小沢氏が差配した使途不明金                                岡森利幸   2010/9/3

                                                                  R2-2010/9/23

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞朝刊2010/3/19 一面、政治面

民主党(の執行部)は、17日付の産経新聞のインタビューで「今の民主党は権限と財源をどなたか一人が握っている」などと党運営を批判した生方副幹事長を更迭する。(更迭には)民主内から批判の声が挙がっている。

読売新聞朝刊2010/8/27社会面

(民主党の代表選挙で)菅陣営は、小沢氏が党代表・幹事長だった当時の党費の使途に不透明な部分があったと暴露する戦術も検討した。しかし、菅陣営にも恩恵を被った議員がいると見送らざるを得なかったという。

生方副幹事長の更迭騒動は、党内外からの批判を受けて、取り止めになった。その発言の中で、権限と財源を一人で握っている「どなた」とは、もちろん小沢一郎氏だ。あてこすられた小沢一郎本人が、あるいは小沢一郎の顔色を見た側近がすぐに生方氏の更迭を提案したのだろう。彼にたてついたのは、生方氏に我慢ならなかった何か(たとえば、小沢氏の強引なやり方)があったか、それとも党のために勇気をもって言ってみたのだろう。久々に気骨のある政治家が現れたと私は思った。

小沢一郎氏が民主党の党費だけでなく、その前に所属していた進新党や自由党の党費も小沢一郎氏が中心になって管理していたことが知られている。解党時には、それらの党に残されたはずの金の多くが、小沢一郎氏の差配によってどこかに消えてなくなったとされる。

小沢氏が民主党の党代表や幹事長の要職についていたときも、例外ではなかった。菅陣営が察知したように、使途不明の金を動かしていた。なお、この「使途不明」とは「不正流用」という真意をぼかした婉曲(えんきょく)的表現として用いられている。使途不明といっても、本当のところ、使途はわかっているのだ。それは小沢氏のふところに直接入れられたのではなく、特定の議員たちに恩恵を施すための、つまり組織対策費などの名目で「エサ」としてばらまかれたものを意味している。議員たちが恩恵を被ったというのは、政治資金として小沢氏の差配で党からの金をもらったということだ。党の金だけれども、小沢氏からもらったも同然なのだ。金で議員を手なずける、小沢氏お得意の手法であり、党の金で議員たちを買収しているようなものだ。手なずけられた議員たちは、判断力を失って、小沢氏になびくことになる。

もしも小沢氏に背こうものなら、資金をもらえないだけでなく、選挙で公認されない目にあうことになる。かつて小沢氏が熱心に導入を主張した小選挙区制では、候補者にとって政党に公認されることが特に大きな意味を持つ。その公認を決める側は大きな権限を持つことになる。小沢氏が求めてきたものの一つは、公認を決める側に立つことだろう。または公認をめぐって口出しできるポストにいることだ。候補者は選挙の前に、公認の決定と引き換えに、小沢氏に忠誠を誓わなければならない。

小沢氏が豪腕を発揮する(リーダーシップもどき)のは、権限と財源を握っているからだ。「金権」を握ることが彼のポリシーであると、私はみる。彼が言う「政権」とは、金権そのものだ。選挙に強いと言われるのも、金権に群がっておこぼれに与かろうとする人たちの組織票をつかんでいるからだと私は解釈する。彼は党の要職につくことで、金権を強化してきたし、さらなる金権を目指すために、常に党の要職を求めてきた。金を動かすための権限をもつポストだ。その処遇に不満があれば、彼としては行動を起こすしかない。

三カ月前の6月、多くの批判を浴びて辞任した鳩山氏に代わって党の代表、首相に就任した菅氏に「小沢氏は静かにした方がいい」と言われてしまった。小沢氏は静かにしてはいられず、党の代表選に打って出た。今の民主党の代表は総理大臣を意味する。総理大臣なら、国の金を動かせる最高のポストだし、自身の政治資金の問題を追求する検察側を抑えこむ権力さえも獲得する。そうなれば、彼の金権政治の集大成になりそうだ。

 

9月14日、民主党の代表選の結果、菅氏が小差で小沢氏を破った。小沢氏が日本の最高ポストに就くのではないかと危惧した私だったが、ほっとしている。しかしながら、小沢氏は今回の選挙でも隠然たる力を見せ付けてくれた。彼の金権政治の根深さは相当なものだ。金権の、金権による、金権のための政治は健在だ。

 

 

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