ルーブル美術館でのストライキ 岡森利幸 2009/12/7
以下は、新聞記事の引用・要約。
毎日新聞夕刊2009/12/4 社会面 ルーブル美術館など、フランスの有名美術館・博物館などが12月3日までに一斉に大規模ストライキに入り、閉館が相次いでいる。政府が今後の職員補てんについて「退職者の半数に限る」としたことに抗議したもの。解決のメドは立っていない。 |
ストライキを知らずに美術館を訪れた人にとっては、定休日でもないのに、それが閉まっているのだから、がっかりだし、ストライキを回避できなかった当事者たちに腹立たしくもなる。特に、それを第一の観光目的にして旅をした人にとっては、大ショックだろう。このストライキは何が原因なのだろうか。
上記の記事では簡略しすぎて内容が理解できていない人がいるかもしれないので、補足的な解説を加えると、政府は美術館・博物館の職員の数が多すぎると考えているのだ。人員を減らすために、職員が退職したら、その代わりとなる職員を採用することになるが、今後は、2人辞めたら1人しか採用しないことで順次、職員の数を減らしていこうとする方針を打ち出したのだ。それに対し、職員たちの労働組合は、それに反対して交渉したが、政府が方針を変えようとしないから、実力行使に出たのだ。
〈入館料を増額すればいい〉という話でもないらしい。政府側も職員側も、絶対譲れない一線があったから、ストライキに入ったのだろう。職員たちは、その数が減らされると、その分、一人一人の仕事の量が増えるから、イヤなのだ。仕事の量は変わらないのに、人だけ減らされるわけだ。政府が〈職員の数が多すぎる〉という根拠も、職員たちを納得させるものではなかったのだろうし、職員たちは現状を既得権とみなして、それを失いたくないのだろう。
政府側には、職員たちが楽々と仕事しているように見えるのかもしれないが、実際に仕事をしてみなければ分からない苦労はあるものだ。一般的に、他人の仕事は、楽そうに、ヒマそうに見えるものだ。他人の職業をうらやましがってはいけない。美術館の職員にしても、かれらはずいぶんヒマそうにしているように観客からは見えるのだが、けっこう忙しく、気を使っているのだ。(特に、アルコールの入った日本人の観光客は要注意だろう。)
その割合で職員を減らすとしても、辞める職員が年に数パーセントだけだとすれば、一人一人の職員の負担が目に見えて増えたり、美術館業務全体に影響したりするような人手不足の発生は、まだまだ先のことと思われる。ここでストライキをするほどの緊急性はないだろう。全体の適正な人員配置を見直すか、情報技術の導入によっては、さらに職員の数を減らせることができるかもしれない。職員の数が少なくてもいいのかどうかには未確定要素が多く、労働条件や契約形態がわからないので、はっきりしたことは言えないのだが、現状を断固として変えないという職員側の主張には、私は疑問をもつ。職員数が減ったら不安だというのなら、将来、また職員数を見直せばよいことだ。
双方の言い分がもっともだと仮定して、私が調停するとしたら、数字の問題なのだから、あいだを取って、3人辞めたら2人採用する――というのは、どうだろう。それを永久に続けていくと、職員ゼロになってしまうから、現在の職員数の2/3、あるいは適正な数になるまで続けるのだ。それとも、職員数を減らさずに給料の額を2/3にすれば、雇用も確保できるから、一番いいことかもしれない。
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