった。その弥彦屋と、老中水野忠邦への復讐に動く愛染一味。そして弥彦屋に利用され復讐を誓う、勝美という女芸人。大塩忠斉の息子格之助に似ていたことから、狂四郎は二組の復讐者たちと関わることになる。
実は私、この「眠狂四郎シリーズ」ってあんまり好きじゃないんですよね。と言っても見たことがあるのは、『眠狂四郎多情剣』だけなんですけど。なんかねぇ、くら〜いイメージがあって、どうも観る気になれないんですよ。それに、私クールガイは好きなんですが、主役がクールガイだとダメなんですよね。クールガイには脇で「フッ・・・」って笑ってて欲しいと思うのであります(笑)。 だけどこの作品は天知さんが敵役で、雷蔵さんがどっちが主役だと怒ったっていうほどの作品だということで、レンタルで観たんですが、どっぷりこの作品に魅せられてしまいました。確かにどっちが主役だ?と言われても仕方がないくらいに、天知さんの愛染がいい!クールガイはやはり脇ですよ。 で、その超絶にかっこいい愛染がスクリーンで観られる!なんてことをみすみす見逃すわけもなく・・・行って参りました。いやぁ、やっぱいいですわ。 しかもこの作品、二人のニヒリストの対決なもんだから、クールな狂四郎が、ちょっぴりホットになってるのも、案外私にはいいのかも・・・って気がします(笑)。 私はラストの屋根の上での対決シーンで、拳銃を懐に入れる際に、弥彦屋の末娘に渡しそびれたおもちゃに手が触れ、一瞬戸惑う愛染@天知さんにもうクラクラです。あぁ、何度もいいますが、大きなスクリーンで好きな作品が観られる。これがやっぱり一番うれしいですねぇ。

2007年10月15日(千日前国際シネマ)

BACK


ホームに戻ります。