F15戦闘機の急旋回に耐えられない操縦士                 岡森利幸   2011/12/19

                                                                  R0-2011/12/24

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2011/11/10 社会面

沖縄本島沖で7月、F15戦闘機が訓練中に墜落した事故で、急旋回して高い重力加速度(G)がかかった際に操縦士が意識を失ったことが原因と考えられるとの調査結果を空自が発表した。「耐Gスーツ」などの不具合が引き金になった可能性もあるとしている。

戦闘機は、よく落ちたり壊れたりするものだから、軍の装備品の中でも、消耗品の一種である。そうなることを損耗するという言い方もある。でも、操縦士は落下する機体から飛び出し、生還できるように、作られている。だから、今回のように、操縦士もろとも失ってしまう事故は、空自にとって「痛い」ことだと想像できる。

急旋回での高いGで操縦士が意識を失ったことが原因というのも、空自としては困ったことだろう。急旋回ができなければ、戦闘において大きなハンデになってしまうからだ。空戦において、ドッグファイトといわれる接近戦では、戦闘機同士がミサイルや機関砲弾を相手の機に打ち込むためには、相手の機を追いかけるようにして好位置に付ける必要がある。そのためには急旋回が欠かせない。今回の事故も、その訓練の最中に起きた。ただし、現代の実戦では、人間の目ではとうてい見えない遠距離から、相手の機をレーダーで捕捉してミサイルを放つという戦闘になることが多いとされている。

そのミサイルをかわすために急旋回してのがれることも、戦闘機に求められる性能だろう。急旋回して操縦士が意識を失ってしまったというのでは、せかっくの戦闘機の能力を活かせないというものだ。操縦士が急激な運動を戦闘機にさせると、機体が壊れたりする(空中分解する)のだが、F15戦闘機は、専門誌によると、9Gにも耐えられる機体設計がされているという。

しかし、そんな戦闘機に乗る人間は、そんなに耐えられない。特に、脳への血の循環が妨げられるような、つまり、全身の血が下半身に下がってしまう運動では、操縦士は意識を失ってしまう。つまり、機体が壊れる前に、その中にいる操縦士が「壊れてしまう」ことになる。

今回のケースでは、事故機のフライトレコーダー(FDR)が海底から回収され、その解析により調査結果が報告されている。その少し詳しい内容が『航空ファン2012.2月号』の「航空最新ニュース」に載っていて、それによると、最高6.85のGがかかった降下旋回をした直後、約45度の降下姿勢のまま、引き起こし操作が間に合わず、海に突っ込んだとされている。FDRには、引き起こし操作は2回行われていることが記録されている。操縦者は一時的に意識を失ったが、その回復が機体を立て直すには遅すぎたのだ。最高6.85のGがかかった降下旋回をしたときの高度が示されていないが、かなり低空だったようにもみえる。つまり、そんな降下旋回をする場合は、もっと高空で訓練していたならば、一時的に意識を失うか、あるいは意識朦朧(もうろう)となったったとしても、海面に墜落するまでは時間があるから、操縦者は意識を回復して機体を立て直せたと推定できる。その辺の解釈については、航空自衛隊内部の責任問題につながるから、明らかにしないのだろう、と私は邪推する。

ともあれ、将来的に、戦闘機の性能をもっと上げるには、生身の人間ではダメで、操縦をロボットに任せるしかないだろう。ロボットは人間の形にする必要はなく、箱の形で戦闘機に組み込めばいい。人間は後方の基地で、戦闘機から見た周囲の画像やレーダー情報を見ながら、ロボットに指令を与える形で遠隔操作すればいいはずである。もう偵察機は無人化されているから、戦闘機を無人化するのも近い将来のことだろう。戦争がますますゲーム化するようだ。

 

 

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