お上を批判する者を重罪にする中国                         岡森利幸   2011/6/23

                                                                  R1-2011/6/25

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2011/6/11 国際面

@湖北省で抗議活動

香港の人権団体「中国人権民主化運動情報センター」は、10日、中国湖北省利川市で89日に住民による地元政府への抗議活動が起き、1000人以上の警官隊と衝突して10人以上が負傷、20人以上が拘束されたと伝えた。利川市では汚職の取締りを担当する幹部職員が拘束され、5日に突然獄中で死亡。家族は拷問などが死因と主張している。同センターは、住民が清廉な仕事ぶりを評価していた職員の突然の死に疑問を募らせたことが、抗議活動の原因と伝えている。

A出所直前、刑期延長

中国山東省滕州市の政府庁舎を豪華だと批判した後、恐喝罪で懲役4年を言い渡され、今月25日に刑期満了で出所予定だった元中国紙記者でフリーライターの斉崇淮氏が恐喝罪で再び起訴され、さらに8年の懲役を言い渡されたことが斉氏の弁護士が明らかにした。起訴内容は前回と同じで新たな証拠もないという。

中国では出所後の活動家を法的根拠がないまま軟禁下に置くなどの人権侵害が頻発しているが、刑期延長までして拘束を続けるのは異例。

中国の地方都市における地元政府の横暴ぶりを示す二つの例が、新聞の国際面の片隅に小さく書かれていた。それらの情報の信ぴょう性に疑いを持つ人がいるかもしれないが、日本の大新聞が記事にしているのだから、ある程度の裏付けがあっての記事だろう。@では、役人の汚職を取り締る担当職員が拷問にあって獄中で死亡したことが、住民の抗議活動のきっかけになったという。この職員は、これまでにもいくつか汚職を摘発し、住民から信頼されていたのに……。Aでは、政府庁舎の豪華さを批判した活動家が刑務所から出られない、という内容だ。するどい指摘や批判は、地方政府にとって逆鱗に触れられることだったのだろう。

 

@〈汚職の取締りが厳しくなると、オレたちの立場が危うくなる……。あいつはまじめにやりすぎる。すこし痛い目にあわせれば、手加減するようになるだろう。(罪状は)何でもいいから、しょっぴけ〉

A〈この近代的な環境の中で、快適な設備が整い、少々の地震があっても(どこかの安上がりな小学校と違って)びくともしない構造の庁舎で仕事していることが、我々の社会的ステータスの高さであり、安心なところでもある。予算を捻出し、我々の裁量の範囲で建設した庁舎だ。それをやっかみ半分でとやかく批判するやつは許さん。やつが出所したら、刑務所生活でのうらみつらみがあるだろうから、さらに政府批判の鋭い言論で追及したり、人民をあおったりするに違いない、また脅迫罪で刑務所にぶち込めばいいにしても、そのことで人々の注目を集めたりして、変な波がたつかもしれない……うるさいやつはもっと長く刑務所で、おとなしくさせておけ〉

 

などと考えた地方政府の幹部連中(官僚)が示し合わせて、仕組んだ結果が、それらだろう。汚職を取り締まられたくない、身に覚えのある幹部たちが、警察の治安要員あるいは公安局員を使って、その取締り担当職員を強引に拘束し、拷問にかける指示をしたのだろう。拷問死を抗議する住民たちには圧倒的な警察力で対処し、蹴散らしている様子が伺える。

もう一つの、批判者の口封じをするために刑務所から出さないようにしたことも、相当にひどいやり方だ。政治権力の乱用だろう。独立しているはずの司法が、その権力の横暴を抑制するどころか、助長している感すらある。同じ地方政府内の組織として、もちつもたれつの関係にあるようだ。権力(特に人事権)を握っている幹部の力が強いのだろう。中国の地方都市にまで及んでいる、強固な官僚体制の一面だ。

今年の2月には、交通違反を起こした若者が「おれの親父は李剛だ」と警察幹部の名を挙げ、駆けつけた警察官に親のご威光を示して、罪を逃れようとした事件が話題になった。「おれの親父は李剛だ」はネットを通じて中国中に知れ渡ったそうだが、おそらく、今回の情報は中国国内ではほとんど知られていないことなんだろう。中国政府にとって「耳の痛い、人聞きの悪い」部類に属する情報だから、規制しているはずで、政府系のメディアがまともにそれを報道することはありえない。でも、規制の網から漏れることもあるのだ。

 

 

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