チリ鉱山事故で救出された33人                           岡森利幸   2010/12/30

                                                                  

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞朝刊2010/10/17 国際面

チリの地元紙が鉱山事故で救出された家族の話として、作業員33人が、報道機関の単独インタビューに2000万ペソ(約340万円)を要求することで協定を結んでいる、と報じた。作業員たちは、早くても11月上旬まで、69日間の地下生活の詳細を語らないことでも合意しているという。また、「鉱山で起きたことは、金を払わないマスコミには話さないことになっている」という作業員の家族の証言を報じている。

読売新聞朝刊2010/10/18 社会面

チリ鉱山事故で救出された作業員たちが、体験記を共同で出版することを計画していることを一人の作業員が明らかにした。別の作業員が坑内で救出を待つ間、ノートに書き綴った日記を基にした内容。33章で構成し、収益はみんなで分け合う予定という。33人は地下生活の詳細を語らないことで合意したという。計画中の本の価値を高めることなどが目的という。

69日間の地下生活というのは、想像すると、たいへんなことだ。坑内の通路が大規模な落盤で塞がれてしまい、33人は地下奥深くに閉じ込められてしまっていた。落盤の直撃には合わなかったものの、もう自力では脱出できなかったから、作業員たちは、万一の事故のために備えられたシェルターに集まり、救出隊が来るまで、生き永らえることしか選択肢はなかった。生きるための水、食料、空気があったが、限られていた。それらが底を尽きたら、もうだめだという絶望的な極限状態に置かれたのだ。

地上に通じる小さな管で地上との通信が可能になった後は、救出される希望が明るく見えてきた。救出のための穴が掘り進められ、カプセルが地下の空間に届く日が近づく……。

地下の中の人々の言動だけでも、感動的なドキュメンタリー作品になりそうだ。ても、私としては、地下深くで、じっとしているだけの助けられる側の人たちより、救出する側に興味を持つ。水、食料、空気を補給しつつ、カプセルを通す穴を開ける必要があった。「早く助ける」ことが至上命題であり、そのための最善の方法が求められた。

どうやれば救出できるのか、どうやって救出するのが一番早いのか、という課題を突きつけられた人たちだ。国家プロジェクト的な体制で、チリ政府の威信や大統領のメンツにかけて取り組んだことで、彼らは、知恵を出し合い、力を合わせたから、結局、当初の予定よりずっと早く最短の日数で成し遂げた。大統領のメンツも保つことが出来た。救出チームこそ救出劇のヒーローだろう。

新聞紙上などでは、閉じ込められた作業員たちのリーダーの存在や役割があり、チームワークが機能していたことが「耐えられた」要因として挙げられていたが、そうとばかりではないだろう。この逆境を逆手にとって、作業員たちがもうけ話に心わくわくしていたことが生きる望みを失わなかった一番の要因だろうと私は思う。

「地上に出るまでの辛抱だ。待っていれば、そのうちオレたちは小金もちになれるんだ。運が向いてくるぞ」

取らぬタヌキの皮算用的なたのしみがあったのと、一生懸命やっている救出側の動向を知らされていたから、作業員たちはチームワークを乱さなかっのだろう。欲の皮が突っ張って金勘定と、カプセルが到達するまでの日数の計算をしていたから、絶望するどころではなかったのだ。下手に仲間といざこざを起こせば、取り分が減らされてしまうからおとなしく待っていたというところだろう。

 

 

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        検察に都合のいい証拠