成田空港滑走路でバウンドした貨物機                        岡森利幸   2009/3/31

                                                                    

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2009/3/23 一面

成田空港でアメリカの貨物機(MD−11型機)が着陸失敗、炎上。

強風の影響。風向きや風速の急変するウインドシアによる?

あるパイロット「テレビの映像を見る限り、接地姿勢は正常に見えるが、降下率が高く激突するように着陸した」

事故機はバウンドの途中、首脚(ノーズギヤ)を破壊し、機首を地面に激しくぶつける形で停止した。

 

MD−11……米マクドネルダグラス社(現在はボーイング社に吸収合併)が製造した。3機のエンジンを持つ大型機。1991年に初就航。旅客機として開発された。約200機が製造されたが、燃費の悪さなどで受注が延びず、旅客機から貨物機に転用される機体が相次いだ。

成田空港に設置された監視カメラによる映像という事故の様子の映像がテレビで放映された。それを見ると、航空機が最初に滑走路に主脚で接地して白い煙が上がり、100メートルほど滑走して前輪を接地した時に、機体が大きく跳ね上がり(バウンドした)、弧を描いて20メートルほどの高さに達してから、前のめりに、機首から突っ込むように滑走路に落ちた。それにより、おそらく前輪が大破し、バランスを失って機体は左に大きく傾き、左翼を滑走路に打ち付け、火を吹きながらひっくり返って滑走路から左にそれて停止し、そこで炎上した。

最初に前輪を接地したときに大きくバウンドしたことが、大きな問題点だ。主脚の接地後、機体がやや上向きの状態(通常は5度上向きという)からゆっくり機首を下げて前輪でふんわりと着地すべきところ、急に機首を下げて前輪を強く打ち付けたからバウンドした、と私はみる。そのとき、機体の前半部分の重さが前脚にかかっただけでなく、主脚を中心とした運動モーメントが働いて、かなり強い力がかかったとみる。それでなくても、主脚の接地抵抗によって、機体が前のめりになる。前脚の衝撃吸収能力を超えた力が加わったのでバウンドしたのだ。

当時、成田空港では、最大20メートル/秒の風が吹きまくり、風の強さや向きが急に変わるウインドシアが観測されていたのだが、私は、その影響というよりも、パイロットの主脚の接地後に機首を下げる操作が早すぎた、あるいは急すぎたことが主因とみる。あるいは、機体が、機首を下げる操作に急に反応して、前部を滑走路に打ち付けるような力を加えたことにより、前脚には瞬間的に大きな力がかかったものだろう。ここで前脚のタイヤがパンクしたかもしれない。

航空技術の道を志したことのある私が、あえて原因を推定すると(推測が外れた時の恥を忍んで)、今回は前脚がハードランディングしすぎたための事故であろう。前脚をソフトにランディングさせるためには、主脚の接地の際、機体を上向きにし過ぎないようにすることだ。機体が上向きの姿勢で着地する(滑走距離を短くするために上向きの姿勢をとるのだが……)と、機首が降下しやすくなって、高低差も大きいから、ゆっくりと機首を下げなければいけなくなるのだ。その姿勢では、影の影響を受けやすいのだろう。

なお、主脚の接地の際の白い煙は、タイヤのゴムが瞬間的に磨り減った分のチリや微粒子によるものであり、正常なものである。

 

 

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