法人税を払いたくなかった黒字の日本IBM               岡森利幸   2010/4/2

                                                                    R1-2010/4/5

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2010/3/18 社会面

大手コンピューターメーカー「日本IBM」は4000億円の申告漏れを国税局に指摘された。日本IBMがグループの損益を合算して申告する連結納税制度を使い納税額を低く抑えたことが、国税局から申告漏れと判断されたという。日本IBMは「法規は順守している」とコメントし、争う(国税不服審査所に審査請求する)姿勢を見せている。

グループは02年に有限会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(APH)を設立。APHが日本IBMの全株式を取得した。その後、APHが株式を日本IBMに取得時よりも安い価格で売却するなどしたため、APHは約4000億円の赤字を抱えた。

グループは08年ごろから連結納税制度を活用することになり、APHの赤字と日本IBMの黒字が相殺され、08年12月期の納税額が圧縮された。国税局は、APHは実態に乏しく、制度の乱用に当たると判断したと見られる。

日本では、法人税が諸外国と比べて高いそうだ。IBM本社側がそれを快く思っていなかったことも背景にあるだろう。〈われわれの儲けを日本政府に吸い上げられてしまうのは、シャクにさわる〉ことなのだろう。

米国のIBM社(International Business Machines Corporation)は、世界屈指の先進的情報機器メーカーだ。研究開発力に優れ、その技術は常に上を行くもので、その製品は確かで、信頼性が高いものだから、私も日本の同業企業の中で長年に渡って、その技術に追いすがる努力をしていたものだ。しかし、「弊社」がこの分野において技術力で追い抜いたと思える瞬間などなかった、というのが正直なところだ。IBMが次々に新機軸や新方式を打ち出すと、それらが世界標準となり、われわれのよい手本になった。

その子会社である日本IBMも、日本で一流の企業だ。優秀な人材を集めている。ただし、外資系の会社特有の徹底した成果主義の労働環境であることも伝え聞いている。不要とみなされた人材は強引に追い出されるらしい。そんな会社だから、〈収益が上がらなければ不自然〉なのだ。

収益が上がって黒字になれば、その何割かは法人税として国に納めなければならない。日本IBMは、連結決算する年度までは、かなりの額を税金として納めていたのだろう。連結決算にしたとたん、それがほとんどゼロになったものだから、国税局としては納得がいかないのは当然だ。

IBM側が「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(APH)という怪しげな会社を設立したのは、連結決算対応のためと考えられる。「株式の横流し」で大幅な赤字を計上し、グループ全体として黒字を抑えるという手段になっている。すると、法人税を納めなくてすむのだ。連結決算方式は順法であり、むしろ政府が企業に対して採用を推し進めているものだろう。だから、日本IBMが主張しているように、法律違反をしているわけではないのだ。申告を漏らしたわけでもない。

国税不服審査所の判断が待たれるが、連結決算方式の抜け穴がもろに見えてしまったものだ。ある意味では、連結決算方式は、企業に対して「節税させる仕組み」として、法人税率を維持するために政府がプレゼントしたものなのかもしれない。

さて、APHの赤字の大半は、どこへ吸い込まれてしまったのだろう。日本IBMの株式のほとんどは、本国のIBMが所有していたはずである。その株式を高く買わせ、その後に「子会社」に安く買い戻させることで儲けたのは、もちろん本国のIBMである。それまで日本政府に、彼らにとって高額な法人税をとられていたのだから、そのうっぷんが少しは和らいだ?

 

 

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