湘南サーファーから利用料を徴収しようとする団体         岡森利幸   2010/6/15

                                                                  R1-2010/6/16

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞朝刊2010/6/10 地域面

藤沢市の鵠沼海岸で、海岸の利用ルールをめぐり、地元サーファー団体間で論争が起きている。漁協に「謝礼」を払うなどの独自のルール制定を目指す団体が設立され、同海岸を使用すると県に届け出たことが発端。新団体は漁協の支持を得ていることなどを理由に、他団体が海岸を使う場合は連絡するよう主張。これに対して既存の団体が「浜の私物化につながる」と反発している。

5月28日にNPO法人の認証を受けた「鵠沼の海を守る会」が、今年4月から11月にかけての土、日、祝日、鵠沼海岸を漁業振興のために使うとする「海岸一時使用届」を県に出した。趣旨に賛同する人にステッカーを販売するなどして資金を集め、漁業者に謝礼を払うとしている。

同会の理事長は「漁業権のある漁協に使用料を払うのは当然」とし、4月にサーファーら約50人に趣旨を説明し、賛同を求めた。

一方、全国組織の日本サーフィン連盟の支部を実質的に兼ねる藤沢市サーフィン協会は、「届け出だけで使用の実体がない。新団体が海岸を取り仕切り、使用料を集めようという意図としか思えない」と首をかしげる。

これまでは同協会が調整の上で、サーフィンの大会を開く団体が使用届けを出していた。

相模湾沿岸では県の主導で自治体ごとに「海・浜ルール」と呼ばれる自主的な決まりが設けられている。藤沢市では地引網操業中の赤い旗が立ったときにはサーフィン愛好者は船や網に近付かないようにするなどのルールを設けているが、漁協に謝礼を支払うかどうかは決まっていない。

鵠沼海岸は、千葉県の鴨川海岸などとともに「日本サーフィン発祥の地」とされており、論争の行方が他の海岸に影響を及ぼす可能性もある。

漁業振興のために金をサーファーから集めるという名目は、けっこうなことだ。「海・浜ルール」があったとしても、サーファーたちが赤い旗を無視して地引網操業のじゃまをすることも考えられるから、迷惑料としていくらか払うことは妥当なことかもしれない。しかしながら、ルールを守らないサーファーがいるのなら、ルールを徹底させるのが筋だろう。「謝礼」を出せば、いくらでもルールを破ってもいいことになってしまう。

ただし、鵠沼海岸での地引網漁は実質的に観光業だ。漁業の名のもとで観光客から料金を取って網を投入している人たちだ。そんな業者たちに「謝礼」を出したとしても、観光振興にはなっても実質的な漁業振興にはならない。

逆に、地引網漁がサーファーの楽しみのじゃまをしていることも事実だろう。相模湾は広い海岸だから、お互い、場所は時間をすみ分けて、共存するのが望ましいのだが、地引網の「観光業者たち」としては、観光客が多く集まりそうな場所と時間で操業したいのだろうし、サーファーとしても、土、日、祝日は余暇を楽しむために外せないことだろう。そこで、楽しむ側から金を徴収し、金で解決しようするという発想が生まれたようだ。

「鵠沼の海を守る会」の新団体が今年4月から11月にかけての土、日、祝日に県に使用届を出したのは、既存の団体としては納得できるものではないだろう。それまで、サーフィンの大会がある日だけ、使用届を出していたというのに、一つの団体がシーズン前からはやばやと土、日、祝日をすべて押さえるやり方は、専横すぎる。「新団体には使用実態がない」という既存の団体の言い分はもっともな主張だ。使用実態がないのに、「海岸一時使用届」を出したのだ。「海や浜を使用する」ためでなく、「海や浜を取り仕切る」のが目的のために「海岸一時使用届」を出したと解釈すれば、すべて説明がつく。鵠沼海岸に多く集まるサーファーから金をとりたい団体が「使用届」に目をつけたのだ。

届け出制度をいいことにして海岸を取り仕切り、おそらく、体格のいいお兄さんたちが、浜に出ようとしたサーファーを呼び止め、前後左右から取り囲みながら、「サーフィンしたけりゃ、ステッカーを買いな」とすごみを効かせることになりそうだ。「文句があるなら、藤沢市の地域振興課に言うんだな」

サーフィン大会を主催したい団体があれば、「われわれが先に使用届を出しているんだ。参加する人数を連絡しな。それに比例した分の『使用料』を出せば、使用していいんだぜ」ということになるのだろう。

NPO法人といえば、非営利法人である。非営利法人が、何の名目であれ、金を集めるとなると、営利につながりやすい。NPO法人が多数の人から金を集めることに、われわれはいかがわしさを感じなければいけない。

鵠沼海岸でサーフィンする人から集めた金はその団体の収入になり、金を徴収するために雇ったアルバイトに払う賃金や漁業振興のための「謝礼」など経費を差し引いた残りが、すべて団体の「可処分所得」になるのだ。その実質的な利益の大部分が、集金システムを構築した新団体の理事たちの報酬として懐に入ってしまうことがミエミエである。土、日、祝日に繰り出すたくさんのサーファーから金を集めれば、一人ひとりの分は小額であっても、集めれば相当な金額になりそうだ。りっぱな営利団体になる可能性がある。漁業振興のためと称して金を集めるやり方は、ほとんどxx(あなたには、当てはまる言葉を考えてもらいたい)である。

新団体は「4月にサーファーら約50人に趣旨を説明し、賛同を求めた」というが、その説明に賛同したサーファーが一人でもいただろうか。その場での反対の声はなかったとしても、多くは、その「とっぴょうしのなさ」から趣旨説明を聞き流していたものだろう。しかし、これが行政に対して「サーファーたちに説明した。質問には回答した。理解してもらった」という言い訳になるのだ。行政に認めてもらうために、かなり手の込んだやり方をしていることが伺える。「謝礼」をもらえる漁業者は、もちろん集金に反対しないだろう。「謝礼金」で漁業者を味方につけ、行政の通りがいいNPO法人の認可を受けるやり方は、相当に考えたものだ。

これでは、海や浜の「使用届」が、その利権を与えることになる。今年4月から11月にかけての土、日、祝日の海・浜が、一つの団体に使用されるとしたら、不公平そのものだろう。「使用届」は一時的なものだったのに、平日を除く常時使用されることになれば、それは「恒久的使用届」に等しい。それでサーファーから文句が出ないとしたら、おかしい。

そんな利権が幅を利かすようでは、サーフィンが健全なスポーツではなくなっしてまう。それが利権に使われないようにするためにも、行政は「海岸一時使用届」を、従来のようにサーフィンの大会開催を想定して一カ月に一度程度、取りまとめ的な団体ではない実質的な団体に認めるのが妥当なところだろう。当然のこと、使用実態のないような団体なら、届出を受理すべきでない。行政は、漁業振興のためというような、いかがわしい新団体の「口車」に乗ってはいけない。行政は、新団体が金を集めれば、少しは「おこぼれ」に預かれるとでも思っているのだろうか。

新団体は、行政の担当部署に「その金の一部で海岸を清掃しますよ」ぐらいのことを言っていそうだ。おそらく、サーファーは、帰りがけに、サーフボードに貼られた、いまいましいステッカーをひっぺがし、海岸にやぶり捨ててしまうだろうから、それらを回収するために清掃するわけだ。

 

 

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