ミシュラン・タイヤ生産の撤退                            岡森利幸   2010/1/27

                                                                  R1-2010/2/3

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2009/9/28 総合面

中国商務省が米国製鶏肉製品の不当廉売を調査している。

米政府が中国製タイヤにセーフガードを発動したことへの対抗措置の意味合いもある。

毎日新聞夕刊2009/12/22 社会面

トヨタ、部品価格3割減を系列メーカーに要請。

毎日新聞朝刊2010/1/16 経済面

フランスのタイヤ大手ミシュランは日本国内で唯一の生産拠点である太田工場(群馬県太田市)でのタイヤ生産を7月に停止すると発表した。生産コストが他地域の倍近くに高止まりしているため。

アメリカでは、セーフガードを発動しなければ、アメリカ国内のタイヤ・メーカーは、立ち行かない状況のようだ。アメリカがセーフガードを発動すると、中国は「仕返し的」対抗措置を講じた。それは中国の腹いせ的行動であって、いつもの例によって、米国製品の「あら探し」をしなければ気がすまないのだ。製鶏肉製品は、たまたまその標的にされたのであって、貿易摩擦のとばっちりを受けたことになる。

以前は日本で売られていたタイヤのメーカーは数社に限られていた。最近、得体の知れないメーカーのタイヤが日本の市場に多く出回ってきていることに、私も気づいている。日本のメーカー品よりも、その値段は安い。メーカーにこだわらない人にとっては、大いに魅力的だろう。その得体の知れないメーカーは、中国の会社に違いない。米国だけでなく、日本にも中国製タイヤが入ってきているのだろう。(国内メーカーのブランド名が付いているタイヤであっても、海外生産品であるかもしれない。)

国内メーカーは、その安い中国製に対抗しなければならず、厳しいところだろう。人々の所得も減り続け、節約志向が高まるのに反比例し、消費者の購買意欲は下がってきているから、国内でも市場は厳しい。「安くても、商品が売れない」という状況が本当のところかもしれない。ただし、地球の限りある資源やエネルギーを有効に大事に使うということでは、節約することは必要なことであり、よいことだ。

 

コストが安いことは、メーカーにとって、なにより有利だ。逆に、コストが高ければ不利であり、ブランド力によって販売価格が少しぐらい高く設定できても、割が合わなくなることがある。極端な例では、製品が売れば売るほど損失が発生することにもなるのだ。メーカーにとってコスト低減は永遠のテーマだ。

だからトヨタが部品価格の3割減を系列メーカーに要請するのも、世界市場で新興国のメーカーと競争するためには必要なことかもしれないが、部品メーカーにとっては、涙が出るほど厳しいことかもしれないと、私は想像している。親会社から、これまでにも絞れるだけ絞ってきた、ぎりぎりの部品単価を「さらに3割も減らせ」と言われたんでは、悲鳴をあげるしかない。あとは、人件費をさらに削る(熟練技術者を減らし、安い労働力を導入する)か、部品材料の「品質を落とす」しかないだろう。それでは、耐久性のない(すぐ壊れる、あるいは、すぐ磨り減る)ような、粗悪な部品が増えそうだ。ぎりぎりのコスト低減によって販売台数が増えたとしても、それ以上にリコールが増えることにもなるのだ。

ブランド力のあるミシュランが「生産コストが他地域の倍近くに高止まりしている」ために日本での生産を止めてしまうのは、ミシュランだけの問題ではなく、他のメーカーにも同じ事情があると想像できる。タイヤだけでなく、他の部品に関しても……。日本では、農業だけでなく、製造業でも高コスト体質になってしまっているし、それを無理やり下げようとするため、低品質の体質にも陥りそうだ。

 

 

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