ワールドカップの興行成績                                   岡森利幸   2010/7/27

                                                                    R1-2010/7/30

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞夕刊2010/6/17国際

オランダ美女軍団を「ゲリラ宣伝」として警察当局が2人を拘束。

読売新聞朝刊2010/6/19社会

無許可でパプリック・ビューイング(PV)実施の山梨のホテル、国際サッカー連盟(FIFA)に中止を求められた。

1000人未満の会場で、営業利益を得てPVを行う場合、ライセンス取得料32万250円を支払う必要がある。

今回、南アフリカで開催されたサッカーのワールドカップ大会に関しての末梢的な記事を引用した。その二つについて解説を加えよう。

@ オランダ美女軍団の拘束

私は彼女たちに同情したい。FIFAとスポンサー契約した会社のライバル会社が資金を出して美女たちにボディーコンシャスな服を着せてオランダチームを団体で応援させたというのが真相らしいが、それがライバル会社の宣伝行為とみなして美女たちを現行犯逮捕的なことをさせたのには、行きすぎだろう。FIFA側はそれを「ゲリラ宣伝だ」といきまいたが、何を宣伝したというのだろうか。

ライバル会社のロゴや宣伝の横断幕を見せたわけでもなく、彼女たちは、ミニスカートで目立っていた応援団の一つという以上のものではなかった。刑法に触れるようなことでもないのに、警察が動いたのは、FIFAによる警察への政治的な圧力があったからだろう。彼女たちは、犯罪者のごとく警察に拘束され、取調べを受けたのだ。その後、無罪放免されたとしても、不快な思いをしたことだろう。

非スポンサーの企業が金を出して応援団を会場に送り込んでいる――という情報をかぎつけて、FIFAが敏感に反応したのだ。

A 無許可でホテルがPV実施

ホテル側は、ホテルに来た客に大型テレビでサッカーの試合を見せることに、ライセンスが必要とは思っていなかった節がある。客をホテルに呼び込むため、あるいは客へのサービスのつもりだったか、または、日本チームの応援のために「できること」をしようとしただけなのかもしれない。しかし、ホテルがパプリック・ビューイング(PV)の主催であれば、ホテルの利益のためにPVをしたとみなされても仕方がない。それが発覚したあとは、FIFA側(FIFAに一任された代理店)は見せしめのように、そのホテルには許可を与えず、PVを中止させた。FIFA側はそうしたことをメディアにリークして記事にさせ、PVは有料であることを世間に知らしめたのだろう。FIFA側は、PVを行おうと客を集めている業者が許可を得たものかどうか、全国くまなく眼を光らせていたのだ。

「パプリック・ビューイング」は、大勢の人を収容できる会場で、大画面のテレビやスクリーンに映し出された試合の映像を観戦することだ。実際の会場の入場券を得られなかった人が仕方なく足を運ぶ場所というより、今時のテレビは高精細で見やすく、臨場感が増しているから、実際の試合を観戦するの近い感動が得られるといってよい。日本でも、いくつかの会場でPVが開催された。どこも盛況だったと伝えられた。もちろん、すべて有料での観戦だ。PVを行う運営者は、FIFAにそのライセンス料をまとめて支払わなくてはならない。単に大型テレビを大勢で見るという感覚からすれば、それは高額の料金を支払わなくてはならないのだが、それでも見たいというファンが多くいるのだ。PVは、FIFAに高額なライセンス料を払っても、採算が取れそうだ。

 

「スポンサー料も払わずに、サッカー場内で企業がかってに宣伝してはまかりならぬ」

「ライセンス料も払わずに、業者が客を集めてサッカーの試合を大型テレビで見せてはならん」

というFIFAの強いビジネス意識の一面が表れている。スポンサー契約せずに、便乗して宣伝行為をしようとする者たちや、ライセンス料も払わずにテレビ放映するものたちには、神経をとがらし、にらみを効かしているFIFAの姿が見えている。人々がお祭り騒ぎしている水面下で、チケットの販売から、放映権、サッカー会場の広告看板に至るまで、派生的な商売を含めて、いっさいのビジネスを取り仕切り、売り上げの何パーセントかを確実に徴収するシステムを作り上げているのだから、FIFAの権力はたいしたものだ。その権益が損なわれる行為があった場合は、断固対処するするのがFIFAの方針だ。世界的なスポーツの祭典が、その実、商業主義に徹した興行であることに、私は思いを強くさせられる。

国と国がその名誉と威信にかけて、勝ったら英雄、負けたら国賊として何を言われるかわからない緊張の中で、全身汗まみれになってプレーしている選手とその監督・コーチと、熱心に応援している観客たち……その裏で、徹底した金儲けのために組織された団体が牛耳っている構図があるのは、興ざめである。スポーツ大会が、興行としての存在価値をもち始めたのは昔からのことで、FIFAだけでないのはもちろんだ。サッカーでの複数の国の対立構造が、それぞれの人々の愛国心を煽り立て、選手たちと一体になった感情を燃え上がらせている。そのエネルギーを集金力に変えているのがFIFAだ。金がないと、世界的な大きな大会は開催できないのだから、金を集める団体の存在理由があるのだろうけど、FIFAの集金力は格別だ。

つまり、FIFAとは、「サッカーの試合を見たけりゃ、金を出しな」、「便乗して商売したけりゃ、『ライセンス料』を払いな」とすごみをきかせている団体なのだ。FIFAは、テレビの放映権料だけでなく、パプリック・ビューイングのライセンス料も徴収するから、ワールドカップ大会を開催することは、やめられない商売になっていることだろう。熱心な観客がついているスポーツの興行ほど、割のいい商売はない。(私には、やっかみに似た感情がわきおこる。)

「ただで世界的なスポーツの試合を見よう」とする方が、あつかましいのかもしれないが……。

 

 

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