風の予報で早期下校させた山形県                             岡森利幸   2011/5/13

                                                                  R1-2011/6/10

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2011/3/16 社会面

山形副知事が放射性物質を含む風が来る可能性があり危険という研究者からの連絡で県教委が県内の全公立小中学校431校と公立幼稚園20園に「児童生徒を早く下校させるように」と、県災害対策本部などと相談せずに指示したことを「不適切だった」と陳謝した。相馬周一郎県教育長は「父母たちの不安をかき立ててしまった」と陳謝。

「児童生徒を早く下校させた」ことが、山形副知事までも、頭を下げさせることになった。しかしそれが、感謝されることはあっても、非難される筋合いではないだろう。

児童・生徒や父母らを不安にさせたことが、謝った理由になっているが、実際は、県災害対策本部の「面子」をつぶしたことで、その方面からの「お叱り」を受けたことがその第一の要因ではないか。

つまり、児童生徒を早く下校させるような非難行動は、県災害対策本部の指示で行うのが「建前」だったのだろう。それを無視した形で、あるいはそれを知らなくて県教委だけの判断でやってしまったことで、組織的な面から咎められたということだろう。そして県内の全公立小中学校431校と公立幼稚園20園の児童生徒が一斉に帰宅させられたのだから、「何ごとか?」と、県内が騒然となった様子も伺える。顔色を変えて、学校側に問い合わせる保護者たちのあわてぶりも目に見えるようだ。

「こんなに早く帰宅させて、家庭でどんな避難行動を取れというのか」、「学校は避難場所としての役割がないのか」「これは学校が授業を放棄するようなことだろう。そこまで必要だという根拠が本当にあったのか」と、怒り出す保護者たちが多くいたのだろうと私は想像している。

中には、どんなに高い放射線量が検出されても「直ちに健康に影響するレベルではない」と言い張り続ける無責任な(?)政府の広報を信じる人がいて、「風評に惑われて、山形県が福島原発から70キロ以上も離れているのに、学校側が余計なことをした。これも風評被害だ」などと学校側に非難が集中したようだ。単に不安が広がっただけでなく、怒りの感情がわき起こったから、副知事が出て、謝らざるをえなくなったのだろう。

不安でいっぱいの人々を、さらに不安をかき立てるようなことをしては、この国ではタブーになっているのだ。不安をかき立てることは「とんでもない」とされるのだ。政府は、人々の不安を打ち消さないと、政権が危うくなるとでも思っているようだ。

しかし、「70キロ以上離れていれば、放射線は届かない」とは断言できないのが、今回の原発事故だ。現に200キロ以上離れた神奈川県でも一部の農産物から基準値を超えた放射性物質セシウムが検出されている。お隣の韓国でさえも、児童生徒の避難行動騒ぎがあったことが報道されていた。原子炉から排出された、放射性物質でいっぱいのガスが風で運ばれて、そんな遠くの地域にも舞い降りてくる可能性があった。山形県の場合、気象の専門家の意見によって帰宅させたというのだから、風評などではなく、確かな情報源だったのだろう。山形県が風下にさらされる危険があるのなら、避難行動をとったのは、基本的に正しい。放射性物質で汚染された空気が流れ込むことが予測されていたのに、それに何も対応せず、生徒児童が学校で高い放射線を浴びたとなれば、その方が重大な責任問題になったことだろう。あとで政府から「健康に影響するレベルだった」と発表されても、その地域住民にとっては遅いのだ。

放射性物質がどの地域にどれだけ降下するかという予測データは、政府主導で研究されていて(つまり税金を使って)、事故直後に計算結果の数値をはじき出せる仕組みになっていたはずだが、すぐには公表されなかった。それは5月になってからだ。それを隠していた理由は、これを公表すると「住民が不安がるから」ということだった。それほど不安に陥れるような数値が出たの?

 

 

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