北方領土でロシアが軍事演習                                 岡森利幸   2010/7/8

                                                                    R1-2010/7/9

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞朝刊2010/7/7総合面

ロシア国防省は、大規模軍事演習「ボストーク2010」の一部を北方領土・択捉(エトロフ)島で行ったと発表した。

今回の演習は「ソ連崩壊後、最大規模」との指摘もある。岡田外相は6日夜、「我々の立場から言えば認められない。極めて遺憾だ。なぜこの時期にという感じはする」と述べた。

ロシアは日本政府が嫌がることをあえてやったかのようだ。日本政府にとって北方四島でのロシア軍事演習はいらだたしいのだ。北方四島の返還交渉がこじれているのは「金の問題」があるからだ、と私はにらんでいる。

冷戦の時代なら、北方四島が軍事的拠点としての重要性があったかもしれない。しかし、現代ではそれも薄れた。この時期にロシアはエトロフ島で軍事演習をやって見せることで、再認識させようとしたのだろう。北方四島の重要度を高める狙いがあったと私は見る。そしてその裏には、ロシアは北方四島を日本に高く買い取ってもらいたい、という意図が見えるのだ。

ロシアにとって、極東の辺鄙な北方四島を占有しているメリットは、経済面や軍事面を考えても、ほとんどなきに等しい。軍事基地や密漁取締りのための公安部門を島に置いているだけでも、その費用が負担になっているはずだから、そろそろ引き上げたいところだろう。占有しているのは、単に領土を拡張したいという陣取り意識からではなく、いつか日本に買い取ってもらえるだろう、しかも、高く買い取ってもらえそうだという期待をもっているからだ。北方四島の返還に関しては、国際的な圧力もなく、日本とロシアの二国間の問題として交渉するしかないのだが、そのキーポイントは日本側が支払う金額だろう。返還交渉は、商売上の「取引」になっているのだ。

日本が「返せ、返せ」と強く叫ぶほど、その値はつり上がっていたのだ。ビジネス意識の強いプーチン氏などは返還するそぶりを見せながらも、その実、高く吹っかけていたのだろう。もちろん、そんな条件は外交機密の最たるものだから、知りようがない。それが折り合いがつかないほどの金額であることは確かだ。引渡しの際には、故意に居ついている住民対応の、立ち退き料や漁業権などの補償金も必要になるだろうし、1945年からこれまで半世紀以上ロシアが四島を管理してきたのだから、その管理料も要求されるだろう。おそらく四島の土地代に関しては、北海道の平均地価と同等の地価レートで四島の面積をかけて算出するのだろう。それらを含めて、譲渡のための総額がどれほど高額なものになるのか、私には見当もつかない。兆円以上のオーダーに違いない。あるいは数十兆円のオーダーか。

財政難の日本政府が、さらに借金で首が回らなくなるほどの円を出してまで買い上げようとするのは、単に「日本の固有の領土だったから」という理由だけでは、とても無理だろう。国民の理解が得られるとも思えない。それで日本人の領土意識が満足させられる? そもそも歴史をひも解けば、数百年前の四島は、政府の支配の及ばない「先住民たちの土地」だったから、固有の領土と主張するのはおこがましい(ずうずうしい)。日本で発行される地図帳などで、四島が日本領土に色分けされているのも、国際的には通用しない。それを中国に持ち込んだら、ただちに没収だろう。実質的にロシア領であるからだ。北方領土といっても、ロシアの「南方領土」というのが実体だ。

「北方四島返還!」という気運を盛り上げようと、政府が省庁の建物などでその横断幕を掲げて国民をあおるようなことをしているはトンデモナイことだ。国民からその気運が盛り上がっているのなら別だが……。北方四島の領有権が本当に日本にあると主張するなら、その領有権をロシアに貸していたわけなのだから、返還の際には、逆に賃貸料をロシアから半世紀分をまとめて徴収すべきところだろう。

政府が大金を出して(実際には、国債の大量発行になるだろう)買い取ろうとする前に、北方四島の必要性を冷静に考えてみるべきだろう。北方四島は手付かずのまま、世界自然遺産にでも登録してロシアに管理させるのが世界的に妥当なところだ。(その自然美は、知床半島の上を行くものと私は想像している。) 土木工事が大得意で、業者たちがてぐすね引いている日本に管理を任せたら、何をするかわからないのだ。

エトロフ島でのロシア軍の演習など、対岸の花火のごとく、われわれは北海道から見物していればいい。

 

 

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