サンゴの海の生態系を荒らす                                 岡森利幸   2009/11/19

                                                                    R1-2009/11/21

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2009/5/26 社会面

政府の09年版「環境白書」では、国内のサンゴ礁が与えている多くの恩恵のうち、観光・レクリエーションの提供が年2399億円、海産物の提供が年107億円、津波、侵食被害からの保護、年75〜839億円――と3項目で経済的価値を試算した。

毎日新聞夕刊2009/11/14 社会面・憂楽帳[「鬼」の進軍]

石垣島と西表島の間に広がる「石西礁湖」は約300平方キロに広がるサンゴ礁の海。ここでサンゴを食い荒らすオニヒトデが増殖中だ。NGOや行政でつくる八重山環境ネットワークの集計では、一帯のオニヒトデの駆除数は、08年は6万5392匹で、07年の約20倍に。今年も11月13日現在5万9770匹になる。

ダイビングガイド「(オニヒトデの群れが)直径3メートルのハマサンゴを覆い尽くしていた。夜行性なのに、日中も活動している」

台風18号の被害も加わった。「(サンゴ礁は)ボロボロだよ」

環境白書(正式名:環境・循環型社会・生物多様性白書)では、サンゴ礁の一番の存在価値は、観光にあるという。サンゴ礁が観光資源として重要だそうだ。年2399億円という試算は、なかなか欲張った数字だ。(ばらつきがあるはずの数値を有効桁数4桁まで示しているのも、お役所らしい。)

そのサンゴの大敵がオニヒトデという。オニヒトデはサンゴという観光資源を台無しにするから、退治するのだという論理は、人間の身勝手さがよく表れている。オニヒトデにサンゴが食い荒らされるというが、そんなにサンゴはか弱い存在なのだろうか、という疑問を私はもっている。それに、オニヒトデというネーミングでは、いかにも凶暴そうで、退治すべき生物のように決めつけられているから、オニヒトデにとっては、いい迷惑だろう。

その地域の人たちが駆除したオニヒトデの数は年6万匹以上になるのだから、半端ではない。そんなに捕るための努力と労力の大きさが思いやられる。駆除するコストの元を取らなければいけないだろう。加工したりすれば、何らかの役に立つはずだ。(現在は、おそらく行政が買いとって処分しているだけだろう。) オニヒトデも観光資源にならないか。映像ではなかなかの迫力があり、存在感をもっている。シュノーケリングの用具をもつ私は、もし機会があれば、ちゃらちゃらしたサンゴよりも、サンゴをバリバリ食うようなオニヒトデを見に行きたいと思う。

 

サンゴにしても、オニヒトデに一方的に食われているとは思えない。何らかの対抗手段を持っているはずであり、そうでなければ、生き残れないし、生物の進化はない。いままで地球の生物としてずっと生きてきたサンゴがオニヒトデに、ここで壊滅させられるとは思えない。今はボロボロでも、回復する力をもっているはずだ。オニヒトデも、一時的に大繁殖したとしても、食べるサンゴが少なくなれば、その数は減っていくしかない。捕食者の数は、非捕食者の数を下敷きにしてピラミッド構造で成り立つものだ。人間が介入しなくても、自然にバランスが取れるのが「自然」なのだ。人間が介入しなければ、回復しないとなれば、その「自然」は、もう相当におかしくなっている。

オニヒトデも生態系の一員であり、自然のバランスの上で、繁殖しているのだ。オニヒトデを年6万匹以上取ってしまう人間の方が、観光資源を保護するという大義名分のために、あるいは観光で儲けようとする欲のために、一方的に生態系のバランスを乱す行為をしているのだ。将来、そのためにオニヒトデが絶滅しそうになったら、今度は丁重に保護したりして……。私は、表題名を「サンゴの海の生態系を荒らす人たち」としたかった。

 

 

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        横波でバランスをくずしたフェリー