天皇を政治利用した小沢一郎 岡森利幸 2010/1/9
R1-2010/2/4
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞朝刊2009/12/15 一面、政治、総合面 小沢一郎幹事長は14日、党本部で記者会見し、天皇陛下と中国の習近平副主席の特例的な会見を巡り、天皇陛下の「政治利用」に懸念を示した羽毛田信吾・宮内庁長官の発言について「内閣の一部局の一役人が、内閣の方針をどうこう言うのは、日本国憲法の理念を理解していない。どうしても反対なら、辞表を提出した後に言うべきだ」と厳しく批判した。 「(一カ月ルールは)誰が作ったのか。宮内庁の役人が作ったから、金科玉条で絶対だなんて、そんなばかな話があるか」と不快感を表明。 小沢氏がこの会合を政府側へ働きかけた可能性が指摘されている。この指摘に関し小沢氏は、「政府が決めることだ。私が会わせるべきだとか、お会いさせるべきでないとか、言った事実はない」と述べ、自らの関与を否定した。 |
毎日新聞朝刊2009/12/17広告欄より 週刊文春……「俺のメンツをつぶす気か」(小沢氏が)首相に命じた恫喝電話。 週刊新潮……天皇陛下を中国共産党に差し出した「小沢天皇」の傲岸。胡錦濤国家主席への忠誠心を示した「官邸恫喝」 |
毎日新聞朝刊2009/12/19 オピニオン面『天皇と外交儀礼』 中国側からどのくらい強い要望があったかは知らない。ただし外交儀礼へのこだわりは、多くの国が経験している。 |
毎日新聞夕刊2009/12/19 牧太郎の大きな声では言えないが…『ああ、嘘は品格!』 小沢氏は記者団に「(4日には)私は鳩山首相にはあっていません」と言い張ったが、 鳩山首相は記者団に追及されると、「お会いしました」。すぐばれた。 |
天皇が政治利用されることに関して、議論がわきおこった。考えてみれば、歴史的に天皇はその時代に政権を握った人たちによっておおいに利用されてきた。天皇の存在理由は、政治利用が可能であることが最も大きいのだ。天皇に政治権力はなくても「ご威光」があり、庶民はその畏れおおい存在にひれ伏してきた。天皇を味方につければ、いつの世も政権は安泰だった。
12月14日の記者会見では、小沢氏は、「政治利用しているのか」を質問した記者の一人に対し、すごい形相でにらみつけたという。小沢氏の逆鱗に触れたのだ。「政治利用」の発言について、これほどまでに怒ったのは、批判に対する反発心からだろう。天皇を政治利用しようとしたことを一官僚にすばり指摘されたことへの憤りも、怒りになった。この会見に関して宮内庁長官が政府からの要請を断り続けたことで、自分の思うようにならなかったいらだちが怒りを激化させたせいでもあろう。
小沢氏自身は、「私が会わせるべきだとか言った事実はない」などと否定しているが、それは、白々しい「うそ」の類だろう。小沢氏は言い方を否定したのであって、記事にあるように「自らの関与を否定した」わけではない。つまり、小沢氏が内閣に会見を要請したことは、断定できる事実なのだ。小沢氏は、おそらく「副主席を陛下に合わせてやってくれ」などという言い方をしたのであって、「会わせるべきだ」という言い方ではなかったというだけのことだ。
そこでは、天皇の「国事」についても議論を起こしたが、外国の要人を公的に歓待することは、国事の一つとは言えないそうだ。「日本国憲法の理念を理解していない」のは、小沢氏の方だったというオチがついた。
今回の騒動の引き金は、小沢氏が政府にゴリ押ししたことだ。天皇の会見の予約は一カ月以上前に入れるという「一カ月ルール」を無視して中国副主席との会見を、政府を通して申し入れたが、そのルールをたてにした宮内庁は再三断った。業を煮やした小沢氏が鳩山由紀夫首相に直接電話し、「俺のメンツをつぶす気か」と恫喝したという。「権力者」の小沢氏に恫喝されて、おそれをなした内閣が宮内庁を押し切り、ようやく会見にこぎつけた。それを、小沢氏は「政府が決めることだ」と、自分は関係ないように言い張っているが、実際は小沢氏が決めさせたことなのだ。
今上天皇の体調がすぐれないことは、前から言われていたことだし、宮内庁としては、天皇の公務をなるべく制限したいところだろう。その天皇が「開発途上国」の副主席ごときと緊急に会見する必要性は、宮内庁としては、ないと判断したのだろう。会見の内容にしても、社交辞令を交わすだけの空虚なものに終るのが関の山だろう。その要請は、官房長官の平野氏が行い、小沢氏の名前は出されなかった。政府側は何度も要請し、鳩山首相の名前を出すようになって、宮内庁はしかたなく会見を了承したという経緯が知れ渡っている。ロコツな政府首脳部のゴリ押しに対し、宮内庁長官は、くやしまぎれに「安易に、天皇を政治利用するな」という意味の苦言を呈したわけだ。
小沢氏はそのとき、「一カ月ルール」も知らなかったし、宮内庁の官僚が政府の要請を断るなどとは、夢にも思っていなかったふしがある。中国側から、正式な要請はなかったとされるが、おそらく、小沢氏が11月に、その権勢を誇るがごとく、大勢の議員団を引き連れて中国を訪問した際、中国側が小沢氏に天皇の会見を口頭で要請したのだろう。小沢氏は、「そんなこと、お安い御用ですよ」などと安請け合いしたわけだ。
中国側として、次期主席と目される副主席を日本に行くついでに天皇に会見することには、副主席にハクをつけるために、それなりに意味があったのだろう。日本との交流のためというより、中国国内に向けた「外交儀礼」の一環としてのポーズだろう。天皇は副主席の「引き立て役」にされたのかもしれない。
そこまで政府に圧力をかけた小沢氏の実力は、たいしたものかもしれない。それを政界の一部では、「リーダーシップを発揮している」という言い方をする向きもあるのだが、こういう人が影でリーダーシップを発揮するのでは、政治がますますおかしくなりそうだ。
議員案件の優先度