前払い金を踏み倒す留学支援会社                            岡森利幸   2008/10/5

                                                                    R1-2008/10/10

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞夕刊2008/10/2 社会面

留学支援会社大手のゲートウェイ21が破産申し立てをした。

前払い金の総額は約9億5000万円、すでに留学中の約1000人も留学が中止になる恐れがあるという。

ゲートウェイ21(トゥェンティワン)は、平成9年に設立され、留学エージェントの事業(公的には「旅行業」と東京都に届けている)を開始し、格安な料金を設定し、全国的に大々的に宣伝することで留学希望者を多く集め、留学エージェントの「大手」といわれるまで売り上げを伸ばしていた。ゲートウェイ21は、他の留学エージェントと比べ、料金的には安い方だったというが、顧客対応が悪く、顧客からのクレームもダントツに多かったという。営業ばかり派手で、肝心の支援業務は、ないがしろだったことになる。その悪評が高まりつつあった矢先の破産だった。結局は、みかけ倒しの会社だったのだ。

ゲートウェイ21は、留学希望者を集められるだけ集めて、かれらから前払い金を納めさせることが、第1目的だったようにみえる。企業としての、その目的を達成したら、あとはどうでもいいのだろうか?

多くの前払い済の留学希望者(1500人)や留学中の人々(1000人)を抱えているにもかかわらず、企業の業績が悪くなれば、ばったりと倒れるやり方は、社会的無責任の極致であり、あまりにひどすぎる。留学希望者から集めた10億円近い金を、破産によって、すべて(パー)にしてしまうのは、典型的な「計画倒産」(詐欺のひとつ)の手口ではないか?

国際サッカー試合の観戦の宣伝で客を集めてチケット代を前払いさせながら、チケットを手に入れる方策もあてなく、結局、倒産したどこかの旅行会社と同じではないか?

割安になるからといって高額な長期の授業料をローンで組ませて前払で納めさせたにもかかわらず、顧客が授業時間の自由な予約もできず、キャンセルを申し込むと返金もろくにされないという苦情が相次いだあと、あっけなく倒産した、あの「駅前」英会話教室と同じではないか?

私が質問を投げているのは、怒りをぶつけるためでなく、その答えを真に求めたいからだ。(ぶしつけな質問だからといって、答えがはぐらかされてしまっては、わたしの本意ではない。)さらに重大な疑問が続く――。

・どうしてこんな10億近い金額の前払い金を集めたのに、それがほとんど残っていないのか?

・会社としての資本や運営資金を持っているはずなのに、それ以上に大きな負債を作ってしまったのはなぜか?

・前払い金は、すべて留学のための費用に使われていたのだろうか?

 

前払いさせるのであれば、留学生がそれぞれの研修や学習を終え、帰国した時点で、彼らの留学のために会社が支払った費用を差し引いて、会社としての本当の利益が出るものだろう。たぶん、あなたたちゲートウェイ21の経営者(社長:福井伴昌)は、前払い金をすぐに会社の「売上金」として、計上していたのだろう。「売上金」から諸経費を差し引くと、残りは『利益』だから、「山分け」的な発想で、ふんだんに使ってしまったのだろう。

前払い金の中から、会社に入れていい金は、手数料だけのはずだろう。その手数料については、〈手数料無料〉という広告も出していたのは、どういうつもりか? 手数料は要らないということは、ボランティアのつもりで留学エージェントをやっていたのか? 手数料は要らないが、「ともかく、前払いしてくれ」と言っていたのか?

あなたたちが前払い金と会社資金を混同しているから、こういうことになるのだ。それでは、前払い金までも使い込みをしていたことになるだろう。つまり、客の預金に手をつけ、穴埋めできなくなった銀行家と同じだろう。それを一般的に横領という。ただし、銀行預金の場合は、多くが保護される(一口座1000万円まで)が、今回の場合、業界からトータルで900万円の補償金しか出ないというから、多くの前払い金は失われたも同然で、もどるのは気休めにもならない金額だろう。あなたたちには、前払い金は「留学先に支払うまでの一時的な、留学生たちから預かった金である」という意識があったのだろうか?

