フランチャイズの力関係                                    岡森利幸   2009/9/24

                                                                    R1-2009/10/22

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2009/2/20 社会面

公正取引委員会がセブン−イレブンを調査、消費期限が近づいた商品の値引きを不当に制限した疑い。フランチャイズ契約で、廃棄品が多い加盟店の負担大なのに、値引きさせない?

毎日新聞朝刊2009/6/24 一面

現在は加盟店だけが負担している弁当やサンドイッチなどの食品類の廃棄損失を、本部で一部負担するとセブン・イレブンが発表した。

毎日新聞朝刊2009/7/12 社会面

セブン・イレブンがロイヤルティー(経営指導料)を軽減する。最大3%軽減。

ロイヤルティーには、原価を差し引いた売り上げ総利益の43%と約60%2パターンがある。

毎日新聞朝刊2009/8/26 社会面

「セブン−イレブン・ジャパン」の元加盟店経営者2人が、商品仕入れ額などの報告を同社に求める訴訟の差し止め控訴審で、東京高裁は書面での報告を命じた。

原田敏幸裁判長は仕入れ先から得ているリベート額も報告すべきだとし、「リベートを秘密にしていること自体が問題」と指摘した。

毎日新聞朝刊2009/8/5 社会面

「セブン・イレブン」の加盟店オーナーらがコンビニ労組を初結成した。

神奈川県内のオーナー「オーナーが過労や自殺で亡くなっている現状はあまり知られていない」

毎日新聞朝刊2009/8/20 社会面

セブン−イレブン・ジャパンの加盟店ユニオン結成後、ユニオン幹部の店主とのFC契約打ち切りで、非難の声明を発表。

毎日新聞朝刊2009/9/7 「時代を駆ける」欄

ローソン社長、新波剛史さんは、イノベーションを進め、加盟店と共存共栄(をモットーとする)。

「……セブンさんは本部が加盟店から吸い上げるロイヤルティーがわれわれよりも10%高い。……」

コンビニ業界は、過当競争気味だ。新しく開店するところもあれば、閉店するところも多い。薄利多売でよくやっていると思うが、本部がその「利益の多く」を吸い上げていることや、本部が加盟店を統制するやり方には、私には引っかかるところがある。

私も時たまコンビニを利用する。最近、おにぎりや弁当の棚にある商品の数がずっと少なくなっていることに気づいた。これは、公正取引委員会(公取委)が指摘した、賞味期限が近づいた食品を値引きしない戦略を改めた影響だろうと推測している。つまり、売れ残りを出さないためというより、値引きすることを避けるために、売れ切れる最小限の商品しか置いていないからだろう。公取委が「値引きせよ」と言っているのに、実質的に「値引きしないこと」にまだこだわっているのだ。本部は「高値安定」指向だろうから、加盟店で値引きされると、本部による価格の維持ができなくなることを恐れているのだ。おそらく、売れ残りの恐れのある商品を多く置かないことを加盟店に指導しているのだろう。しかし、それは、買う側にとって、品数が少なくなるから、不便である。おにぎりの種類も減ってしまい、好みの物が残っていないという現状になっている。そんな本部のやり方には「公取委が何といおうと、加盟店には絶対に値引きさせない」という意地のようなものが感じられる。「値引きしたら、ブランドのイメージが損なわれる」というのが理由だそうだが、加盟店を締め付けていることで、本部のイメージの方がずっと損なわれるのだ。

公正取引委員会が是正命令をだすまで、売れ残りの食品類はすべて加盟店が負担していたと言うのだから、不満が出ないほうがおかしい。

 

加盟店は総利益の約半分をロイヤルティーとして上納しなければならないという。「原価を差し引いた売り上げ総利益」というが、どこまでが「原価」なのか、よくわからないが、「商品の仕入原価」を指すのだとすれば、相当な額だ。「ロイヤルティー」(royalty)という言葉は美しいのだが、その昔、農民が代官に納めていた「年貢」と本質的には同じものだ。あるいは、その土地で商売させる代わりに「みかじめ料」(「みかじめ」は監督の意)を取るヤクザな世界のシステムと似ているではないか。税金システムもそうだけれど……。本部によって利益が吸い上げられるから、加盟店はせっせと商品を売りさばかなければ、ほとんど利益が出ない仕組みになっている。立地条件などが悪ければ、コンビニ店はすぐにつぶれてしまうことからも、それがわかる。

本部は商品の仕入れ価格についても取り仕切っており、加盟店に示す仕入れ価格と、納入業者から実際に支払った価格とには差があるものだが、その差分や納入業者から得るリベートは、すべて本部の「もうけ」になっている。「不当に高い」仕入れ価格で加盟店に示していることになり、これについても加盟店から不満が出ているが、加盟店としては裁判所に提訴するしか手段がなかった。

本部としては、つべこべいう加盟店ならば、FC契約を打ち切るとおどせばよかった。本部のやり方に逆らうような加盟店に対しては、FC契約を打ち切ればいい。本部は、一つや二つの加盟店が別離したとしても、グループ全体のロイヤルティーが最大になればいいのだ。しっかり手綱を握れば、それだけ多く実入りを増やせるのだ。

FC契約が打ち切られると、それで商売ができなくなるのだから、加盟店のオーナーとしては、会社から突然解雇される従業員と同様だ。店を持つために、借り入れした資金もむだになるのだから、倒産以上のダメージになる。

「いやならいいんだよ。好き勝手にやっても、おたくの自由というものだ。ただし、店の看板を外してもらうよ。今後、商品の仕入れや集配、何から何までストップだ」というおどしは、相当なプレッシャーだ。加盟店は、本部の言うことに逆らえず、いいなりにならざるを得なかった。

 

加盟店オーナーらがユニオン(組合)を結成したのは、本部との力関係で、加盟店が弱すぎるため、団体で対抗しようとするものだ。つまり、本部は、強い立場を利して、がっちり利権をにぎっているから、個別に話をしようとしても無力だったのだが、団体になれば、そこそこの力になる。

組合ができて、加盟店が団体で申し入れをしてくるとなると、本部としても加盟店の声に耳を傾けざるを得ないだろう。これまでのように一方的に指導することができなくなる。今までのように絶対的に有利な立場で本部が、ロイヤルティーを決めたり、仕入れ価格をきめたり、その他もろもろの条件や制約について、一方的に押し付けるわけにはいかなくなるはずだ。

しかし、加盟店オーナーらが組合を結成したら、すぐに本部が一方的に組合幹部の店主とのFC契約を打ち切ったのは、ひどいやり方だ。あからさまな「組合つぶし」である。組合の弱体化を狙ったものにちがいない。

この組合結成によって、どれだけ加盟店の立場が改善されるかは、未知数だ。やはり、まだ本部の「指導力」は強い。本部によって組合がつぶされてしまうようでは、法的な規制が必要になる。何事にも不平等な立場ではいけない。特に、一つの利益を分かち合う商品販売の業界で、一方の部門に不利益が出てしまうのは格差が広がるだけであり、社会的にまずいのだ。

ローソン社長が言うように、本部が加盟店と共存共栄するのが、方向性として正しいし、本部だけが得するようではいけない。本部の立場を利用すれば、「あこぎなこと」も可能だが……。セブン−イレブンは本社だけの利益を優先するアメリカ流の経営方針に撤しているように、私には思えてならない。

 

 

一覧表に戻る  次の項目へいく

        死んで先生に仕返しをした小学生