川島にフクシマ・コール 岡森利幸 2011/10/2
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞朝刊2011/9/21 社会面 サッカーのベルギー1部リーグ、ゲルミナルのファンオペン会長は、川島永嗣選手を訪れ、ゲルミナルの一部サポーターが川島選手に対し「フクシマ」と連呼したことを謝罪した。ベルギー・サッカー協会は公式の謝罪と罰金3万スイスフラン(約260万円)支払いを命じていた。 |
8月19日に行われたベルギーリーグ第4節のリールスとゲルミナルとの試合で、ゲルミナルのファンが観客席から、リールスに所属中のゴールキーパー川島永嗣に「カワシマ!フクシマ!」などとヤジを飛ばしたことが大問題になった。一部のファンがやったことなのに、サッカーチームの会長が、見せしめのごとく、謝罪させられ、高額な罰金を払わせられるはめになっている。
サポーターたちが相手チームの選手をからかったり、はやし立てたりする行為そのものが悪質なわけで、特に、選手が激怒したりすると、それを引き起こした側に、かなり厳しい罰が課せられるケースが多い。今回では、そのからかいの言葉が「フクシマ」だったというのは、考えさせられる。ヨーロッパで「フクシマ」が日本人を愚弄する言葉として認定されたわけで、「フクシマ」が差別用語の一つになったかのようだ。
――試合の途中、スタジアムの観客席から、大勢が唱和する声が響き渡った。
「カワシマ!フクシマ!」――「カワシマ!フクシマ!」――「カワシマ!フクシマ!」……
スポーツ観戦のスタジアムでは、よくある「応援コール」(チャント)だ。ただし、観客が敵側のチームの選手に声を発する場合、時には辛らつになる。この「フクシマ」が問題だった。川島永嗣は「日本」という共通項でくくられているだけで、「フクシマ」とは関係がないけれど、「カワシマ」と「フクシマ」は語感が似ているために、語呂合わせでヤジられたのだ。
このとき、〈川島は激怒し、ファンと審判に猛抗議した。試合は一時的に中断した。試合後にも川島はロッカールームで涙を流していた〉と伝えられている。
「フクシマ」とは、4基の原子炉設備が次々に水素爆発を起こして建屋の屋根を吹き飛ばし、あるいは炉内がメルトダウンしてしまい、旧ソ連のチェルノブイリと肩を並べるほどの大事故を起こした福島第1原子力発電所を意味する。いまや「フクシマ」は「チェルノブイリ」と同列の、世界的な悪名高い地名になっている。その原発はそこらじゅうに放射能を撒き散らしてしまったから、「フクシマ」とは放射能汚染の代名詞にもなっているのだ。
普通のヤジには慣れていて何とも思わないはずの川島がこれに激怒した要因の一つには、「オレは放射能に汚染されていないぞ。そもそもオレは福島県人ではない。一緒にするな」という意識が彼の心に上ったからだろうと私は勝手に推測している。「フクシマ」とののしられたことが、福島が侮辱されたというより、彼自身が侮辱されたように聞こえたから、怒り狂ったのではないかと考える。そんな意味のことは一言も彼は口に出していないが……。彼自身は埼玉県さいたま市(旧・与野市)の出身だ。もし、彼が福島県人だとしたら、そんなチャントにもじっとこらえていたのだろうと思える。怒りではなく、原発周辺の(死の町のような)荒廃した郷土を思い、悲しみがこみ上げる……。
ボルト痛恨のフライイング