破産に関して、たとえ、法的な違反はなくても、あなたたちは、経営者としての資質にも欠ける、ひどい人たちだ。あまりにもズサンな経営で無駄遣いしたことになる。それとも、無駄遣いしたわけではなく、留学希望者を募集するための大々的な宣伝費や、日本国内の一等地に展開された営業拠点を維持するために多額の費用がかかったというのか?

結局、1500人もの留学希望者が留学先に支払うべき授業料やホームスティ料など、ゲートウェイ21にすっかり使い込まれてしまったのだろう。その後のニュースで、会社側は前払い金を、破産前の数カ月の間に、本来の目的に支出せずに、会社の運営資金としてほとんど使ってしまったことが明らかにされている。留学生たちは、あなたたちの会社資金として前払いしたわけではないのに、それでは、あなたたちの経営の失敗のつけを、留学希望者たちに負わせることになるのだ。道義的にも、ひどすぎやしないか?

経営がいつ破綻するかは、経営者ならば、ある程度前もってわかるはずだ。破綻の恐れが大きいのなら、新たな留学の募集をしない、あるいは前払いを受けつけないで、留学中の顧客の支援に専念するのが、経営者がもつべき最低限の良心だろう。それに、倒産するなら、最低限、「顧客からの預かり金である前払い金」の返済分を用意して(銀行などから借りまくって)からにするのが、経営者としての社会的責任だろう。こんな会社に投資した債権者はともかく、一般の顧客に少しでも迷惑をかけないようにするのが、企業としての最低限のモラルだろう。

それなのに、ゲートウェイ21は破綻の直前月まで留学の募集をしていた形跡があるし、前払いしたけれど、ゲートウェイ21の業務が滞っているせいで日程が定まらず、キャンセルを申し出た顧客には、返金を渋っていたというではないか。社長には、破産によってすべて踏み倒せることがわかっていたのだろう。前払い金は「もらい(どく)」と考えていたのだろうか。それはりっぱな詐欺ではないか?

こんな、前払い金の「もらい得」になるような「計画倒産」を社会的に規制しないと、いくらでも出てくるだろう。高額な前払いは、モラルの低い、金集めの才にだけ長けた会社経営者が暗躍するこの社会では、消費者にとってリスクが大きすぎる。消費者が利益追求の企業の経営者にモラルを求めるのは無理なようだ。

 

あなたは、前払いした若者たちに、どうお詫びをするのか。前払い金がほとんど返せない状況を、どう説明するのか。彼らの留学の夢をぶちこわし、留学の途中で頓挫(とんざ)させ、ひいては人生をつまずかせることにもなるだろう。

破産公表の数日後、多くの人が押しかけた破産の説明会(10/5)で、社長が「形だけの土下座をした」ぐらいではすまないのは当然だろう。会社の破産による責任範囲は限定されるかもしれないが、道義的には、自分の家財を質に入れてでも、一生かかっても、数千人の人々すべてに返済すべきだろう。

私の推測――(あなたは、怒号をやり過ごすように土下座し、〈あとは野となれ山となれ〉という心境で、伏せた顔で薄笑いを浮かべながら舌を出していたのだろう。しばらく雌伏してから、また同じような事業を起こそうと考えながら……。「元手なら、これまでの『利益』の中からたっぷりと吸い取ってきた役員報酬がある」)

若者たちは、物見遊山で留学するのでない。研修や勉学のために、学位などをとるために、なけなしの金を用意したのだ。それは、アルバイトでこつこつと貯めた金かもしれないし、あるいは近親者たちから借りて集めた金だろう。クレジットでローンを組んでいた人も多いことだろう。資格も学位もとれなくて、どうやってローンを返していけばいいのか?

あなたは、彼らも自己破産すればいいというのだろうか?

 

 

一覧表に戻る  次の項目へいく

        ベトナム人労働者用の高価な寮