高性能すぎるF−22戦闘機                                 岡森利幸   2009/8/6

                                                                    R1-2009/9/14

以下は、新聞記事の引用・要約・意訳。

毎日新聞朝刊2009/8/1 総合面

航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の有力候補である最新鋭ステルス戦闘機F22について、米下院が30日、追加生産分予算が削除された国防歳出法案を可決したことで、防衛省のF22導入は困難な情勢となっている。

航空幕僚幹部にとって、世界最高峰のステルス機能を有するF22の調達は悲願。同幹部は「米国内向けが生産中止になっても、輸出用を生産しないとは決ってない」と未練たっぷりだ。

F−22ラプター(*1)は、高性能を極めた戦闘機で、敵のレーダーに感知されにくいステルス性を備え、巡航速度でマッハを超えるスピードで長い距離を飛び、最新の武器や防具を備える。世界第一級の最新戦闘機だ。その飛行する機影は、私のようなマニアの端くれでも、わくわくするようなすばらしさを持っている。これこそ、究極の「有人戦闘機」かもしれない。冷戦時代のソビエト(旧ロシア)の高性能戦闘機に対抗するものとして、設計・製造されたものだが、もう、そのライバルたちはいない。その高性能を発揮する場がないのだ。無用の長物と考えられるようになった。

その高性能に見合って、コストもずば抜けて高い。購入のための金額だけでなく、その性能を維持するための整備費・施設費もバカ高いものになっている。消費する燃料も多いことだろう。財政難のアメリカとしては、もうこれを配備するのは国費の無駄遣いということで、187機を製造するだけで、議会は打ち切りを決めた。ニューヨークタイムズは、F−22を「きらびやかな、自己破滅型のおもちゃ(glitzy, self-indulgent toys)」と酷評している。

機体の整備が難しく、地上に降りてから再び飛び立つまでの時間がかかるため、稼働率が悪いという欠点も指摘されている。地上でもたもたしているうちに、上空での戦闘はとっくに終っていたりして……。

でも、こういうおもちゃを欲しがるのが、国防省の官僚や国防族の議員たちである。オバマ政権がそんな抵抗勢力を押し切って調達の中止を決めたのだ。ただし、これによってアメリカ経済を支えてきた巨大産業の一つ、軍事産業も衰退するのはやむをえないところか。

次期主力戦闘機を選定中の日本でも、やはり、その高性能は大きな魅力として映っている。F−22をその最有力候補として挙げ、防衛省や外務省が、「何とかF−22を売ってくれないか」とアメリカに懇願したようだ。しかし、日本に引き渡すと、すぐに最新技術が洩れて要注意国に拡散する心配もあり、現状では断られている。

もし日本に売るとなると、メーカー側(ロッキード・マーチン)にとっても製造ラインを維持しなくてはならず、コストがさらに膨らむというから、チョー高い買い物になることだろう。製造工場を丸ごと買い取るぐらいのコストが加算されるに違いない。でも、防衛費に金銭感覚のない日本政府は、アメリカの許可があれば、それでも購入してしまうかもしれない。なにしろ、日本の空が無敵の戦闘機によって守られると想像すると、垂涎の一品だ。彼らは「安全は金に代えられない」などと言い訳しそうだ。その気持は、その昔、旧日本海軍が戦艦大和を持った気分と同じようなものだろう。

 

*1 ラプターとは、猛禽類を意味する。

 

 

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