健康保険組合元理事長の着服                                岡森利幸   2011/3/27

                                                                  

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞朝刊2010/10/16 地域〔相模〕

自動車部品メーカー大手「プレス工業」の健康保険組合は15日、元理事長(66)が2001年6月〜06年7月の在任中、総額約1億5200万円を着服していたと発表した。

同組合によると、関東信越厚生局から定期監査を行うとの連絡を受けて、対象期間の会計を調べたところ、出金伝票に領収証や請求書がない不備が多数見つかった。元理事長に説明を求めたところ、着服を認めたという。架空の伝票を部下に作らせ、金を引き出していた。自宅の新築費用やゴルフなどの遊興費、家具の購入費などに使ったと話している。すでに全額が返還されており、同組合は刑事告訴などの法的措置は行わないとしている。

元理事長は他にも、同社の監査役だった01年6月〜08年6月に会社の金約200万円を着服していたことが発覚していた。

元理事長は1971年にプレス工業に入社し、経理部長や企画室長などを歴任した。同組合の弁護士は、「(元理事長は)本社で力のある人間で、職員は逆らえなかったのでは」と述べた。

元理事長という人物は、プレス工業のおそらくエリート社員として入社し、経理部長などを歴任し、晩年には監査役と健康保険組合の理事長をしていたというから、たしかに「力のある人間」には違いない。しかし、これがとんだ『食わせ者』だったわけだ。地位や権力を利用して私腹を肥やしていたのだから、そうとう悪質な人物だったことになる。しかしながら、健康保険組合が総額約1億5200万円も着服されたのに告訴もしないのでは、全額返還されたといっても、甘すぎる処置だ。一般の社会では、盗みなどの不正が発覚したとき、「返せばいいんだろう、金を払えばいいんだろう」ではとても済まされないはずだ。

この健康保険組合では、まともな経理処理をしていなかった実態が浮かび上がる。着服がわかったきっかけが、関東信越厚生局(厚生労働省の出先機関)から定期監査を行うとの連絡を受けたことによる。ふだん、ずさんなお金の管理をしていたから、とても会計監査を受けられる状態ではなく、外部の人の目には見せられないものだったのだろう。内部で、形だけの会計監査をしてすませていたようだ。関東信越公正局からの定期監査においても「不定期」に実施されていたので、長年、理事長の不正を見抜けなかったのだろう。

この人は、経理部長だった経歴があるにもかかわらず、金の管理がルーズだったことになる。いや、経理に詳しいから、こっそり着服していたのかもしれない。着服がばれて1億5200万円を全額返済したのも、それまでに蓄財した原資があったからなのだろう。新築費用や遊興費として使いまくっていたのに……。発覚しなかった分がまだまだあったのではないかと疑われるところだ。

プレス工業としては〈身内の恥をさらすようなものだから、事をなるべく穏便にすませたい〉というところなのだろう。こんなモラルの低い人間を幹部にしていたのだから。

この健康保険組合では組織的に理事長の着服に協力していた様子が浮かび上がる。その部下たちは共犯者というところだろう。「架空の伝票を部下に作らせていた」というから、職務上、部下は上司である理事長の指示のままに不正を働いていたことになる。着服の実行犯としての役回りを強いられたのだ。とんでもない上長だったわけだが、内部告発をしようものなら、左遷されるような状況があったのかもしれない。そんな上長の下にいる職員としては「宮仕えのつらいところ」だったのだろうと少しは同情したい。

 

 

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