役立たずの英国製爆弾探知機                              岡森利幸    2010/3/1

                                                                    R1-2010/3/8

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2010/2/22 国際面

爆弾テロが続くイラクで、イラク内務省が大量に購入した英国製の「爆弾探知機」が、実は機能しない欠陥品であることが分かり、当局が調査に乗り出す事態となった。

専門家「機器の中は空っぽで役に立たない代物だ」

問題の探知機は、英国ATSC社が製造したADE651。アンテナが付いた小型携行用で、対象に近づけて「爆発物や銃弾などを探知する」(同社による)と作動する仕組みだ。しかし、英BBCの調査報道により、爆弾を探知する機能がないことが判明。この製品はパキスタンやアフガニスタンなどの紛争地帯でも使われており、輸出先は約20カ国に及ぶとの情報もある。英政府は1月下旬、この製品の輸出禁止措置を発表。英ATSC社のジム・マコーミック社長(53)を詐欺容疑で逮捕した。

イラク内務省は08〜09年にかけ、1500台を約8500万ドル(約77億円)で購入。1台当たりの製造コストは約250ドル(2万2300円)とされるが、イラク側の購入価格は最大6万ドル(535万円)と、利潤が極端に大きい。

バグダッドの住人の一人「役立たずの機器を買って国民の生命を軽視した」と、国民からも強い反発が出ている。

 

タイでも、英国の別メーカーの探知機の性能を巡り、論議が起きている。タイは04〜09年にかけ、700台以上を計約2100万ドル(約19億円)で購入。イラクでの「欠陥品」騒ぎを受け、タイ政府は性能検査を実施した。アピシット首相は、検証結果を公表し、「犬のほうが優秀だ」と発言した。それでも、まだ「多くの爆発物を発見した。その性能は高い信頼を得ている」と反発する陸軍には、性能実験を実施していないことや調達に絡む不正があったことの疑惑が浮上している。

新聞紙上には、記事とともに問題の製品の写真が載っている。イラク人警官が、右手でピストル型の「アンテナ部分」をもち、本体部分をズボンのポケットに収納している(写真からではまったく見えないが、さほど大きいものではない。おそらくバッテリー)。それら二つの部分の間はケーブルで接続されている。これがどんな原理で、爆弾を検知するのだろうか。

おそらく、金属探知機の仕組みと似たようなもので、電波を発射し、その反射状況を解析し、爆発物と判定するものだろうが、私から見ても、その効果や精度はかなり疑わしい。爆発物の成分を電磁波で判別できるものだろうか。火薬の種類によっては、まったく感知できないケースもあるだろうし、何でもないものまでも爆発物と誤認してしまうケースもありそうだ。的確に判別できるとすれば、そうとう高度な科学技術だろう。あるいはトリック(いんちき)の(たぐい)だろう。ほんとうに高い確率で探知できるものであれば、「さすが、イギリス製」ということになったのだが、結果的に、このしろものは後者のほうだった。

イラクやタイが役立たずの機器を購入した理由の一つに、「調達に絡む不正」があるという。つまり、調達のために巨額な金が動くのに伴い、製造元、販売権をもつ代理店・商社や、政府機関・購買部門で、相互の「思惑と利得」により、不当な取り引きが行われていたというのだ。このような特殊な機器では、特に、利権が生じやすい(裏金も動きやすい)。利権が販売価格をふくらますことになる。それにしても、製造コストが250ドルのものを、6万ドルで売りつけたのだから、ひどすぎる暴利だ。通常、そんな製造コストは企業秘密になっているものだが、製品がインチキなものだとわかったから、警察の捜査で明らかにされたのだろう。

コスト・パフォーマンスから言えば、最低の製品だったわけだ。英国ATSC社は、爆弾の恐怖に震える人びとの国に暴利のイカサマ商品を売りつけたのだから、悪徳業者の最たるものだろう。

このような製品は一般向けでないから、製品化するための「工業規格」や審査体制は、無きに等しいようだ。このような製品を購入した側にも問題があるにしても、輸出を許可した英国政府にも責任の一端があるだろう。イラクの人びとに英国がますます嫌われそうだ。英国政府がグルになって悪徳企業の金儲けを支援したと思われてしまうのだ。

 

 

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        身なりと態度の悪さで謝罪させられた国母