ボクシングの世界チャンピョン乱立                         岡森利幸   2011/3/29

                                                                  R1-2011/7/31

以下は、新聞記事の引用・要約。

読売新聞朝刊2011/3/1 スポーツ面

世界王者乱立の原因となっている世界ボクシング協会(WBA)の暫定王者について、日本ボクシングコミッション(JBC)は、正当な理由がない限り、王者として認めない方針を固めた。

世界戦を開催するたびに承認料を得られるWBAは、正規王者が活動しているにもかかわらず、最新ランキングで17階級中10階級に暫定王者がいる。

世界ボクシング評議会(WBC)の暫定王者については「暫定をなくそうとしている」(安河内事務局長)として当面は認めるという。

(JBCは)未承認団体の世界ボクシング機構(WBU)や国際ボクシング連盟(IBF)の王者との統一戦を承認することを正式決定した。

チャンピョンは一人だけであることに価値があるはずだが、世界チャンピョンを認定する連盟にとっては、たくさんいた方が、好都合である。

ボクシングでは、その階級が徐々に増やされてきたことは知っていたが、今では17階級ものクラス分けがあるとは、驚きだ。ボクシングでは、普段の体重より軽いクラスで出場するほうが有利になるとはいえ、細分化しすぎだろう。これでは、大して実力もない者でも、クラスを選べば(強すぎるチャンピョンがいるクラスは避ける)、世界チャンピョンになれるというものだ。私が子どもの頃、フライ、バンタム、フェザー、ライト、ミドル、ウェルター、ヘビーの各級しかなかったようにも思う。年月が経つにつれ、プロボクシングで特にそれが細分化され、今では、軽いクラスで、ほとんど1kg刻みに階級分けされているのだ。

世界チャンピョンを待望する市場の要求にも呼応したものだろうが、細分化した一番大きな理由は、承認料が連盟に多く入ってくるからだ。世界チャンピョンの承認料は、具体的には明らかにされていないが、相当な金額だろう。なにしろ世界チャンピョン・タイトルマッチとなれば、興行的に大きな金が動く。その分け前の一部が承認料として連盟に入るのだ。連盟が階級を細分化すればするほど、それが増えるしくみだ。

今日の社会では、学識・学位や職能・技能・技術、または趣味の専門度に至るまで多くの分野で、それぞれ免許・認定・認可の制度がある。権威のある人物や団体が、その認定を受けたい人に対し、その能力や習得レベルの試験を行って「認定」を行うことには、それなりの妥当性と厳正さが必要だろう。その認定や評価をするためには、評価する側に専門性の高い技能やテストのためのコストがかかり、評価される側より試験料や認定料として金銭をもらう必要はあるだろう。そして証書・免状・ライセンスを与えることに伴い、金が動き、それが、与える側の大きな収入源になっているケースも多くある。

しかしながら、ボクシングの世界チャンピョン認定に関しては、テストとしての技能試験はそれぞれの国の興行主を中心として試合形式で行われるのだから、その結果を集計してランク付けすればいいだけのことだ。試合でチャンピョンを破った挑戦者を新たなチャンピョンとして認定すればいいだけの役割だ。そのためのコストなら、いくらもかからないのだ。

世界チャンピョンが金になるものだから、これが大きな権益となってしまって、承認料も高くなる。承認する団体には、世界チャンピョンの数(実際はタイトルマッチの数)に比例して、「濡れ手に粟」の収入が得られるのだ。承認する権限を持つだけで、収入がどんどん入ってくるならば、ビジネスとして最高だろう。

自然と、承認する団体も増えて、世界には、主な団体だけで四つもあるのだ。承認する団体が乱立している状態だから、それぞれが承認するチャンピョンが、同じ階級でありながら、その数だけ、いることになる。日本コミッションがそのうちの二つの団体だけ(WBAとWBC)を制度として認定しているが、私的には、さらにどちらか一つにして欲しい。

WBAでは、17階級の17人の正規チャンピョンだけでは飽き足らず、「暫定チャンピョン」も10人も承認しているのだから、強欲なものだ。〈おそらく、ウォールストリート街にいた人物が理事をしているのだろう〉とは私の勝手な想像だ。WBAは、歴史的な重みや権威があったのだが、最近はとみに堕落してきたようだ。あまりの堕落ぶりに日本コミッションが怒ったのだ。

利益追求主義の民間団体や企業に、へんな権限を与えてはいけないという教訓になりそうだ。

 

 

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