高齢者向けマンションの怪                                  岡森利幸   2009/3/25

                                                                    R1-2009/4/12

以下は、新聞記事の引用・要約。

毎日新聞朝刊2009/3/24 神奈川面

平塚市土屋の高齢者向けマンション「サン・オリーブ」の賃貸業者が、マンション完成の見込みないのに入居者を募集し、一時金として数百万円を支払わせていた。

県への相談だけで契約件数は少なくとも37件、支払い総額は2億4000万円を越す。解約者にも一時金はほとんど返還されていない。

マンションは鉄骨造り3階建てで1〜2LDKが8部屋ある造り。賃貸業者は秦野市に拠点を置き(秦野市鶴巻南の『コスモス』)、04年ごろから「新築」「完成」などと戸別配布のチラシで宣伝、入居を勧誘していた。だが、資金難から工事が滞り、07年6月には横浜地裁小田原支部が強制競売を決定。建物はいまも完成していない。業者は競売開始後も「入居一時金550万から750万円」などと勧誘を継続。入居者を介護したり、入院時に付き添ったりするとも宣伝していた。

県は月内にも県消費生活条例に基づき是正勧告する方針。しかし、勧誘を辞めさせる強制力はなく、県は「行政としてこれ以上の対応はできない」と話している。

8部屋しかないマンションで、37件も契約していいのか? 8部屋しかないマンションで、介護や病院の送り迎えのための専任者を採算的に確保できるのか?

07年6月には横浜地裁小田原支部が強制競売したのに、その後も、業者がまだ営業活動しているのは、どうしてだろう? 強制競売され、業者の所有物でなくなったはずのマンションについて契約がなぜできるのか?

 

その答えは、ズバリ「高齢者から一時金をだまし取る」ことを目的としたからに他ならない。

マンションを完成される資金もないのに、工事に着手し、入居者を募集して(おそらく、近隣の有料老人ホームより格安な価格で)、集めた一時金で工事を完成するつもりだったのかもしれないが、もう建物は強制競売にかけられていたのだ。資金もない業者が破産もせずに今でも(2009年3月時点)営業しているのは、おそらく負債を巧妙に計上していないためだろう。

ある程度まとまった金を集めたら、倒産するという詐欺の手口(計画倒産という)に似ている。倒産後は、「金が返せないのは、倒産したから」と、言い逃れをするつもりだろう。

「老後の蓄えをもっている、だましやすい高齢者をねらった」としか思えない悪質な業者だ。そんな業者に対して、「行政としてこれ以上の対応はできない」として、高齢の被害者が拡大するのを見逃している県の当局も、いい面の皮(*1)だ。

 

*1. 「いい面の皮」という言い回しは、本来の意味とは異なるが、この場合、最も似つかわしい

 

 

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