議員案件の優先度 岡森利幸 2010/1/17
R1-2010/1/18
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞朝刊2009/6/1 社会面 障害者団体向け割引制度が悪用された郵便不正事件で、厚生労働省傷害保健福祉部の元部長が、障害者団体「凛の会」(解散している)の証明書発行について国会議員から要望を受けていたことが取材でわかった。 元部長が「議員案件」として当時の企画課長らに対応を指示していたことも判明。厚労省が組織的に不正に関与していたかどうかが、今後の捜査の焦点になりそうだ。 元部長は「凛の会」の案件を、最終的には証明書発行や審査を担当する企画課社会参加推進室に「議員案件」として回したとされる。 この国会議員の事務所はこれまでの取材に「(口利きなどの依頼は)一切ない」と関与を完全否定している。 |
「議員案件」として、怪しい団体の証明書を発行し、審査にもパスさせることが現実に厚生労働省で行われていたという新聞社の取材結果には、驚いている。郵便不正事件の元凶が厚生労働省にあった?
厚生労働省の職員がそんな怪しい証明書を発行したら、公文書の偽造として罪に問われる可能性があるから、かなり危険を伴う作業のはずだ。それは組織でカバーしてしまうのだろう。書類が整っていれば、内容はどうでも、判を押してしまう……。そうすれば、チェックする手間も省けるというものだ。そんな職務上のルール違反の危険や良心の呵責があったとしても、「議員案件」の前には無力なのかもしれない。何よりも優先される「議員案件」は、たいしたものだ。「議員案件」は厚生労働省だけの専門用語ではなく、国土交通省、農林水産省……にも「通用する言葉」だろう。それらには許認可権があるだけでなく、公共事業や助成金など、民間企業が欲しがる多くの予算が配分されている。
政治家の顔色をうかがう官僚の姿が、「議員案件」という言葉で浮かび上がる。議員、特に与党の議員からの要望を聞き入れていれば、省庁は見返りが期待できるのだろう。個別の省庁だけでなく、公務員全体の利得になるという読みもあるはずだ。政治家による政治的配慮によって、退職した官僚の天下りの規制にしても、甘くしてもらえるし、公務員年金も余分に加算してもらえる……かもしれない。
その「口利き」が行政側に受入れられれば、政治家の先生としても、その成功により利得が生じる。依頼した側の企業・団体から、献金や選挙の投票をしてもらえるという見返りが期待できるのだ。
誰よりも、利得があるのは、その団体だろう。庶民としては、自分の生活をよくしようとするなら、「実力」のある政治家に取り入って陳情することが、やはり一番の近道になるのだろうか。ただし、手ぶらではいけない。
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