滝行少女の死                                            岡森利幸   2011/10/2

                                                                  R1-2011/10/3

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2011/9/27 社会面

熊本、顔面に流水の中2少女窒息死、父と僧侶を障害致死容疑で逮捕

滝行と称し、固定した椅子に座らせていた。

この記事だけを読むと、よくある子供虐待のケースの一つと思えるが、他のメディアをも参照し、状況を調べると、母親を含めて両親は少女の病気治療のために祈祷を受けさせながら流水を頭からかけていたことがわかる。少女になぜ滝行させたか、動機がわからないと、理解に苦しむことになる。今年の3月から、嫌がる少女を無理やり100回も滝行させていたというのだから、りっぱな虐待であることは確かだが、病気を治そうと思う親の気持ちは、少しは同情に値する。

少女は幼いころから「心身の病」にかかり、今年の2月ごろ精神的に不安定になり、学校にも行かなくなった。そこで、おそらく悩んだ末に両親は「宗教的治療」にすがりついたのだろう。3月から滝行をさせ、それを約半年続けたという。100回もやって効果がなければ、あきらめるところだが、逮捕された二人は、さらに過激になって無理な滝行させたことがうかがわれる。

流水を顔面に当たるように仕向け、結局、窒息死させたのだ。滝行は頭の後ろから水に打たれるようにするものなのに、顔面にかけたら、息を吸うたびに水が肺に入ってしまうことぐらい、考えられそうなものだが……。身動きできない状態で、水(井戸水という)を頭からかけたのだから、拷問のようなものだろう。あるいは、中世の魔女狩りをも連想させる。彼らは学校へも行かなくなった少女を夜昼となく滝行の部屋に連行しては水をかけ続け、その悲鳴は近所にも聞こえていた……。そんなことをしていたら、たとえ、娘の病気が治ったとしても、一生嫌われそうだ。

 

山歩きをすると、私もときたま、渓流沿いに滝行の場を見かけたりして、滝行は健康によいことかもしれない、と思ったりするのだが、万病に効くとは思えないし、マッサージ的な効果があったにしても、限定的だろう。温泉につかるのと、同じ程度の効能はあるかもしれない。しかし、科学的な根拠や、統計的に滝行がよいというデータがあるとは聞いたことがないから、私などは、冷たい思いをしてまで滝に打たれたいとは、とても思わない。

ただし、暗示効果やプラシーボ(プラセボ)のように心理的に治療効果が上がったり、偽の薬でも効果が現れたりするので、ぜんぜん無意味とも思わない。効果の有り無しは、宗教的な判断になってしまう。つまり、客観的には断じることはできなくても、心の中の思い込みによって、本人がよくなったと思えるならば、それでいいのだろう。

その少女に対しては、同時に行われた祈祷も無意味だったことも、一つの悲劇だ。祈祷では、代替医療(ホメオパシー)にもなりえない。ただし、宗教的治療をすべて否定することもできない。宗教が人間の心理的作用とうまくかみ合って心身をいやす効果をもっているのも確かであり、健康を主眼にした宗派も存在し、それなりに栄えている。

ともあれ、娘を水責めした父親に、ヘンな熱意はあったにしても、悪意はなかったことを信じたい。

 

 

一覧表に戻る  次の項目へいく

        川島にフクシマ・コール